第2話 妖精を持ち帰り 犯罪じゃないよ?

俺はまだ信じられなかった。だってそうだろ?初対面の人間に助けを求める。まぁ、いいだろう。だが…


「なんでここで寝るのかなぁ…?」


俺の気持ちを知らずにスヤスヤとくぅくぅと可愛い寝息を響かせながらな眠っている少女をジト目で見ていたが…


「流石にここには放置できないよな…」


そう、その道はあまり人が通らない為もしこのままこの妖精さんを放置していたら絶対えらい目にあう。俺は深いため息を着きながらとりあえず、背負う事にした。


「…うん。誘拐じゃない。これは合意なのだ。俺は助けを求められた。だから、助ける。うん…」


そして、妖精さんを背負うと中々に素晴らしい感触が背中に伝わる…なるほど妖精は何とは言わないがここも妖精なのか。


「…何馬鹿なこと考えてるんだろ。とりあえず、連れて帰るか?」


少し迷いながらも俺は自宅に向かった。


「ただいま〜…」


そして、家に帰って来たがお帰りの返事はない。それはそうだろう。俺は今1人暮しなのだから。


「とりあえず、妖精さんは俺の部屋のベットに放り込むか」


そう思い俺は2階に登り自分の部屋のドアを開け妖精さんを布団に寝かせた。


「それにしても…ほんとに可愛いな。皆が妖精って言う意味がわかる気がする」


俺は少しくらいいいだろうと思い軽く観察をしていた。

頬っぺを指でつつくととても柔らかくまるでマシュマロみたいな感触がした。


「んむぅ…」


流石につつかれるのが嫌だったのか妖精さんは寝返りをうって向こうを向いてしまった。


「…はぁ。とりあえず、このまま放置して俺は病院行かないとな」


俺は下に置いていた荷物と着替えを持って家を出た。

一応妖精さんの為に置き手紙も残しておいたから大丈夫だろう。


「さて、行きますか」


俺は家の鍵を閉めたあと最寄りのバスターミナルに向かいバスに乗った。

バスに揺られること20分目的地に着いた。


「さてさて、元気にしてるかねぇ…」


俺は「神原秋穂かんばらあきほ」と書かれている病室のドアを開け中に入った。


「あら?今日は少し遅かったのね?」


俺の気配に気づいたのかその女性はこっちを向いて朗らかに笑っていた。そう。俺の母親だ。


「あぁ。ちょっと色々あってな。ほれ、お土産と着替え」


「気が利くわねぇ〜…それにしても…」


そう言い母親は俺の服を掴みくんくんと匂いを嗅いでいた。


「な、なんだよ?」


「おかしいわね…あなたの服から女の匂いがする…」


俺はドキッとした。

そう。俺は妖精さんを背負ったままの服で来たのだ。しかし、本当のことを告げる訳には行かない。ここは誤魔化すか。


「あぁ。バスが意外と混んでいてな多分その時に着いたんだろ?」


よし!上手く言い返したぞ!どうだ?


「…ふーん。怪しいわね…まぁ、いいわ。愁も青春してるって事で手を打ちましょう」


そう言いニコニコと笑いだした。

絶対勘違いしてるよ…


「それで、愁は彼女とかは出来たの?」


「出来てないよ。作る気も無いし」


「勿体ないわねぇ…一応私とお父さん似で顔はまぁまぁいいのに…」


「まぁ、俺のことはいいだろ?体調は、大丈夫なのか?」


「えぇ、だいぶ良くなってきてるわ。ご飯もちゃんと食べてるし。心配かけてごめんね…?」


「心配するのは当たり前の事だから謝んなくていいよ」


そんな感じで俺と母親としてのんびりと会話をしていたがどうやらそろそろ面会終了の時間のようだ。


「あら?もうこんな時間なのね?愁、ちゃんとご飯は食べてるの?少し痩せたように見えるけど…」


「あぁ、食べてるよ。最近のお弁当はすごく美味しいからな〜。今日は唐揚げ弁当買ってく予定」


それを聞いた母親は呆れた顔をしていた。


「愁…料理を少しは覚えなさいな。お弁当ばっかりだと身体、壊すよ?」


「うぐ…そ、そのうちな?」


「…全く。あぁ、早く愁に料理の出来る彼女が出来ないかしら。そしたら安心なのに」


そう少し拗ねたように言う母親だが…


「大丈夫だって。俺一人でも何とかやれてるし」


「…そうね。弥彦みつひこさんもたまには帰って来てくれればいいのに…」


そう。一応俺にはちゃんとお父さんとお母さんが居る。けど、母親が体調を崩した為父親は更にお金を稼ぐと言って単身赴任しているのだ。たまに電話をするが話すことは母親の事だけだ。


「まぁ、そう言うなって親父も忙しいんだろーよ」


「…それもそうね。早く私も良くならないと」


そうして俺は軽く話を合わせながら病院を後にした。


「妖精さんまだいるのかな?」


時刻は午後9時だ。流石に帰ってると思うが…そう思いながら俺は家に着いた。

家には明かりが着いていた。


「親父でも、帰ってきたのか?」


そう思いながら俺は鍵を開け家の中に入った。


「ただいまぁ〜」


「お帰りなさい」


パタパタと奥からエプロンをつけた妖精さんが出迎えてくれた。


「いやぁ…疲れたよ」


「お疲れ様。ご飯にする?お風呂にする?」


惜しい!そこは最後に「それとも…わ・た・し・?」って聞いて欲しかった。


「先にご飯食べようかな」


「分かったわ。手を洗って待ってて」


「はーい」


俺は手を洗い口をゆすぎ顔を洗った。


そうしてリビングに行くと美味しそうな唐揚げやお味噌汁ほうれん草のおひたしなどが並んでいた。


グゥ〜…っと俺の腹もなった。それを聞かれていたらしい


「ふふっ早く食べましょう?」


「あぁ。頂きます!」


そして、食事をした。

一言で言えばめっちゃくっちゃ美味しかった。味付けも俺好みで特に唐揚げは神の領域に達していた。


「ご馳走様!」


「お粗末さまです。お茶飲む?」


「あぁ。いただくよ」


そうしてお茶を飲み少しほっこりしてから俺は聞いた。


「…なんでまだ居るの?しかもご飯もお風呂もやってくれてるし」


「え?今更すぎません?」


とりあえず、俺は心の中で叫んだ。


(なんでまだ居るんだよぉぉぉおぉぉぉ!!)

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