第14話 オーダー

「うそーっ」

 まだミーティングは終わっていないというのに翼は素っ頓狂な声を出した。

 ついに春の大会のオーダーが発表されたのだ。

 女子の団体戦は三人一組で行われる。

 その中に翼の名前があった。

 他の2人には奈央と江里奈が挙がっている。涼香の名前はない。それほどまで涼香の不調は深刻だった。

 原因はこの間の江里奈との対決にある。引き分けというかたちで終わったが、その結果を「もう一本続けていたら勝っていた」という自信ではなく、「もう一本続けていたら負けていたかも」という不安で受け止めてしまったのだ。

 理恵が涼香を外したのは、ここで良い結果が出なくてさらに傷を広げてしまうことを恐れたからである。このことに奈央は猛烈に反対した。

「それじゃあ涼香は余計、自信を失っちゃうよ。ここは無理を押してでも涼香を試合に出して、勝って自信を持たせるべきだと思う」

 オーダー発表の前日、奈央は理恵にそう進言した。しかし、理恵は首を横に振る。

「だめ。あんた、これ以上、彼女を追い込みたいの? 勝てばいいけど、負けたらどうする? 部のために誰かが不幸になるのは嫌だって言ったのはあなたでしょう?」

 奈央は反論した。

「理恵ちゃんは涼香のことをただのエースとしてしか考えてない。涼香が傷つくというより、エースを失うのが怖いだけでしょ?」

 理恵は何か言い返そうとして止めた。これ以上議論を重ねたところでまた気まずい思いをするだけだ。

「いい? これは主将としての決定事項だから」

 そう言って、理恵は話し合いを打ちきった。


つづく

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