第6話 同期

 そして宴は終わった。

 いつものように円陣を組んで校歌を合唱し、主将の黒田理恵が音頭を取って一本締め。「おつかれさま」と言って店を出る。

 二次会は行われず、そのまま解散。

 奈央は理恵と同じ方向なので一緒の電車に乗った。

「あんまり思いつめちゃ駄目だよ」

 奈央は友人として理恵に助言した。コンパでの理恵のノリの悪さが気になっていたのだ。

「わかってる」

 理恵は前を向いたまま、にこりともせずに言った。顔には疲労の色が浮かんでいる。

「助けあってこその同期でしょ? 絶対に一人で抱えこんじゃ駄目だからね」

 念を押す奈央。理恵は応えない。奈央は敢えてそれ以上のことは言うまいと思った。

 一年生の頃からこんな調子だ。

 2人とも弓道未経験者だったが、少しだけ上達の早かった奈央がコツを教えてあげようとすると、理恵は必ず拒んだ。そして、奈央の見ていないところで猛烈に練習するのだ。

 理恵は絶対といっていいほど弱みを見せない。それは年長者としてのプライドなのか、彼女の性格なのかわからなかった。そんな理恵を見ながら、奈央は心配になるのだが、どうすることもできないでいる。

 突然、理恵がぽつりと言った。

「明後日から強化練か」


つづく



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