第17話

「わ……私は嘘なんて」

「細木さん、我々が種を何に使うか聞いてしまったのでしょ」

「ええ聞きました。あんな恐ろしいこと……」

「ああ、そうか。細木さんは別に、嘘はついていませんね。ただ認識が違うだけですね」

「認識? どういうことだ?」

「頭山さん。それは後で細木さんに直接聞いてください。とにかく、種の使用目的は世間一般の常識では、けっして恐ろしいものではありません」

「いったい種を手に入れて、どうするつもりなんだ?」

「分かりませんか? 頭山さん、その桜が生えてから、一つだけいいことがあったでしょ?」

「いいこと?」


 頭山は自分の腹に視線を向けた。


「そうか。ダイエットに成功したな」


 確かに悪いことばかりではない。と、正は思った。


「そうです。この種を増やすことに成功したら『桜ダイエット』として売り出そうというのです」

「いや、売れないと思うぞ」

「なぜです?」

「実際に木を頭に生やした身で言わせてもらうが、これはかなりつらいぞ」

「何言ってるんです。ダイエットにつらいことは付き物でしょ」

「まあ、そうだが……」

「待ってください、三島さん。仮に頭山の木から種が取れたとして、それだけでは商品化するには数が足りません。これ以上どうやって増やすつもりです? また、誰かに寄生させるのですか?」

「細木さん。そこは……あまり深く考えない方がいいですよ」


 死刑囚を使うようである。

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