第18話

「おや!」


 三島が桜の木を見上げた。


「どうやら、実が付いたようですね」


 桜の木には数百個のさくらんぼが実っていた。







 正の桜が枯れたのは、その翌日の事である。

 頭皮に生えていた根は皮膚の中で、酵素によって分解され跡形もなくなってしまった。

 数日後、久しぶりに出社した頭山に……


「さあ、頭山さんたっぷり食べてください」


 会社の昼休み。

 社員食堂にきた頭山に、細木がにっこりと笑って弁当を差し出した。

 しかし、その弁当箱の大きさは尋常でない。

 十人前はありそうだ。

 蓋を開くと脂肪たっぷりのメニューがテカテカと光っている。


「あの、細木さん。気持ちは嬉しいのですが、こんなに食べたらせっかく痩せたのに、またリバウンドしてしまいます」

「はい。しっかりリバウンドして元の凛々しい姿に戻ってくださいね」

「凛々しい?」


 近くで見ていた三島が正の耳元でささやく。


「知らなかったんですか? 彼女、デブ専だったんですよ」


    了

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