第16話
「人体実験に使うような危ないものを、大事なお得意様に使うわけないじゃないですか。これは本当に偶然起きた事故なのですよ。まさか、桜が人に寄生するなんて誰も予想していませんでした。知っていたら、死刑囚を使って……いや、なんでもありません」
「三島、お前、今とんでもない事を言いかけなかったか?」
「忘れてください。そんなどうでもいい事より……」
「三島さん。死刑囚云々はどうでもいい事なのですか?」
細木の突っ込みを三島は黙殺して話を続けた。
「真実の部分は、種を取ろうとしたことです」
「種? やっぱり人体実験か」
「違いますよ。偶然にも頭山さんの桜がかなり成長したので、ついでに種も取れたらという話になっただけですよ。だから、意思を確認したでしょ。木が枯れるまで待つか、木を切って苗からやり直すか」
「俺は種の話は聞いてないが」
「種はついでに取れればよかったのです。頭山さんの桜が枯れる前に実をつけてくれればそれでよし。ダメなときは諦めるつもりでいました」
「その時は死刑囚を使うつもりですか?」
「細木さん、うちの会社で仕事を続けたければ、そのことは忘れて下さい」
細木は顔をしかめただけでそれ以上の追及はやめた。
「それで、三島。三分の一が真実で、三分の一が思い違いなら、残りの三分の一はなんなんだ?」
「はい。残りの三分の一は細木さんの嘘です」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます