第12話

「さあ、今からその忌々しい桜を切り倒してあげますわ」

「うわ! ちょ! 待ってくれ」


 正は慌てて、今までの経緯を説明した。


「切っても生えてきてしまう?」

「そうなんだ。このまま、枯れるのを待つしかないんだよ」

「頭山さん。騙されていますわ」

「騙されている?」

「私、聞いてしまったのです。三島さんたちの話を」

「なんて言っていたのです?」

「その桜を繁殖させようと言っていました」

「繁殖?」

「その桜から、種が取れるまで育てるつもりです」

「種」

「ええ。すぐに枯らす気なんかなかったのですよ」

「三島の奴……しかし、こいつを切ってもまた生えてきてしまうというのは事実です。それは自分でやって確認しています」

「そうでしたか。困りましたね」

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