絶体絶命


「ライトニング!」


「エクスプロード」


ふぅ、だいぶこのダンジョンのモンスターにも慣れてきた。


9階層のモンスター相手でも、全く苦戦を強いられることなく、安定して倒せるようになったし、この前買った風のマントのおかげで守備力も大幅に強化されている。


加えて体はこの前以上に軽いのだから、やっぱりすごい性能だ。


「今日はこんなもんかな」


手元にはアルミラージ、ゴブリン、ファイヤーコボルト、それとさっき倒したワイルドボアの魔石がぎっしり詰まっていた。


だいたいいつもこのくらいを倒せているから、寝床や食い扶持には全く困らくなくなった。このくらいの層のモンスターでも、生活するだけなら余裕な程なのだから、やっぱり冒険者は稼ぎが良い。だが、ここで満足はしていられない。僕はもっともっと強くなりたいんだ。


正直、慢心とかを抜きにして考えても、10階層にいるフロアボスさえ倒せれば、15階層くらいなら1人でも大丈夫だと思う。何故なら、そこまでならモンスター単体の実力はまだ低レベルで、群れで襲われても僕なら対処可能だから。ただ、そこはまだ上層に過ぎない。中層に進み、更にそれ以降にも進むと考えると……………


「……やっぱりギルドに入るべき…だよね」


ダンジョン中層からはモンスターの強さも格段に上がる。そしてほとんどが集団で行動するようになる。同じ種類のモンスター同士だけでなく、違う種類のモンスター同士が協力し合って僕に襲いかかってくるのだ。


単純にモンスターが強くなるだけならば対処出来る冒険者でも、数で圧倒されては対策は困難であるという冒険者も少なくない。それに中層以降のモンスターは知力も高く、弱っている冒険者や、サポートの役割を果たしている冒険者を集中的に狙う。人型のモンスターであれば、人が使う武器も簡単に扱ってみせる程だ。仮にパーティーを組んだとしても、今よりも厳しい戦いになることはまず間違いない。


レオンさんの言葉が頭をよぎる。レオンさん達のいるギルドだから、きっといいギルドだろうし、それにわざわざ誘って貰えた訳だから入らない理由がない。この都市に来てからギルドからは入ることを断られ続けていたけど。


「やっぱり今度寄らせてもらおうかな。まだ1度も尋ねたことは無かったし、まずはそれからだ」


そうと決まれば早くダンジョンから出て、今日はもうひと休みしよう。




はぁ、はぁ、はぁ


やはり無茶だったのだろうか


私はあれからしばらくして、さんざん悩んだ結果、やはりダンジョンに行くことを決心した。

手元にはもうお金が全くなかったからだ。それに、シグルズさんのような優しい方にまた会えるとは限らないし、他人に助けて貰う事を当たり前なんかにしたら、冒険者の名折れだ。1人で生きていかなくちゃいけないし、きっと1人でもやって行ける!………初めはそう思っていた。


だが、


これはなかなかに、体力の消費が早いわね。


自分に補助魔法の重ねがけを普段からしていなかったということもあって、想像の何倍も体が悲鳴を上げていた。


元々筋力は大したことなく、日頃から鍛えていた訳でもないため、並の冒険者に掛けるくらいの重ねがけだけでも、自分にとってはかなりの負荷だった。


しかし、そうしなければモンスターを倒すことは出来ず、体はそろそろ限界かという状態だったが、構わず強化を続けるしか無かった。


だがその甲斐もあって、特に戦闘技術がある訳でもないのに、7階層のモンスター相手に1人で戦うことが出来ている。


だいたい、冒険者は今いる回層から次の階層に進む為には1ヶ月以上かかると言われていて、更に次の階層に進むのにも同様、下手をしたらもっと時間がかかる。10階層以降からは、どんな馬鹿でも一人で行こうとはしない。

奥に行くほど強くなっていくモンスターたち。しかしそれは別に比例して強くなっている訳では無い。特に下へ行けば行くほど、次の階層へ行った時のギャップは計り知れない。


「これで……ラスト」


迫り来るコボルトに向かって、正面から剣を繰り出した。


「やった……(でもそろそろ体が限界……今日はもう帰ろう)


幸いまだ完全に体の自由が効かないわけじゃない。それにモンスターのリポップが始まるのはもうしばらかかかる。


(今のうち)


――そう思った時だった。


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