第2話 食材集め
--エイミ自宅--
「ガサゴソ、ガサゴソ」
「おい、朝っぱらから何やってんだ」
何かを探しているエイミに起きたてのザオルが話しかける。
「あっれー、ここに入ってたと思ったんだけど、捨てちゃったかなー」
父の声が聞こえないのか、エイミは何かを探し続けている。
「おーい、無視すんなよー、何してんだ?」
ザオルが再び声をかける。
「あー、お父さん、起きてたんだ」
「おはよー」
「サンドイッチに合いそうなさー、ジャムとかこの辺にあったはずなんだけど。見当たらないんだよね」
エイミーは言いながら収納スペースを探している。
「あー、あれかー。ぜんぶあげちまったぞ」
ザオルは悪びれることもなくそう言った。
「えっ!なんでよー。結構あったはずなのにー」
「いや、この前、この地区のお祭りがあっただろ?」
「そこで軽食を作るっていうことで、全部あげちゃったんだよ」
少しザオルは罰の悪い顔をする。
「あげるんなら、言ってよね。食事作ってるの私なんだから!」
エイミの少し強い力口調に、
「すまん、すまん、次からそうするよ」
「でもなんでサンドイッチなんだ?」
ザオルがエイミに尋ねる。
「この前ね、バーに行ったでしょ?」
「そこで聞いたんだけど、アルドがこの世界に来る前に、妹がよくサンドイッチを作ってくれてたんだって」
「今回彼にも手伝ってもらってるから、サンドイッチを作ってあげようかと思って」
ザオルが不安そうな顔をする。
「なによその顔?」
「いやー、良い行いだと思うんだけど、大丈夫かなと思って」
「大丈夫って?」
エイミが少し強く聞き返す。
「いやー、エイミが料理に凝るとたまに凄いことになるから……」
ザオルが不安そうな声を出す。
「何よ、それ。いつも作ってあげてるのに!」
「それに今回はサンドイッチでしょ?」
「それぐらい作れるわよ」
「まぁとりあえず、家には何もないみたいだから、ちょっと外出てくるわね」
エイミはそう言い、準備を整えると、外に出ていった。
--ショップ--
エイミはショップに行き、卵を買い、野菜を買ったものの、全くと言っていいほど、
味付けが思いつかない。
ジャムやバターなども考えたものの、作ってあげると意気込んだ割には、シンプルすぎて、アルドの妹の味とは程遠いであろうことから頭を悩ませていた。
それに加え、合成人間の不審な動きにより、品ぞろえもよくなく、それも又、アイデアを思いつかない原因になっていた。
「うーん、どうしようかな。セバスちゃんに相談してみようかな」
そう思い、エイミは、セバスちゃんの家に向かった。
--セバスちゃんの家--
「やっほー」
「あっ、どうしたの?」
エイミの急な訪問にセバスちゃんも少し驚く。
「ちょっと相談があってさー」
「うん、何々?」
「サンドイッチをさー、作ろうと思ったんだけど、家にあんまいい食材なくてさ。で、何かいいのないかと思って、買いに行ったんだけど、いいの思いつかなくて。」
「何かいい案ないかなー?」
セバスちゃんも頭をかしげて考える。
「んー、そもそもなんでサンドイッチなの?」
セバスちゃんがエイミに尋ねる。
「実はさー、昨日あの後、バーに行ったんだけどさ、アルドがサンドイッチ食べたがってさ、今度作ってあげるよって言っちゃった手前、少し良いの作らないとなーって思って。なんか妹の思い出の味らしいよ。」
「へー、そうなんだ。なるほどねー」
「なにか妹の味のヒントになるようなこと言ってなかった?」
「これが入ってるー!とかこういう味だったー!みたいな」
「うーん……」
エイミは昨日のことを思い出してみる。
「あ、そう言えば、なんとかカマス?みたいなの使ってるって言ってたかな?」
「それカマスじゃなくてマスじゃない?」
セバスちゃんが冷静にツッコむ。
「マス?」
エイミが首を傾ける。
「うん、私も詳しく知ってるわけじゃないんだけど。魚の一種だと思う。世界が地上にあった時は海や川があったから、魚がとれたんだと思うわ。でも今は世界が空にあるから、同じものを手に入れるのは不可能ね」
「えーそんなー……。なんかいい案ない?」
「うーん、そうだねー、魚の代わりに鳥なんてどう?」
「鳥?」
「うん。鶏肉。ほら、家の隣の家に住んでるピリカとノーヤの為に、もも肉手に入れてあげてたでしょ?」
「今度は胸肉を手に入れてパンに挟めばいいのよ」
「えーっ、豪腕のアガートラムとまた戦うのー……あいつ結構強いんだけどなー……」
「アルドに戦わせればいいじゃない」
冷静に言うセバスちゃん。
「・・・確かに!」
悪だくみをする顔になるエイミ。
「これで中身は決まったよ。あとは味付けだねー」
「それなんだけどさー、今は色んなものを手に入れるのが難しいと思うの。基本的なものが家にあるんだったらそれで色々と試してみたら?」
セバスちゃんの提案に、
「そうだねー、同じ味は作れそうにないから、ちょっと家で色々と試してみるよ」
「頑張って!」
「うん、今日はありがと。まずバトルして鶏肉を手に入れるところからだから、ちょっとアルドを探してみるよ」
「そうなら、ホテルに行ってみたら?よく昼まで寝てるって言ってたから」
「そうなんだ、ちょっと寄ってみるよ」
「うん、行ってらっしゃい」
「ありがと」
エイミはセバスちゃんの家を出て、ホテルへと向かった。
--ホテル--
「あ、すいません、こちらにアルドという者が泊ってるはずなんですが」
「アルド様ですね。まだ客室にいるようなのですが、おつなぎ致しますか?」
「お願いします」
「RRRRRRR」
「はい……」
「こちら受付です。こちらにエイミ様がいらっしゃっていますが」
「・・・いないと伝えてください」
「ちょっとアルド、聞こえてるから。少し待つから降りてきて」
~15分後~
「RRRRRRRR」
「はい……」
「早くしてくれ」
「なんだよー、こんな朝から」
「もう昼よ!!」
「今すぐ降りてきてね」
~10分後~
「やっときたわね」
「なんか用かよ」
「まぁまぁそんな怒んないで。昨日さー、お父さんから借りた武具試してみたでしょ?」
「あぁ。でも、慣れ親しんだのがいいから断ったはずだけど」
「うん、知ってる。でも昨日私達がバーに先に行ったじゃない? その時にこれなら使えるかもしれないっていうのを見つけたんだって。で、今それを持ってきたからさー、ちょっと試してみない?」
「えー、あんま乗り気じゃないなー」
「それと昨日戦ったサーチビッドとレッドサーチビッドじゃテストにもならないでしょ。対ガリア―ドに向けても準備しないと」
「とは言ってもな―、どうするの?」
「この前戦った豪腕のアガートラムって覚えてる?」
「廃道ルート99の?」
「うん。あいつだったら結構強いから、いろいろ試せるでしょ?」
「まぁ確かに……」
「さぁそうと決まったら、出発、出発!」
騙されたとも知らずに、またしてもエイミに仕切られるアルドだった。
--廃道ルート99--
「やっぱりここは歩きづらいなー」
「ガンマ区画のゲートを抜けたらすぐこうだもんな」
がれきなどを避けて歩きながらアルドは言う。
「そうだねー、先まで昔はうまく通り向けることができる道だったんだけど、合成人間の反乱と同時にガンマ区画の先のこの道は閉ざされてしまったね」
エイミはそう語る。
「あっ、いたよ、アガートラム」
がれきに隠れながら、エイミは言う。
「さぁ、アルド、行きなさい!」
「えっ!!俺だけかよ!」
エイミに急に振られ、驚いたような顔をするアルド。
「もちろんよ!一緒に戦ったら、武具の試しにならないでしょ」
「いや、まぁそうだけど、急に起こされ、連れてこられ、戦えとは……」
「ごちゃごちゃ言わなーい! いってらっしゃい!」
「ドンっ!!」
「うわっ!」
気づいたらアルドはエイミに背中を押され、がれきの前に突き出され、目の前にはアガートラムがいる状況となっていた。
「・・・やぁ、こんにちは」
アルドがそういった瞬間、アガートラムは目の前の男を確認したようで、すかさず右腕で攻撃をする。
「うわっ」
間一髪のところで、避けるアルド。
そしてそばのがれきを足場にし、体を左に捻る。
アガートラムがアルドにかわされた右腕を地面から上げ、左腕で狙ってきた瞬間、アルドは飛び上がって回避し、飛び上がった。
捻りを戻しながら回転し、アガートラムの顔に連撃攻撃を与える。
衝撃を何度か受けたアガートラムは後ろにバランスを崩しそうになるが、持ちこたえる。
「くそー、やっぱ、こいつは一撃じゃ無理か」
悔しがる顔をみせるアルド。
機械と言えど、頭に血が上ったのか、アガートラムは単調な攻撃をアルドに浴びせ続ける。
が、右、左、右、左、とパターン化した攻撃はアルドには当たらない。
「ノロマー、そんなんじゃ当たんないぞ」
と調子に乗ったアルドだったが。回避した先のがれきに躓いたようで、バランスを崩す。
「うわっ!、しまった」
その隙を逃さずアガートラムが右腕の剛腕をふるう。
「やられるっ……」
・
・
・
「もうっ!油断しすぎなのよ!」
隠れていたエイミが寸前の所でアルドを助け出す。
「ビビったー。助かったよ。」
冷や汗をかくアルド。
「あと少しだから私も付き合うわ。右、左と回避したところで、一緒に攻撃を当てましょう」
的確な指示をアルドにするエイミ。
「了解!」
案の定、パターン化した攻撃を繰り出すアガートラム。
右を振り上げ、アルドの方へ攻撃。
アルドは回避する。
左を振り上げ、エイミへの攻撃。
エイミは難なくかわす。
そして、その隙をついて、二人は飛びあがる。
そしてエイミの渾身の右ストレートとアルドの斬撃が同時にアガートラムの顔に打ち込まれる。
「ドガンッ・・・バタン」
二人の攻撃を受けたアガートラムは後ろに大の字で寝転んだ。
「イエーイ!!」
二人はハイタッチをする。
「そうだ、これをもらっとかないと」
エイミは超電磁ベアリングを手に入れた。
「えっ、またそれ使うのか?」
アルドがエイミに尋ねる。
「まぁねー。じゃあ帰りましょ」
「あっそうだ、この武具なんだけどなかなか……」
アルドが話しかけたところを遮り、エイミは
「あっ、それ?その話はもういいの」
とごまかす。
「なんだよー、それ!今の戦いこの武具のテストじゃないのかよー」
「♪♪♪~」
口笛を吹きながら、エイミはごまかそうとする。
「おい、ちょっと待てって」
こうしてアガートラムを倒して、目当ての物?を手にいれた二人は廃道ルート99を戻り、ガンマ地区へ戻っていった。
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