ドッペルゲンガーを探して。

「はあっ・・・・はあっ・・・!!なんで!?どうして・・・・」


セイムは、吐きそうになりながら必死に何かを探していた。

足は見つけた。

左か、右の腕が見つからないのだ。


「なんで!なんで・・・!?」


「・・・セイム」


「・・・ッ!?大丈夫ですか?!い・・・いまっお医者さんを探してきますからね!」


「へへ・・・機械技師の間違いじゃねぇか?」


男は、酷くかすれた声でそう言って、苦しそうに咳き込んだ。

男の口からは、喘鳴ぜんめいと共に、おびただしい量の人工血液があふれ出していた。

長年メンテナンスを受けていない証拠に、それは灰色にくすんでいた。


男は、教会の自動端末だったのだ。


「きっと元に戻ります。大丈夫!大丈夫!いっ今!腕を探しているところですから!もう少し、待っていてください!」


「セイム」


「そんなに遠くには、行っていないはずなんだ・・・」


「セイムちゃん」


「あ、あの植木の影かもしれない・・・!あぁ、でも、あなたを置いて、いくなんて・・・」


「ゴホッ。ゴホッ。ゴホッ!!!!」


液体が落下して砕ける音がして、セイムはすぐにそちらへ駆けた。

それから、男の上半身をそっと起こしてやった。


「ようやく、俺様の話を聞く気になったか」


「聞きますよ・・・!いくらだって」


「お前、自動端末が何で初めから言葉をしゃべったり、人の役に立てるのか分かるか?」


セイムは首を横に振った。


「自動端末が元々持ってる知恵ってやつは、プレイヤーから抜き取った記憶をもとにされてんだ。どおりで、人形の癖に、人間みたいによく出来てるわけだよな?へへっ、ゴホッゴホッ」


「僕は、彼等をそんな風に思った事は一度もありません、もう、話さないで」


「まぁ、最後まで聞けよ。ここからが重要なんだから。俺様の話だ。抜き取られた俺様の記憶は、あのうさん臭い場所でされる予定だったが。その作業中に自分を立会人に俺様の時止めが発動しちまった。普通は、他の連中と同じようになるはずが、どういうわけか、このありさまさ。俺様の元の体に何事も無けりゃ、どっかでピンピンしてるだろうし。もし、あぁその、なんだ。兎に角、また会えるぜ」


「本当。ですか?」


「あたりめぇだろ。」


「また仲良くなれますか?楽しい話をたくさんして、美味しいものをきちんとお金を払って食べて、ちょっとくらい、悪い事をして」


「なれるさ、一緒にスケベ共を覗き見した仲じゃねえか」


「それは、あなたがやった事です」


「へへっそうか。ほら、もう行けよ。俺様の体の一部を持ってきな。でも気をつけろよ?時止めが解除されたのは、誰かが止まった時間に割り込んできやがったせいだ。出来るだけ急げよセイム」


「あなたを忘れません!きっとです!」


止めた時間の中で、一体の自動端末は、走り去る友人の後姿を見送った。


「・・・ああ、まさかな」


彼の友人は、傾いた街を力強く駆けてゆく。


こわいぜ。


やがて、足音すら聞こえなくなった。

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