第3話 青星へのあこがれ

 ネットニュースで建造中の巨大な宇宙船を見ながら僕は決心した。


「地球へ行きたいだって?」

 僕は仲のいい友人のスバルに気持ちを告げた。


「ケイコク何を言っているか分かってるのか!? おまえが考えるより危険が多い旅だぞ」


 スバルは地球への遠征隊のリーダーの一人で、火星の中でもその優秀さ若さが評判だった。だから地球への同行を頼む事にしたのだが……ためらったが、はっきりした理由が無ければ、宇宙船には乗せてもらえないだろう。

 今までの事をスバル全て話した。

 大おじいちゃんの部屋で端末を見つけた事。

 修理して銀河ネットに繋ぎ、地球の女の子と話をしている事。


「銀河ネット? 地球の女の子と毎日ネットで会話している? まじか……」

 スバルは驚いてしばらく考え事をしていたが、マイコンを取り出しどこかに電話をかけた。


「……ええ、やっぱりそうですよね、あり得ない話です。でも、ウソをつくような子ではありません……はい、解りました」

「ケイコク、これから出かけるが……地球へ行きたい決心は変らないか?」

 頷く僕を見たスバルは、マイコンでスピリットを呼び出す。

 宇宙センターまでは徒歩では遠く、火星用の電気自動車で移動する。

 電気自動車は火星の悪路にも耐えられるように、頑丈に造られた四輪駆動車。

 科学が進んでも、空気が薄い火星では空を移動するのが難しい。

 今でも自動車は火星では重要な交通手段だ。


 乗り込むと、音もなくスピードを上げて宇宙センターを目指すスピリット。

 三十分程で宇宙センターの入り口に着いた。

 それまでの間僕は少し後悔していた。自分の大胆な行動に。


「さあ着いた、降りるぞ」

 スバルの声で我に返った。スピリットから降りて宇宙センターの入り口で、入館の手続きをしてくれている間、ロビー大型モニターに釘付けになった。

 軌道エレベーターの画像だった。

 十年前に完成したそれは無重力の空間へ真っ直ぐに伸びている。

 軌道エレベーターの先に、銀色に光る機体が見える。それは大型の船。地球へ向かう宇宙船。

 もっとよく見ようとモニターに近づいた時に、スバルが僕の名を呼んだ。


 火星のセキュリティはシンプルなものだ。

 ここでは戦争やテロ行為が存在しない。

 あまりに強固なセキュリティは生産効率を落とし、自由な開発を阻害する。

 百万人余りしかいない赤い人。

 地球を頼る事が出来ない今、他人と争う余裕などまったくない。


 奥の小さい部屋で一人の科学者が待っていた。僕やスバルに近い、まだ十代だろう、宇宙センターの所長だと名乗る。

 火星は仕事上での年齢は関係ない嘘もない。これも赤い人に余裕が無いからだ。


 スバルは僕の言うことを全面的に信じて、このセンター長へ相談したのだ。

 この事は事実として処理され、すぐに判断と実行が可能な人物が担当者になった。僕の発した言葉は重要な事だった。


 科学者は概要を既に聞いていたが、僕の言葉を改めて聞いてスバルと同じように驚いている。

「銀河ネットが生きている?……しかも地球と通信が出来るとは……信じられん」

 僕は二人の態度に疑問が生じた。

「あの……なんでそんなに驚くのですか? 銀河ネットの端末はそんなに珍しいですか?」

 スバルと所長は顔を見合わせた。そしてスバルが問いに答えてくれた。

「まだ正式には発表されていないが……一年前から地球とは連絡が取れなくなっている。私たちは地球の人類は滅亡した可能性が高いと判断していた」


 スバルの言葉に僕は驚き否定する。

「昨日も話しました! 地球の人々は友達のメロウは生きています」

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