05 over extended.

「お。仕事終わったのか?」


「うん。繁忙期じゃないから。暇だった」


「ゆっくりできるのは良いことだな」


「そっちは?」


「俺を通して理想の恋愛を夢見ていた友人の夢が破れた」


「あ。そっか。神様の婚姻届のせいで周りからは別れたことになってるんだもんね」


「まあ、神も欺くほど綺麗に隠して付き合ってるわけだし、神様バージョンの婚姻届になんと書かれようと、俺たちが付き合い続ける事実に変わりはないからな」


「最初あなたが別れるって言ったとき。わたし、とってもびびりました」


「分かってくれると思ったんだけどなあ。そもそも神様の目からも逃れるレベルで付き合ってるんだから、婚姻届ぐらいじゃ別れさせるのは無理」


「うん」


「行くか」


「うん」


「どうした?」


「神隠し的な恋愛」


「かっこいいこと言いたいだけでしょ」


「その通りです。ああ。あなたの卒業が楽しみだわ」


「まだ何年もあるぞ」


「ふへへ」


 誰にも見つからない。


 ふたりだけの恋。

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その日 春嵐 @aiot3110

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