&α その日2
その日。
神に会った。
「あっどうも神です。ふたりとも元気?」
「えっ。神ってそんな、軽いノリなの?」
「崇めるタイプの神じゃないもんワシ」
「待ってくれ。白髭のおっさんでおんなのこの声は頭の理解が追いつかん」
「いやワシも知らんし。ごめんて」
「で、あの、神様がわたしたちにどういったご用件で?」
「いやね。恋愛の年末調整やってたらさ」
「まだ年末じゃねえぞ」
「知らんよワシも。とにかくさ、カップルを別れさせたりくっつけたりしてるわけ。仕事で」
「大変そうですね?」
「そう。大変なのよ。でさ。数がさ。合わんのよ」
「数?」
「カップルの数。実は神様も知らないところで付き合ってましたみたいなやつがいるかもしれないと思って来たわけ。んでさ、ふたりとも付き合ってるよね?」
「あ」
「手、繋いでたよね?」
「神様まで欺けてたのか。これはこれで良かったな」
「いやまじでどんだけ注意して付き合ってんのあんたら。なんなの。神なの?」
「いや、普通に」
「法令違反なんで。不純異性交遊」
「は?」
「年の差ある学生と社会人が付き合うと、逮捕されんだよ」
「うわなにその法令。くそじゃん」
「まあ、そういうことだから。隠してんだよ」
「へええ。じゃあ別れてよ」
「え?」
「うわなにこわっ。こわいこわいこわい。なにこのおんなのひとこわい」
「俺もちょっと見たことないですね。神様すげえな。俺が何しても彼女怒んないのに」
「いや、書面上さ。付き合ってたらその不純異性なんちゃらで逮捕されんでしょ。だから、見た目上別れたってことにしたげるから」
「なんだそれ」
「うおおこわい。ええとですね、ここにですね、婚姻届があります。神様バージョンのやつ」
「神様バージョン?」
「うん。書類とかじゃなくて、まぢのがちで結ばれるやつ。デスノートって分かる?」
「俺はプラチナエンド派なんで」
「いいよね。プラチナエンド。まあとにかく、この神様バージョン婚姻届は、書くと結ばれます」
「まぢのがちで?」
「うん。まぢのがちで」
「じゃあ書いてください」
「待ってくださいこわいなあもう」
「これじゃあどっちが神様だが分かんねえな」
「学生さんが卒業した瞬間に突然結ばれる感じにしますから。それまで別れるということでよろしいすか?」
「質問があります」
「はい彼氏さんどうぞ」
「別れると、何が起こるんですか?」
「別れます」
「実際にはどのようなことが?」
「いや、普通に。別れんの。価値観の相違的な?」
「え?」
「ねえ彼女さんこわすぎるんだけども」
「分かりました。俺は別れてもいいです」
「は?」
「うおおこええ」
「じゃ、そういうことで」
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