第7話 旅の始まり

 なんやかんやで、元魔導技術大国ノイズへ向かっている。

 なぜ”元”かといえば、滅びているからだ。


「デストロイヤーねぇ」


 機動要塞デストロイヤー。

 8本の足で高速で動き回り、小回りも利いて、穴に落ちたらジャンプする。

 要塞の周りには超強力な障壁が張られており、最高火力の魔法である爆裂魔法を3発は撃ち込まないと破壊できないといわれている。

 その上、空中からの攻撃には要塞の名に恥じない、謎のビームが迎撃し、要塞へ入ってきた侵入者にはゴーレムたちがお出迎え。


「何をエネルギーにしているのか、誰が操縦しているか、目的が何か。正直、デストロイヤーに不明な点は多いです」


 クールビューティー系の女の人は、元冒険者で、現特別研究員のフローラ。


「そういうのって調べないの? 話を聞く限り、危険すぎると思うんだけど」

「調べています。ですが、ノイズのセキュリティが高く、深部に侵入ができていないのです」

「ふーん……で、どのくらいいればいいわけ?」

「……はい?」


 騎士団の優男、レイズに具体的な期間を聞けば、笑顔のまま聞き返された。


「期間だよ。話を聞く限り、ほとぼりが冷めるまでの厄介払いだろ?

 調査し尽くされてる場所に子供が行ったところで、なにが発見できるわけでもない。そういうのはもっと頭がいい奴が行くべき案件だ」

「…………3ヶ月は。もっといえば、1年」


 写真、ネット、下手すれば文字ですら一般的ではないのだから、その程度で案外貴族をボコボコにしたことは許されるらしい。

 ある意味、人間の内輪もめなんて日常茶飯事なのかもしれない。


「はい。ミハルの分」


 差し出されるスープのお椀。

 サバイバルなんてやったことがないわけで、冒険には憧れるが、最低限度の文化的な生活を保障されていた身としては、まぁ、無理だろうなと思っていた。

 だが、運がいいことに、サバイバルに放り出されるタイミングで、ガイドさんが付いた。いや、放り出される時点で、運は悪いかもしれないが。


「普通においしい」

「僕たちは料理スキルを持ってますから」


 胃袋掴みたい系女子が欲しがりそうなスキルですね。


「普通は料理人とかが取るスキルだよ? 俺らは、駆け出しの時にポーション代必要でバイトしてたから取ったけど」

「狂戦士のみのパーティーとか狂ってるしな。いや、狂ってるんだけど。プリースト募集すればよかったんじゃないの?」

「募集はしていたんですが、なかなか……プリーストも珍しい職業ですから」


 条件が難しい上、狂戦士の体力を回復させるスピードを考えると、上級職のアークプリーストの方がいい。そのアークプリーストは引く手数多。わざわざバーサークツインズに入る必要はないというわけか。

 うん。自分がプリーストだったとして、自分を守る気のない、ただ敵は殲滅しに突っ込むだけの狂戦士の回復役やれって言われたら断る。


「じゃあ、遠距離か、中距離は? ウィザードとかなら、範囲攻撃で最初に弱らせたり、撤退支援もできそうじゃん」

「ミハルじゃん」

「ん?」


 無限単発銃による範囲攻撃。威力とかはこれから検証するにしても、弱らせるって意味では可能だし、撤退支援ももちろん可能。


「納得いかない」

「なんで!?」

「肉あげますから、納得してください」


 肉をひとつ入れられた。


 しかし、話していて思ったが、 これから、それなりの時間を過ごすことになるであろう人物たち。コミュニケーションも戦闘も円滑にするために、ある程度知っておきたい。


 エメラル兄弟。

 胡散臭い笑みを絶やさないのがサファイア。子供っぽい方がルビー。たまに真似し合って騙してくる。めんどくさい。

 銃を出して脅せば、口を閉じて引きつらせるのがサファイヤで、口を開けて驚くのがルビー。ってことで、最近見分けてる。

 騎士団ではあるが、この隠すつもりのない好感度の高さに、子供と知ってからは、この世界について色々教えてくれる。

 戦闘スタイルとしては、狂戦士らしく肉体ひとつで成立する近距離型。

 ふたり揃って狂戦士。回復ポーションと超回復というスキル頼りに、敵陣に突っ込み殲滅するらしい。本当によくこいつら今まで死ななかったよな。


 レイズ。

 私のお目付け役。正規の騎士団。

 人としてはいい奴。まっとうな人間。戦闘スタイルも、正当も正当。剣、盾もちろん、弓もできる。

 顔がいいからか、行くところ行くところでモテる。あと貴族らしい。


 フローラ。

 口数少なく、元アークウィザードってこと以外わからない。


「フローラのこと?」

「僕たちも詳しくは知りません。元冒険者同士とはいえ、仲がいいわけではないので」


 まぁ、そんなものか。クラスメイト以上のことを知らないようなものだろう。


「見張りは私たちがしますから、ミハルとフローラは休んでください」

「ミハル、一緒に寝よーなんかあったら抱えて逃げてあげられるし」


 冒険者らしく、野宿することも多いが、子供ということもあるからか、今のところ見張りを任されたことはない。

 アーチャーのスキル的には、見張りには最適な職業だが、そこは年齢と性別を優先しているのだろう。それに、体のせいか、昔以上に眠くなる。

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