第1話 空飛ぶ銃。それもまた良し
この世界の厳しさを感じて、早3ヶ月。
魔物渦巻く世界は、教会が一種の孤児院となっているらしい。身寄りが無いと知ったシスターに拾われ、今はこのエリス教の教会に厄介になっていた。
「こうして考えると、頭の悪さが伺える……ある意味、ちゃんとチェックする重要性か」
このアクセルは、始まりの町のようなもので、周辺の魔物は少なく、弱い。それでも普通の人間にとっては、脅威ではあるが、この辺りで一番繁殖しているジャイアントトードというでかいカエルは、金属を嫌い、打撃がほとんど効かないという、武器や防具がまともに買えない駆け出し冒険者には脅威の存在だが、獲物を飲み込むスピードも遅ければ、消化するスピードも遅い。要は、武器防具を整えてジャイアントトードを倒せるようになったら、一端の冒険者ってこと。
転生特典でもらった、この剣と魔法の世界には少しに合わない”無限単発銃”は、金属だし、遠距離攻撃可能という、ジャイアントトード対策ばっちりの武器だったおかげで、こうして無限単発銃の練習や実験にはもってこいだった。
まず、弾を撃った後は、意識していなければ消える。意識しているうちに溶かして、再形成できるかは不明。
弾の再装填は不可能。ついでに、火薬だけ取り出したり、弾だけ取り出すのも不可能。魔物や地面に潜り込んだのを回収するのもできなかった。
ある意味、魔法に近いのかもしれない。
そして、エイムの補助はない。スコープはついてないので、射的状態。
次、引き金を引く必要はない。というか、持っている必要がない。空中に浮くのだ。この銃。
ただ、撃っている銃の銃口は、なんとなくの方角にしか定められないため、正確に撃つなら、手で持つ必要がある。
そして、この浮いた銃、乗れる。
魔法の箒のように乗って飛べる。どういうことだとは思うが、確かにその辺りの指定はしていなかったし、うれしい誤算だ。
重要な点としては、威力だろうか。
不思議と初めて使った時より、威力が上がっているように感じる。まさかとは思うが、技術ではなく、自分のステータスに比例して上がるとかではないだろうか。
受付のお姉さんにお願いして、ギルドカードを見せてもらったが、筋力とか魔力とか書いてあった。それのどれかに比例しているかもしれない。
誰でも高威力武器が使えるという銃の利点がないとか、そもそも他人に渡して使えるのか。
その辺りはまだ検証中だ。
「……うーん」
「ミハルちゃーん! 換金終わったってー!」
「はーい!」
実験に使われたジャイアントトードは、シスターによってギルドに売られ、エリス教会に住む子供たちの食事や衣服に変えてくれている。
ホームレスにだって簡単になれるような世界で、教会なんて肉、魚どころか、野菜すら畑で取れた足りない野菜に、信者から寄付された小麦とかで作った食事かと思っていた。
間違ってはいないんだが、この世界、野菜が飛ぶ。
肉魚云々の前に、野菜が魔物なのだ。どういうことかと聞かれても、自然の摂理としか言えない。少なくとも畑で大人しくなんて育てられないし、何だったら人を食う。切られてもまだ逃げるし暴れる。
この世界の人たち、よく飢餓ならないよな。
「今日はねぇ、シチューだよ。はい。ミハルちゃんの分」
笑顔で渡してくれる同じ屋根の下で育ったヨキちゃんにお礼を言いながら、受け取る。
あぁ、ヨキちゃん特製のシチュー……おいしい。
「ミハルちゃんには、ちょっとお肉多めね。内緒だよ」
「ありがとう」
ちょーいいこ。かわいい。
本当に、眼福だ。女の子がニコニコ笑顔が、こんなにたくさん。
顔が緩まないわけがない……!!
「ミハルが来てから、ちゃんとしたご飯が食べられるようになってね。ありがとう」
「気にしないで。私も楽しいし」
うん。本当に、かわいい。
そういえば、転生した時に会った、女神は、どうやらアクアといって、アクシス教の女神だという。エリス教の主神であるエリスの姉弟子に当たる人らしい。
良くない噂ばかりで、深く関わる前に尻尾を巻かせてもらった。
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