第24話 不法侵入!?
「で? 妹の部屋に不法進入した言い訳は?」
妹の容赦ない取り調べが開始された。
「だから、俺はとくに用事は……」
「ふーーん、じゃあ、特に目的もなく、勝手に家の鍵をこじ開けて、それからあたしの部屋に侵入したと、そう言いたいわけね」
「まて、鍵を勝手にこじ開けた?」
「粒斗が出て行ってから、玄関の鍵を取り替えたの」
「え? やっぱりそうなのか。じゃあなぜ開いたんだ?」
「知らないわよ。“泥棒を捕まえてみれば変態兄だった”」
「そんな短歌みたいに読むな! それに泥棒って……一応俺はここの家族だろ?」
「まあそうね、残念ながら。じゃあ百歩譲って家の玄関をこじ開けたのは方法は良くないけど、一応しょうがないと思ってあげる」
「百歩も譲るのかよ!?」
「もっと譲って欲しいの?」
「いや、だから開いていたんだって」
「そこにいる咲恋に聞いてくれ」
「また、他に罪をなすりつける気? 咲恋に玄関の鍵を開けるなんて、出来るわけないでしょう? 猫なんだから」
「猫? 彼女が出来た時に“猫を飼い始めました”的な表現もあるが……咲恋とはそこまで関係が進んでないから、おまえのその表現は不適切」
「あんた政治家なの? 答弁が全然、意味が分らないけど! それで言い訳しているつもり?」
俺に腹が立つのはいいけど、咲恋を猫呼びするのは如何なものか。
気になって咲恋を見るが、本人はまったく気にしていないみたいだ。
「いつも粒斗は、おかしな言い訳ばかりする。猫は猫でしょう?」
だが妹は俺の意見など、はなから聞く気は無いようだ。
確かに考えてみれば、可愛い彼女を家に入れ、二人っきりになり、タフマンを一気飲みして、妹の部屋に二人でいたら、優紀にとっては、かなり嫌な感じがするだろう。
それに「俺の彼女が鍵を開けました」の言い訳よりうちの家では「変態兄貴が妹のアレ欲しさに侵入しました」の方がみんな納得出来る……なんてこったい!
それにしても、俺と妹の言い争いを前にしても、まったく動じない咲恋。
さすがだと言いたい。
けれど脚を組み直す仕草に、程よく肉がついた白い脚が露わになって、そっちに目を奪われる俺。俺の視線に気がついた咲恋がニコリとする。
どうやら俺の下心などお見通しのようだ……俺って単純過ぎ? でも不思議にまるで妖精のように熱感を感じない咲恋。まてよ……元々は咲恋が俺の家に来たいと言って、家の鍵を開けて妹の部屋に侵入した。
そして……妹の部屋を見た。
考えられない行動だ。咲恋の目的はなんだったんだ? もしかして優紀の部屋になにかあるのか?
「黙っていないで、ちゃんと説明しなさいよ!」
途中で度々、妄想モードに切り替わる俺にイライラする優紀。
もしかしてブラック優紀が出てるのでは!?
「確かに俺の言うことは、信じられないかもしれない。だが、おまえが大切なんだ! 何か心配事があるなら兄ちゃんにぶつかってこい!」
ガシン、強烈な衝撃を左側頭部に食らった、妹の左ハイキックである。
本当に”気持ち”を側頭部にぶつけてきた優紀。
「待て優紀。ぶつかって来い! の意味が違うぞ、それに……」
「何よ!?」
「おまえ……パンツ見えてるぞ」
「変態! やっぱり妹のパンツ欲しさに、部屋に強盗に入ったか!」
スラリと伸びた脚が俺の脇腹を直撃。
「ブホォ、お、おまえ手加減無しかよ」
「私の世間体を崩す事を言ったら、殺すって宣言してあったわよね」
そりゃ宣言したかもしれないが、こんなに簡単に実行するのは如何なものかと。
「うう、うわぁん~」
両手を顔に当てて、真っ赤な顔になって泣き出した優紀。
「大丈夫だ、俺も咲恋も……」
顔を両手で覆ったまま、首を振る優紀。
「違うわ、猫なんかどうでもいい。一番知られたくない人に、知られてしまった。それが悔しいの悲しいの」
「猫っておまえ……咲恋は人間」
顔を上げて長い人差し指を俺に向けて「意義有り!」と裁判のように強く示す。
「違うわ……あたしが泣いているのは、この世で一番知られたくなかった……粒斗、あんたに秘密を知られた事よ!」
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