第14話 強制捜査

 ドンドン、俺の扉をノックする音。


 もの凄く頭が重い……曇った俺の頭の中。妹の謎を暴く作戦を考えていたら、眠れなくなった。いや、でもおかしな夢は覚えてる、また俺が天才で博士のお話だ。


「まった、朝から眠いのになんだよ!」

 もう昼近くなのだが、ドアを叩く者へ勝手な主張をする。

「朝まで悪事を企んでいたので眠いんだ! もう少し寝かしてくれ!…うん? 母さんかあ」


 ひどく眠いし意識も朦朧としている。

 普段の家族に対する危機管理が甘くなっていた。


「粒斗……ちょっと入っていい?」

 すでに戸が開き始めている。うーん、面倒くさい……え? 母親が部屋に入ってくるって? 母の進入に慌てる俺。


「ちょっと、ちょっとだけまってくれ! お願いだ!」

 スッキリしない頭で、危険物のサーチを実行する。

 エッチな本は……分散して格納済み。

 学校からのやばい資料……加熱処理済み。

 PCのやばいログ……消去済み。

 PCの電源……オフ。


「大丈夫だ! 問題ない!」

 扉が開いて母親が顔を出した。

「問題ないって……部屋に入る許可にしては変な返事ね」

「別にいいだろ! 何の用? 日曜の早朝からさあ」


 母の後ろ越しに、廊下に立つ妹の優紀が見えた。

 妹に気を取られていた間に、母親が部屋の奥まで入って来やがった。


「うぁああ、入ってくるなよ!」

「どうしたの? 何か問題でもあるのかしら」

 さっきからの俺のおかしな言動に、余計な母センサーが働き始めたら困る。


「いや、まったく問題無い……筈だ」

「まったく変な子ね……優紀、早く入ってきなさい」

 強気な妹が珍しく。モジモジしている。

 母親の前でもあるし、少し兄貴らしく振る舞ってみる。


「どうした優紀? 入ってこいよ。兄ちゃんも忙しいのだよ。これから勉強しないといけないからな。そのまえに朝飯を急いで食って、昼飯は定刻通りにしたいしな」

 俺の言葉でため息をついてから、やっと優紀まで俺の部屋の中に入ってきた。


「お、おい、いそ、いそがしいだって。それでなに? 俺、本当に忙しいんだけど」

 ベッドから起き上がった俺は、PCが置かれた机の前に進み、椅子に座って、クルリと向きを変えると、ジッと俺を見つめる優紀。


 肩より少し長めに垂らす、黒髪から覗くその大きな瞳。

 俺の友達が口を揃えて「可愛い……俺の嫁にくれ」と言う妹の優紀が微かに呟いた。


「……くせに」


 消え入りそうな、微かな優紀の声。良く聞こえなかった俺が、調子にのって兄貴らしく聞き直す。


「なんだ優紀、聞こえるようにもう一回言ってくれ。こっちは忙しんだ。俺はこれから勉強に勤しみたいんだ、せっかくの日曜日だしな。飯は食ううが」

 しかし優紀は下を向いたまま、なかなか要件を話さない。

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