第13話 怪しい行動していた、俺が痛いだろう

 両手を組んで ため息をつく優紀。俺の妹に怒りを向ける俺。

「あ・の・な!」

 俺の言葉を人差し指でさし押さえ、優紀がピンクの唇を開く。

「いきなり怒りだして話す事を、逆ギレ。語尾を上げて話すのを、恫喝って言うの」


 ダメだ、どうやっても妹には勝てる気がしない。


「遅れて申し訳ありませんでした優紀様。これはお約束のPCでございます」

 優紀への借金の返済が残ってるなあ…と思いきや、有り得ない事が、妹の部屋で起こった。


「借金は残りはいいわ」

「はぁ?」

 妹の優紀の言葉を理解出来ない俺は人ごとコメントを口にする。

「それは随分と剛気な事で……」

 なんか今一な俺の反応に、妹の優紀が不満そう。

「なによ? なんか文句あるの? 帳消し、て言ってるのに!」


 そんな優遇制度が、なんの条件もなく実施されるわけない。


「そのかわり有事の時に身体で払ってもらうから」

「ほら、やっぱり、条件つきかよ!…分った。宇宙人でも、謎の円盤UFOでも、俺が倒してやる! 任せとけ!」

 命の危険、有事がこの平凡過ぎる俺に訪れるはずはずはないし、あるならむしろ歓迎したい。


 俺の答えに満足したのか妹は短く言った。

「そ、じゃあもういいよ」

「へ? どうゆう事で?」

「邪魔だから、自分の部屋に帰って」

「そんな、まだPC持ってきて五分……」

「変態、早く女子中学生の部屋から出て行け!」


 すごすごと自分の部屋に戻る俺。妹に一瞬可愛いと思ったのになあ。

 結果廊下に追い出された。

 バタン、大きな音を立てて妹が部屋の扉を閉めた。


「はあ、なんか俺って可哀想だな……だが頑張れ俺! 負けるな俺!」


 誰も言ってくれないので、自分で自分を励ます俺にその時、僅かな謎が残った。

 妹は新しい、ノートパソコン持っている。今時、高性能のPCを必要とする人間は少数だろう、だいたいはスマホかパッドで十分。とくに女子には。


 妹に内緒で、ネットでリモートログインして、俺の部屋の旧PCから妹のPCへ入り込む事が出来るように仕掛けをしている。

 やはり兄としては妹の秘密は」暴かねばならない。


「さて我が妹君は、一体PCで何をされてる? あれれ?」

 部屋に帰った俺はこっそり、妹のPCにリモート接続。だが妹のPCにログイン出来ない。パスワードが変更されていた。


 信頼という言葉は、俺に対して存在しないようだ。

 はぁあ~~どうせ俺は童話のオオカミ。

 悪い魔法使いなどの類。

 つまりやられ役なのだから、退治されるまでは悪行を尽くさねば。

 

 勝手な使命に燃えながら、なんとか妹のPCにリモートログインしようとした時に扉の向こうから大きな音。ドンドン、ドンドン、それは苛ついたノックの音。


「なにしているの粒斗!?」

 ガットと、一気に開いたドアが俺の頭を直撃。ズキズキ疼く頭を押さえる。

 優紀が不機嫌そうに立っていた。

 俺の不穏な行動を隣の部屋で察知したのか?

 我が妹は耳とか感とか、めちゃくちゃ鋭い。

 特に悪口や俺の悪行の類などは。


「優紀! 急に扉を開けたら、?」

 単なる現状の説明だったが、妹にはなんの事か分らないので、怒りを助長するだけだっ。

「また悪だくみ!? 何を見ていたの? PCいじってたでしょう? 何してたの!?」

 いきなりの核心をつく妹の言葉に一瞬固まった俺。

「え? えっと……エロ動画かな?」


 まだ疑いが晴れないようで、妹は俺に動画の詳細を聞いてきた。

「動画かな? ね、ふ~ん……どんなタイトル?」

 とっさに俺の趣味性を生かした、動画のファイル名を読み上げてしまう。

「おにいちゃん優しくして」

 ふむ、頷く優紀。

「兄と妹ものね」

 俺のタイトルコールに再び頷く優紀。

「お母さん大好き!」 

「母と息子ものね」

 やっと安堵の表情を見せた優紀。

「良かった……それならいいわ」

「おいおい、俺がマニアックな動画見てもいいのかよ!?」

「構わないわ。逆に安心する題名。いかにも粒斗が好きそう」

 バカは安心だ。そんなの妹の視線だった。

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