第3話 桜を切った人を真似てみる
腕を組んだまま、俺の言い訳を聞いている親父の顔色を伺いながら、低姿勢で話しを続ける。
「たしかに少し遊びすぎたみたいだ。こんなに携帯の料金が高いなんて……ごめんなさい」
ペコリ、頭を下げとにかく、素直で低姿勢でいくのみ。
素直に謝ったおかげか、親父の怒りは少し収まったみたいだ。
「そうか……素直に認めるわけだな」
「はい、そのとおりです」
まずは順調。このままいってくれよ……。
「おまえは、たかが携帯ゲームに、十万円以上もかけたわけだ」
無言で頷く。低姿勢を持続せよ俺。
「たかがゲームに、こんなお金と時間を掛けられるとは、高校生の分際でいい身分だな」
たかがゲーム、それを連発する親父。どうしても俺がやった行為を、くだらないものだと言いたいようだ。でもガンバレ! 低姿勢の俺。
「まったく…くだらない事に関してだけは、やる気があるだな!」
ムム……低姿勢を維持するんだ俺。がちょっと反抗。
「親父の言う、くだらないものが俺には、結構大事だったりするんだ」
「なに? 高校生で遊びが大事だと? そんなのは働いて、自分で給料を貰えるようになってから言え!」
くそぉ~~再び低姿勢を維持……でも、でも~~!
なんかむかついてきた。
確かにことごとく親父のおっしゃる通りで、俺は親の金で食わしてもらっている。
そして高校もサボリ気味で、いつもスマホやったりPCをいじったりしている。
その趣味の一つが上げた成果のせいで、携帯の請求が凄いことになっている。
(分かっているさ、全部俺が悪い)
でも、俺のやった事の一部だけを切り取り、取り上げられても困る。公正に評価するなら、前後関係や状況もちゃんと考慮して頂きたい。
「それで? なんかいい事あったか? こんなに金を掛けてゲームをする事で?」
だから親父の言うように、そんなに単純な話では無いんだよ。
良いこと? あるよ。でも親父には解らないだろう? その十二万は、俺としては無駄使いじゃない。俺なりに有意義に使ったんだ。
「黙っていないで、言いたい事があるなら言ってみろ!」
出たよ……大人がすぐに言う台詞。
(黙っていないで何か言え!)
ここで何か言うと、屁理屈として全面否定のくせに。あのさ親父、人間は痛いところを突かれ、逃げ場を無くすと、やることは一つしか無い。理不尽な怒りの発動。つまり…逆ギレだ。
「あ、あるさ! その時間とお金で、俺は凄い事をやってのけた!」
ポケットから自分のスマホを取り出し、ソーシャルゲームのメニューからログインして、画面を親父に向ける。
「なんだ? それは?」
親父が画面に顔を近づけて、内容を確認する。
「よく見てよ! このキャラを! LV1500だ!」
俺のレジェンダリーが誇らしげに、その勇姿を見せていた。
「全てのレアなお宝をゲット済み! 全スキルコンプリート! 見てよこの装備を! 凄いだろう?」
親父は携帯から目線を外して、俺をジッと見つめた。
「どう凄いことなんだ?」
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