第5話 快楽は踊り場
ゆり子は、多恵から衝撃的な提案をされた日から、田村宅に行くとを止めてしまった。自治会の用事で多恵が来た時も、居留守を使ったり望に出でもらっていた。
「前はあんなに田村さんを慕っていたのに、最近かわったね。何かあったの」
望にそう言われても、ゆり子は曖昧な返事をするのみだった。
ゆり子は、多恵に手ほどきをされ新たな感覚を知った。これは多恵に感謝し尊敬さえしている。
ただしそれは女性同士が、自分でする時を楽しむためのテクニック指導であって、男性が相手になればいけない関係になる。それは望への裏切りであり、ゆり子は気が進まなかった。
数日が過ぎたある夜、ゆり子達は久しぶりに愛し合った。だがそれは、多恵に調教されたゆり子には全く物足りないものだった。
ゆり子は、安らかな寝息をたてている望の背中を複雑な気持ちで見つめ、家庭を壊すなんて全く考えてない、ただ多恵に教えられ快楽の扉を開けてしまった自分に嘘はつけないな、と頭の中で言う。
次の日、ゆり子は久しぶりにオモチャを使ってみた。自己流でやっていた頃より、格段にオモチャや指の使い方が上手くなり、気持ち良くなれた。だが多恵の柔らかな指でコーチされていた時とは、全然比べようもない感じ、自分の体が快楽に目覚めた事を意識した。
数日後、意を決したゆり子は、田村宅のチャイムを押す。
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