第2話 いけない秘め事
その夜、ゆり子達は新居で初めて愛し合った。ゆり子達は、月に数回くらい愛し合うが、結婚し数年して初めの頃のようなトキメキはすでに消え、多くは望が求める夜に、ゆり子が応じる感じになっている。ただ、ゆり子の体の中には、燃え残る何かがある様に思えてならなかった。
その夜も、望がゆり子を求めて、ゆり子自身も待っていたが、すぐに
「あっ、、、」
もれる様な声が聞こえ、彼は素早くゆり子から離れ、おやすみ、と言い、
背を向け寝て、小さな寝息が聞こえるまで1分とかからなかった。
ゆり子は、望の背中を見ながら、自分の中でくすぶるものを感じ、これが幸せというものかしら、と心の闇を見つめた。
翌日、ゆり子は望が出勤しひとりになると、まだ開いてないダンボール箱から小箱を取り出し、その中にあったオモチャのスイッチを入れてみた。ウィーンウィーン、と動く音がして、ゆり子は笑った。
それは望には知られたくないモノで、通販ショップから買い、それで楽しんでいる。
望は真面目な男で、ゆり子への愛情は変わらない。それはゆり子も同じであり、望以外の男性とどうにかなりたいとかは思ってない。ただ夜がマンネリ化してくると、自分だけの快楽で満足している望が憎らしく、ナイショでオモチャを使いたくなるのだ。
引っ越しの何やかやで、かなりご無沙汰だったが、望がいないタイミングを待っていたのだ。
一人で楽しんでいると、
ーーピンポン!
ドアのチャイムが鳴っても、ゆり子の耳には届かなかった。
さらに、ゆり子は一人で遊んでいた。
するとリビングのカーテンの隙間から、誰かの足のような物が見えた気がした。その瞬間、秘密の行為をしていたゆり子は、一斉に血が引くのを覚えて、羞恥という地獄に落とされた。
ゆり子は、急いで服を身に着けオモチャをしまい、そっと外を伺ってみた。そこには人間はもちろん猫さえいなかった。
あられもない姿を誰かに見られたかもしれない。そう思うだけでゆり子は、体中の脂汗が滲み出る感じがした。いっそ、どこかに身を投げたい、そんな気分にさえなるのだ。
それにしても誰に見られたのだろう、ゆり子は想いを巡らしたが、引っ越した早々、近くに知人はいないし、友人達を招くの数日後に予定している。まだ宅配便が来るとは思えないしーー。
ゆり子は、冷静になりこの家にくる可能性のある人物を思い起こす。すると先日、挨拶に行った田村夫妻の顔が浮かんで来るのだった。そうだ、この家に来て改めて知り合った田村夫妻のどちらかに違いない。そう思うと、あの穏やかな田村夫妻に自分はどう見えたのだろう。ゆり子は、恥ずかしさに顔全体に血が集まり倒れそうになるのだ。
いや、人違いか単なる勘違いかもしれない。ゆり子は、羞恥心に縛られながらも、それを確かめたい気持ちにかられ、田村夫妻に会いに行こうと心に決めた。
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