快楽の花園

しゅう

第1話 快楽への出会い



 ゆり子と望夫婦は念願のマイホームを手に入れた。ゆり子は31歳、望は35歳。子供はまだいない。ここは市街地からちょっと離れた閑静な住宅街。隣に大家でもある田村という中年夫婦が住んでいる。

 ゆり子達が引っ越しを終え、田村宅に挨拶に行くと、上がってお茶を飲むようにすすめられ、リビングのソファに座った。外には手入れされた庭があり、色とりどりの花が咲いている。

「きれい! お花がお好きなんですね」

ゆり子は、子供のみたくはしゃぐように言うと、田村達夫と多恵夫婦は笑顔を見合わせた。

 達夫はコーヒーをひと口飲み笑顔で、

「ここは土地が安いから、たいていのお宅に庭が付いているんです。中村(ゆり子達の姓)さん宅にも庭があるから、花や畑作りを楽しむと良いですね」

「私、土いじりなんてした事ないから出来るかしら」

ゆり子は横を見ると、

「ーー確かに君には無理かもね」

 望は軽く笑った。

「大丈夫ですよ。うちの人だってここに越してくるまでは、全く植物を育てた事なかったけど、ご近所さんに教わったりして、ここまでにしたんです。そうだ、育て方が分からなかったら、うちにいらっしゃると良いわ。一緒にお庭作りを楽しみましょう。ねえ」

 田村多恵は、達夫に同意を求める顔を向け、ゆり子達に微笑んだ。

「そうだね。うちで教えてあげられる事なら、何でも教えさせて下さい。うちは子供が大きくなり家を出て、夫婦だけで静か過ぎるんです。中村さんが遊びに来て下さると、にぎやかになって嬉しいです」

 達夫は頷くように言う。

「本当に良いんですか」

 ゆり子が笑顔を見せると、

「ええ、こちらからお願いしたいわ」

 多恵は微笑む。

 ゆり子達は自宅戻った。

「良い感じのご夫婦で良かったわね」

  ゆり子がそう言うと、

「うん。この街の事、いろいろ教えさせてもらうと良いね」

 望は笑顔で返した。

 この時はまだ、田村の庭にチューベローズの鉢植えが、見事に咲いているのを、気がついてないゆり子達だった。

 

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