6P 新キャライベントは好感度が大事

「焦がしきゃらめる先生ですよね?」

「.....い、いえ。違います」


 思い切り目を反らす女性。


「せんぱーい!お待たせしました。.....誰ですか?その人」

「この人は....さっきここでハプニングがあってね。困ってたから助けたんだ」

「そうだったんですね。えっ、この絵って..」

「わ、私、この後用事があるので。失礼します」


 そう言って女性は帰っていった。


「先輩、あの人って」

「焦がしきゃらめる先生だと思う」

「ですよね。あの絵のタッチは絶対そうですよね」


 それにしても焦がしきゃらめる先生って女性だったんだ。


「先輩、先輩」

「どうしたの?」

「あの人が本当に焦がしきゃらめる先生なら、小説の続き出るんじゃないですか?」

「確かにそうかもしれない。でも書いてくれるかどうか...」

「どうしてそんなに弱気なんですかー」

「いや、弱気って言うか....」

「もう。先輩のそういう所嫌いじゃないですよ。焦がしきゃらめる先生の事気になるんですよね」

「ま、まあ」

「なら、早く追いかけてください」

「でも、まだデートの途中だし」

「別にいいですよ。それに私はぐらにゅーとう先生のファンなんですから、早くあの人を説得して本を出してください」

「彩ちゃん.....」


 そうだよな。俺の大事なファンが待ってるんだ。ここは何としても焦がしきゃらめる先生を説得して絵を描いてもらわないと。


「ありがとう、彩ちゃん。俺行ってくるよ」

「それじゃあまた学校で」

「ああ」


 俺はすぐさま焦がしきゃらめる先生の後を追った。


「...先輩」


 ■■■

 居た!焦がしきゃらめる先生だ。


「あ、あの!」


 声をかけるとビクッとし、後ろを振り返る焦がしきゃらめる。


「貴方はさっきの」

「あの、少しお話しませんか?」

「でも、私...」

「少しでいいんです」

「.....じゃあ、あれなら」


 先生が指で指した先には


「観覧車、ですか?」

「は、はい」

「分かりました。行きましょう」

「えっ?」


 俺は先生の手を取り、観覧車へと向かった。


「ごゆっくりどうぞー」


「......」

「......」

「あの、俺。ぐらにゅーとうです。小説書いてる」

「し、知ってます。担当さんに写真見せてもらいましたから」

「そ、そうなんですか」

「はい。それで話って絵の催促ですか?」

「いえ、単純に話がしたいなと」

「そうですか」

「俺、先生の絵小説の絵描いてもらう前から好きでした!」

「それは、どうも」

「あの、繊細なタッチ、そしてあのぷにぷにのほっぺに対する情熱。最高です!」

「.....私は貴方の小説が嫌いです」

「えっ?」

「貴方のまっすぐな表現。正直吐き気がします」

「あ、あの」

「挿し絵だって本当はしたくありませんでした。なので今回で貴方との仕事は受けないようにします」

「....そ、そうですか。わざわざありがとうございます」


 そして何だか気まずい空気の中、観覧車は一周し戻ってきた。


「それでは今月には挿し絵は提出しますが、今後は別の人と組んでください」


 そう言って焦がしきゃらめる先生は駅の方へと向かっていった。


「これで本は出せる。けど.....」


 あそこまで言われると流石にへこむな。

 けれど本当の事なんだよな。彩ちゃんにも下手くそって言われてるし。


 そんな感じでへこんでいると電話がかかってきた。


『もしもし』

『あっ、もしもしお疲れ様です。茂野です』

『お疲れ様です。単行本の事ですよね?』

『そうなんです!先程焦がしきゃらめる先生から連絡がありまして、イラスト描いてくれるそうです』

『そうですか。連絡ありがとうございます』

『嬉しそうじゃないですね。もしかしてデート失敗しました?』

『連絡してまでプランを教えてもらったんですから失敗はしませんよ』

『確かにそうですね。では何か別の事ですか?』

『気にしないでください。大したことじゃないので』


 少し間が空き、茂野さんは。


『そうですか。でも何かあったら相談してくださいね。私は先生の担当なんですから』

『ありがとうございます。失礼します』


 こういう時だけ勘はいいんだよな。

 でもこればっかりは自分でどうにからしないと。


 駅に向かう前に俺は彩ちゃんにお詫びの連絡と本が無事発売すると言う連絡をいれた。


 するとすぐに返事は帰ってきた。


「発売おめでとうございます!絶対発売日に買いに行きますね!それと今日の事は気にしてないので大丈夫ですよ」


 彩ちゃんなりの気遣いなのだろう。


「ありがとう!次の作品は面白く出来る様に頑張るよ」


 さてと、帰って書くか。

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契約彼女とラノベ作家 穂志上ケイ @hoshigamikei

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