5P 休日イベントに休みはない
少し寒い4月が終わり徐々に暖かくなってくる季節。5月になっていた。
「それじゃあ、長い休みだからって羽目外すなよ」
そう、明日からゴールデンウィークなのだ。
「賢人は何か予定あるのか?」
「特にはないな。祐は?」
「俺は部活だ」
「忙しいそうだな、サッカー部は」
「そうなんだよ~」
「まぁ、頑張れ」
軽いあいさつを終え、廊下へ出た。
「せーんばい!」
「どうした?」
「むー。ここは喜ぶ所ですよ!こーんなに可愛い可愛い後輩が迎えにきてるんですから」
「ワー、ウレシイウレシイ」
「何ですか、その感情が込もってない言葉は」
「いや、喜ぶ所だって言ったから」
「もう、いいです。それより帰りましょ」
「あ、ああ」
「明日から休みですね」
「そうだな」
「予定とかあります?」
「特には」
「じゃあ私とデートしませんか?」
「まぁ、いいけど」
「本当ですか!」
「何故嘘をつく必要がある」
「それもそうですね」
一体俺を何だと思ってるんだ。
まぁ、勇気を出してデートに誘うんだ。そんなにあっさりオッケーを貰ったら俺でも少し疑う。
「それじゃあ、3日に梅田駅で待ち合わせでいいですか?」
「分かった」
「あっ、因みにデートプランは先輩が考えてくださいね」
「何でだ?」
「男性だったら女性の私をリードしてくださいよ」
「な、成る程。分かった」
男の俺がリードか。今まで無縁の言葉だったし、何というか実感がないな。
「それではお願いしますね!」
「ああ」
俺は彩ちゃんを駅まで送り、家へと向かいだした。
さてと一体どうしたのものか。普段出掛けない俺がデートプランを考えるなんて。下手な所には行けないな。
そんな事を考えながら俺は家へと向かっていった。
-自宅-
『あっ、もしもし。如月です。ちょっと聞きたい事が。...はい、分かりました。よろしくお願いします』
-デート当日-
待ち合わせ時間は昼過ぎに設定した。
駅の改札口を出た所で待っていると。
「せんぱーい!」
手を振りながらこちらへ向かってくる少女。そう、彩ちゃんだ。
「待ちましたか?」
「いや、そんなに」
「ふふっ」
「何だよ」
「いえ、何て言うかとても新鮮だなと思いまして。先輩の私服」
俺が今回着ているのは白の半袖にその上から紺のジャケットを羽織り、下はグレーっぽい色のパンツだ。至って普通のコーデだが、強いて言うなら普段は付けないワックスだろうか。
「やっぱり先輩は元の素材がいいんですよ。もっとファッションセンス磨けば......」
「どうした?」
「いえ、先輩は今のままでいてください」
「は、はぁ」
一体何なんだ。
「そんな事よりもです!何か言うことはないんですか?」
白のVネックのブラウスに花柄の青いスカート。そして微かに施されたメイクにワンポイントの編み込み。
「あっ、えっと。...綺麗だ」
「それだけですか?」
「え、えっと」
「ふふっ。ちょっとからかっただけですよ」
「......」
「あれ?怒っちゃいました?」
「めちゃくちゃ可愛い。俺の、好みだ。」
「あっ。....あ、ありがとう、ございます」
恥ずかしかったのか、後ろに振り向いてしまった。
せ、先輩がそんな事を言ってくれるなんて。か、顔にやけてないかな。と、とにかく深呼吸を。
すーう、はー。
「そ、それで先輩今日はどこに行くんですか?」
「えっとだな。昼はまだ食べてないよな?」
「は、はい」
「それじゃあ、軽く食べに行くか。こっちだ」
そう言って俺は彩ちゃんの手を取った。
「ふぇ?」
「どうした?」
「あっ、いえ」
せ、先輩何だか今日は大胆すぎるよ~。普通だったら絶対こんな事しないのに。
気がつくと本が並べられたカフェへと来ていた。
昼過ぎではあるがある程度席が空いていてすんなり座る事が出来た。
「彩ちゃんは何にする?」
「え、えっと。じゃあこのパスタにします」
「じゃあ俺はサーモンソテーのプレートにしようかな」
「先輩、思いの外ヘルシーですね」
「そうか?」
「はい」
「まぁ、俺は少食だからな」
「そうなんですね」
色々話していると10分程で注文した料理が届いた。
「ん。旨いな」
「えっ?先輩ここに来たことないんですか?」
「ああ。今日初めて来た」
「普通は事前に来るものですよ」
「すまん。ちょっと時間がなくてな」
「ま、まあ、先輩は働いてますしね。しょ、しょうがないですよ」
彩ちゃんなりの気遣いなのだろう。でも本当の事を言うと積み本を消化してたら時間がなくなったってだけなんだよな。
「それでこの後どこに行くんですか?」
「次はルクアにで行こうかなと」
「おー。良いですね。何か買うんですか?」
「特には決めていないな」
「じゃあ、アクセサリーとかどうです?」
「アクセサリー?男の俺が?」
「今の時代別におかしい事じゃないですよ。
「そうなのか?」
「はい!と言う事で早速買いに行きましょう!」
「待て待て。俺はまだ食べてない」
「もー。先輩は食べるの遅いですね」
「いや、ゆっくり食べてもいいだろ」
「良くないですよ~。なので食べるの手伝いますね。あーん」
そう言うと先輩は使っていたフォークで料理を取り、こちらへ向けてきた。
「せ、先輩。それだと間接キスになりますよ」
「そうか。じゃあ新しいので....」
そう言うことじゃなくてー。
もう!なんで動揺しないの!!
こうなったら!
パク。
私は先輩の使っていたフォークを口にした。
「.....ふふっ。間接キスしちゃいましたね」
より意識しやすいように私は唇に手を当てた。
「いやいや、それならこの間もしただろ」
「そ、それはそうですけど」
くっー!全然動揺しない。何で何で?
「.....この感じだと先輩、一生心理描写上手くならないかもですね」
「何だよ、いきなり」
「本当の事です」
一体どうしたんだ?
今だ彩ちゃんの考えが分からないまま時間が過ぎて行った。
それから何とか食べ終わる事が出来、俺たちはルクアへと向かった。
-ルクア-
「先輩、こういうアクセサリーとかどうですか?」
渡されたのは少し歪な形をしたブレスレットだった。
「いや、流石にこれは...」
「じゃあ、これはどうです?」
渡されたのは先程とは真逆のとてもシンプルなデザインのネックレスだった。
「これならどんな服にも合わせられます」
「確かにこれなら.....えっ?」
俺はネックレスに付けられていた値段を見て驚いた。
ネックレスって結構するだな。
まあせっかく彩ちゃんが選んでくれた訳だし、買うか。
「さてと、彩ちゃんは何か買う物とか無いの?」
「私ですか?そうですねー、しいて言うなら下着ですかね」
「えっ?」
「良かったら先輩一緒に選んでくれませんか?」
「い、いや。それは流石に....」
「ふふっ。冗談ですよ。冗談」
「ま、まあ、そうだよな」
いや、本当だったらびっくり所じゃねーよ。軽くデ●ラの話思い出したわ!
それからルクア内を色々周り、気が付けば夕方になっていた。
「ふー、だいぶ周ったな」
「そうですね」
普段こんなに歩かない為、足が悲鳴を上げている。デートってこんなに大変なんだな。
「先輩、一つ寄りたい所があるんですけどいいですか?」
「いいけど....」
案内されて着いた場所は....
「なんでアニメイト?」
「そんなの決まってるじゃないですか。これを買うためですよ」
そう言って手に取ったのは俺の小説だった。
「持ってるだろ、俺の小説」
「はい!でもいっぱい欲しくて。それに記念にしたくて」
「...そうか」
「なので買ってきます!」
「はいはい」
そう言って彩はレジへ走って行った。
俺は他の人の邪魔にならない様に外へ出る事にした。
「おーい、姉ちゃん。こんな所でお絵描きかい?」
外に出ると柄の悪そうな男が女性に突っかかっていた。
「........」
「けっ!無視かよ。ならこうして」
すると男は女性が持っていたスケッチブックを無理やり取り上げた。
「そ、その.....。返して、ください」
「何だって?聞こえねーな」
人が大勢いる中この状況をどうにかしようとする人は一人もいなかった。そりゃそうだよな。あんな面倒事の塊にわざわざ首を突っ込むなんて事は殆どの人間がしない。
「ちょっと、いいですか?」
「あん?何や」
「そのお姉さん困ってるんで辞めてください」
「お前、この姉ちゃんの連れか?」
「違いますけど」
「なら、引っ込んどけ!」
男は女性から取ったスケッチブックを振り回してきた。
それに反応する事が出来ず顔を少し切ってしまう。
「.....お姉さんにスケッチブック返してください」
「鬱陶しいな。そんなに返してなら返してやるよ」
すると男は手に持っていたスケッチブックを破り始めた。
「ほらよ、返してやるよ」
そう言ってバラバラになったスケッチブックを投げ捨てた。
「な、何て事を!」
「も、もういいです」
「そこの姉ちゃんもそう言ってるんだ。大人しく帰りな」
すると女性はバラバラにされたいイラストを集め始めた。
男はこれ以上いじめ甲斐がないと思ったのかその場から立ち去って行った。
「すみません。何も出来なくて」
「いえ、気にしないでください」
俺も落ちているイラストを集める事に。
それにしても絵上手いな。この独特なタッチに肌の柔らかさを強調する絵。ん、待てよ、この絵どこかで.....
「焦がしきゃらめる、先生?」
「えっ?」
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