4P 学校イベントは何かと大変

 あれから数週間。気がつけば4月は終わりへと向かっていた。


「明日、楽しみだな!賢人」

「明日?何かあったか?」


 祐とはなんとなく話していたのにも関わらず、意外と仲良くなっていた。自分でも驚きだ。


「明日は校外学習だろ。京都楽しみだな~。俺絶対舞妓さんと写真撮るわ!」


 そう言えばそんな事を言っていた様な...


「賢人はどこ行くか決めたのか?」

「いや、特には決めてない」

「じゃあ、俺と一緒に色んな所行こうぜ!」

「何が悲しくて男2人で京都散策しないと行けないんだよ」

「それもそうか。じゃあ適当に女子誘うから。明日1人で行くなよ」


 そう言って祐は廊下へと出ていった。


 いや、俺まだ一緒に行くとは言ってないんだけど..


 -放課後-


「先輩は明日校外学習なんですよね」

「ああ。京都にな」

「先輩が1日居ないのは寂しいです」

「夕方には帰ってくるから会えるだろ」

「むー。そう言う事じゃないです~」


 女心は難しいな。


「お土産楽しみにしてますね」

「分かった」

「それじゃあ、お疲れ様です。先輩」

「ああ。また明日な」


 さてと、俺も帰って明日の準備しないとだな。


 -翌日-


「ういっす!賢人」

「ああ、おはよう」

「昨日は眠れたか?」

「ん?まぁ、眠れたな」

「俺今日が楽しみ過ぎてあんま寝れなかったんだよ~」


 小学生かよ。ましてや修学旅行じゃあるまいのに。


 それから教室で点呼を取り、バスへと乗り移った。

 勿論、隣は祐だった。


「それで着いたらどこに行くんだ?」

「まずはベタだが清水寺に行く。そんで買い食いやらなんやしてその後地主神社に行く!」

「地主神社?」

「ぶっちゃけ、清水寺よりこっちがメインだ。まぁ着くまでは何の神社かは秘密な」


 祐なりに色々調べたのだろうな。何と言うか熱気が伝わってくる。


「あんた、そう言うのはしっかり調べるのね」


 後ろの席から乗り上げてきたのは同じくクラスの女子。確か名前は...


「別にいいだろ!川島」


 そうだ。川島美華かわしまみかだ。短髪で八重歯が特徴のいわゆるおちょくる系女子だ。


「こんなやつに無理矢理付き合わなくてもいいんだよ如月」

「あ、ああ」

「それより、如月ってあの可愛い1年生の子と付き合ってるの?」

「そんなの付き合ってるに決まってるだろ!なぁ祐」

「あんたには聞いてない!でどうなの?」

「まぁ、付き合ってる」

「へぇー。どっちから告ったの?」

「一応、向こうから」

「..如月って実はモテる?」


 一体どこをどう見てそう思ったんだ。こんな地味面がモテる訳ないだろ。


「さ、さぁ?」

「羨ましいぜ。あんな可愛い子と付き合えるなんて。誰か紹介してくれよ賢人!」

「...祐の場合は普通にしてたら向こうから来るだろ。格好いいんだし」

「えっ!まじ!!」


 バチン!


「お世辞に決まってんでしょ。真に受けないの」

「いってぇな!いいだろ、真に受けたって」


 いや、お世辞ではないんだけどな..


 話をしていると時間が過ぎるのはあっという間で、いつの間にか京都に着いていた。


「それで祐。女子は誘えたのか?」

「ああ、勿論だ!おーい、こっちだ」


 こちらに来たのは先程バス内で話した川島。そして..


「えっと、宮野咲みやのさきです。よ、よろしくお願いします」


 宮野咲。長髪と眼鏡が特徴のザ『物静か』が似合う女子生徒だ。


「何緊張してんの、咲」

「き、緊張なんてしてないよ!」

「大丈夫だって。双葉はともかく、如月は優しいから」

「何で俺だけ!」


 空気が少し明るくなった。


 川島なりの緊張の解き方なのだろう。


「まぁ、いいや。それよりちゃっちゃと行こうぜ!時間も限られてるし」

「そうね。ほら行くわよ咲」


 さてと俺も少しはこのグループを楽しむとするか。


 ■■■

「清水寺到着!!」


 観光名所だけあってやはり人は多い。


 取り敢えず入館チケットを購入し中へ入った。


「おー歴史を感じるな」

「ふっ。絶対嘘でしょ」

「嘘じゃねーよ!この柱とか歴史感じるくね?」

「んー。確かに...」


 こいつら案外仲がいいのか?


「......」

「......」


 宮野さん気まずそうだな。話せばいいんだろうけど、俺が気を使って話し出す方がよっぽど気まずいんじゃ...


 そんな事を考えていると少しずつ人が多くなってきた。


 するとよそ見をしていた男性が宮野さんにぶつかってしまった。

 その反動で宮野さんの体勢が崩れ...


 パシッ。


「大丈夫?」


 気がつけば宮野さんの手をとっていた。


「は、はい。ありがとう、ございます」

「おーい、賢人。次行こうぜ」

「ああ。じゃあ行きましょうか」


 俺は宮野さんの手を持ったまま人混みの中を進んだ。


「おっ、いつの間に仲良くなったんだ?賢人」

「ん?どういう事だ?」

「咲も大胆ね。彼女持ちの如月に」


 それを聞いた宮野さんは焦って俺の手を離してしまった。


 顔を真っ赤にして目をそらしてしまった宮野さん。


「んじゃ、参拝の列に並ぼうぜ」


 俺たちは参拝の列へと並んだ。

 参拝か。あんまり来たことないけど、一体どういう事をするのが正解なんだ?


 そんな疑問が出てきたので俺は携帯で調べる事にした。


 参拝。願い事や幸せの祈願。日々の感謝を伝えると出てきた。


 ふむ。成る程。


 取り敢えず、健康第一でいいか。


 そうこうしている内に俺たちの準備が来た。


 一礼、賽銭、合掌。丁寧にも参拝方法が記されていた。


 それに従って一礼。財布から5円玉を取り出し賽銭。そして合掌。


(健康でいられますように)


 俺は早々と終わらせ、列を後にした。


 それから暫くして皆が戻ってきた。


「賢人、早すぎじゃね?」

「いやいや、祐たちが長過ぎるんだよ。どんだけ願ってんだよ」

「うーん。10個ぐらいかな」

「多すぎだろ」

「あんたは欲張り過ぎよ!」

「はぁ!じゃあ川島はいくつ願ったんだよ!」

「15個よ!」

「俺より多いじゃねーか!」


 こいつらやっぱ仲良いんだな。


「ここで騒いでたら邪魔になるぞ」

「それもそうだな。じゃあ下に行くか」


 俺たちは清水寺を出て下の店などが並ぶ通りへ来ていた。


「色んなもんが売ってるんだな~」

「まぁ、そういう場所だしな」


 それからちょっとした買い食いやお土産を買い一息ついていた。


 そう言えば彩ちゃんのお土産どうしよう。有名所で言えばあぶらとり紙か。でもそんなので喜ぶか?

 うーん。


「すまん。もう少しお土産見てきてもいいか?」

「おお、いいぜ~。俺たちはここで待ってるからよ」

「分かった。じゃあ行ってくる」


「後輩へのお土産だな」

「そうね」

「......」


 ■■■

 うーん。食べ物は味気ないよな。かと言って変な物は渡せないし....


 迷っているとある店が目に入った。


「かんざし、か」


 気がつけば俺は店へと足を運んでいた。

 中には沢山の種類のかんざしが置かれていた。


 一体どれがいいんだ..


 てかかんざしって普段から付けるものなのか?やっぱりお祭りとかの時に付けるよな。

 じゃあ多少目立つやつの方が....


「すみません。お祭りらしい感じのかんざしってありますか?」

「それでしたらこちらなんてどうですか?」


 渡されたのは水色の三日月とヨーヨーのアクセサリーが付いたかんざしだった。


「それ、買います!」


 ■■■

「すまん。待たせた」

「もういいのか?」

「ああ」

「そんじゃ、お楽しみのあれ行くか」

「あれ?」

「はー。本当そういうのにだけ熱心なんだから」

「いいだろ!それでは出発!」


 祐の案内によって連れてこられたのは清水寺のすぐ近くの地主神社じしゅじんじゃという所だ。


「でここは何の神社なんだ?」


 まぁ、何となく予想はつくが。


「ここはな縁結びの神社なんだ」

「どんだけ彼女欲しいのよ」

「いいだろ、別に。ほら行こうぜ」


 そこには2つの石があった。


「この片方の石からもう片方の石へ目をつぶってたどり着けば恋の願いが叶うらしい。だから俺は全力で挑戦する!!」


 そう言って祐は片方の石の前に立ち目をつぶる。

 そして前へと歩きだした。


「.......」

「.......」

「.......」

「ここだ!」


 目を開ける祐。


「えっ!」


 祐の立っている場所は石からとても離れた場所だった。


「まぁ、そんな事しなくても好きな人見つかるって」

「あははは。まじ笑い止まんないだけど~」

「美華ちゃん、笑いすぎだよ」

「くっそー」


 結局、集合時間が近づくまでやった祐だったが一度も成功する事はなかった。


「おい、そろそろ戻るぞ」

「わ、分かった」

「.......」

「2人は先行ってて。私たちはちょっと」

「分かった。行くぞ祐」

「あ、ああ」



「ほら、咲とやるんでしょ」

「で、でも...」

「やらないで後悔するよりやって後悔した方が絶対いいよ!」

「わ、分かったよ」


 目をつぶり歩きだす、咲。

 ゆっくり、ゆっくりともう片方の石へと向かっていく。

 そして...


「嘘....」


 咲はしっかりと石の目の前にたっていた。


「やったね!咲」

「う、うん!」


 これで私の願いが叶うといいな。


 ■■■

 気がつくとバスは学校の前に停まっていた。

 寝てたのか。


「おい、祐起きろ」

「...んあ。着いたのか?」

「ああ」

「こっから部活か。ダルい」

「それは知らん。それじゃあ俺は帰るぞ」


 俺は荷物を持ち、バスを出た。


 そこには彩の姿が。


「お帰りなさいです。先輩!」

「ただいま、彩ちゃん。はい、これお土産」


 俺は京都で買ったお土産を渡した。

 袋を開ける彩ちゃん。


「こ、これって....」

「かんざしだよ。祭りの時にでも使ってくれたら....ってどうしたの?」

「あ、あのまだこういうのは早いと思います!!」

「えっ?そう?似合うと思うけどな」

「そ、そうじゃないです。.....あの、今日は私帰ります!」


 そう言って彩ちゃんは駅の方へ走っていった。


 一体どうしたんだろう


 家に帰ってかんざしについて調べると昔男性から女性にかんざしを贈るというのはプロポーズという意味が込められていた。

 だからあんなに恥ずかしがってたのか。


 明日一応謝っておくか。てか何でそんな事知ってるの?


 こうして長い校外学習が終わった。






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