1P こんなイベント頼んでない!
ここ私立星影高校は高い進学率で有名な高校だ。
今日から新1年生が加わり、新学期が始まる。正直1年生に興味はない。学年を越えた関わりはよっぽどなイベント事や部活でない限り関わりはない。
そんな事よりもだ。
締め切りがヤバイ......
正直今日は学校を休んで、原稿を書きたかった。だが、出版すると同時に親との約束で学業を優先すると言う約束を結んでしまったのだ。
なので、多分締め切りを破る可能性が大だ。せめて学校で書ければ...
幸いと言えば今日は午前中で終わる事だな。
そんな事を思いながら、憂鬱な学校の時間を過ごしていた。
無事午前授業も終わり、外靴に履き替え校門に向かうと沢山の人だかりが出来ていた。
そこには一人の女子生徒が沢山の生徒に囲まれていた。
「何してんの?」
思わず声が出てしまった。
すると、近くの男子生徒が。
「あの1年生、誰かを待ってるらしんだ」
「へ、へぇ~」
「俺は
「あっ、え。
俺とは真逆の人間。つまり陽キャだ。こう誰ふり構わず話しかけてくる相手は嫌いだ。まぁ悪いやつではないだろうが、何と言うか。
自分に劣等感を感じるのかもしれない。こいつ見たいな人を見ると。
「それにしても、誰を探してるんだろうな」
「さあな。どうせイケメンでも探してるんだろ」
「あり得るな」
うーん。早く帰りたい。だが、この人だかりを越えないといけないなんて。
仕方ない。原稿を早く完成させる為に俺はここを通る。
決意をし、人だかりに歩いていくと。
「お、おい、賢人!」
いきなり名前呼びかよ。流石陽キャだな。
そんな呼び声を無視して俺は突き進んだ。
「あ、あの、如月先輩!」
人だかりを半分ぐらい越えた所で誰かに声をかけられた。
いや、さっき聞こえたのは幻聴または俺以外の如月だ。俺じゃない。
どうしてそう思うかと言うと。あれは中学2年の時。
ちょっとだけ仲の良かった女子がいた。帰り際、手を振っていたのでそれを返した所。
俺ではなく、後ろの女子生徒だった。その後その女子は俺に気付き、俺に向かって手を振ってくれた。
何と言うかその優しさが逆にキツかった。その事から呼ばれていても自分だと思わない事にした。
早く帰って原稿を。
「ま、待ってください!」
不意に後ろから右手を捕まれた。
振り返ると先程の人だかりの中心にいた女子生徒だった。
銀髪の長くサラサラした髪。透き通る様な青くビー玉の様な瞳。誰が見たって美少女だった。
そして人だかりはざわめき始めた。
そりゃそうだよな。ぱっと見イケメンでも何でもない俺を待ってたなんて。信じられるはずがない。いや、俺も信じられないだけど。
「無視とか酷くないですか?」
一体どうなってる?何で俺に。
「ずっと待ってたんですよ。さぁ行きましょ」
次は右手に抱きつき駅方面へと引っ張られだした。
徐々に解散する人々の中、俺は少し抵抗し。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「どうしたんですか?」
「いやいや、急になんなの君」
「自己紹介がまだでしたね。
「よ、よろしく。ってそうじゃなくて」
すると彼女がそっと俺の耳元に近づき、周りに聞こえない声で。
「大人しく付いてこないと、先輩の秘密。ばらしちゃいますよ」
「えっ?」
その言葉を聞いて俺は彼女から少し離れた。
「ふふっ」
何なんだ。この子。
「さぁ、行きましょ。....次は抵抗しないでくださいね」
俺は大人しく彼女を付いていく。もとい連れ去られていった。
■■■
駅近くのこじんまりとしたカフェ「ブルー」
コーヒーが美味しいで有名なカフェだ。
「それじゃあ座りましょうか、先輩」
「あ、ああ」
適当に空いている席に向かい合う様に座った。
「すいませーん」
「はーい」
「この、ケーキセットを1つお願いします。先輩は何にします?」
「....ホットコーヒーを」
「畏まりました」
注文を取り終わり、厨房へ向かう従業員の女性。
「もしかして先輩、緊張してます?」
「いや、...してない」
「そうですか。じゃあ私の美貌に見とれちゃいました?」
そう言われて彼女を見る。
綺麗に整った鼻や口。そして長く手入れされた髪。誰がどう見たって美少女だった。
「さぁ、どうだろう」
「素直じゃないですね~。先輩は」
そうこうしていると注文したものが運ばれてきた。
「それでは、ごゆっくり」
鼻腔をくすぐる上品なコーヒー豆の香り。やっぱりここのコーヒーは良い。
口に運び込み、一口。
「先輩、私の彼氏になってくれませんか?」
閑散とするカフェの中、彼女の言葉が店全体に聞こえわたった。
口に入れていたコーヒーを飲み込んだ。
「......えっ?」
彼女から真剣な眼差しがこちらに向けられる。
と、とにかく落ち着け。
コーヒーでも飲んで.....
こんな味だったけ?
ヤバイ、本当に頭が回らなくなってきた。
「ダメ、ですか?」
「あ。えっと。俺君の事全然知らないし、だから、そのごめん」
「...そうですか。ではその話とは別にお話があります」
「は、はい.....」
「先輩は『ぐらにゅーとう』先生ですよね?」
「ぐらにゅーとう先生?それは何の先生なの?」
何でこの子、俺がぐらにゅーとうって知ってるんだ。いや、まだバレた訳じゃない。
「へー。しらばっくれるんですか。じゃあこれ先輩ですよね?」
渡されたのは彼女のスマホだった。そしてその画面には...
「この授賞式の写真に写ってるの先輩ですよね?」
どうやら俺の静かな生活は終わるようだ。さよなら、俺の生活。
「そ、そうです。で、でも何で君がその写真を」
「お父さんが出版社に勤めてるので、写真撮ってきてもらったんです」
「そうなんだ....。それで君は目的なの?」
「私....ぐらにゅーとう先生の大ファンなんです!」
彼女の口から出た言葉に俺は驚きを隠せなかった。
「まじ?」
「まじですよ!だってあんな性癖丸出しの小説見たことありません」
ん?それって誉められてるの?
「それに丁寧な背景描写。感動しました!」
「あ、ありがとう」
なんて言うか本当にさっき子なのか?変わりすぎて別人に思えてきた。
「先生の作品、次で終わりなんですよね」
「そうなんだ。あんまり人気がなくてね」
「そこで提案なんですが、私の彼氏になりませんか?」
「えっ?なんでそうなるの!」
「先生はラブコメ書いた方が売れると思うんですよ」
何故、そんな話に!てか本当に彼氏になるって話から脱線しすぎでは?まぁ、でも。
「.....理由聞いてもいい?」
「先生の背景描写はとても分かりやすいです。でも心理描写はそこまで上手くありません。だからキャラに寄り添えないんです」
「確かに俺はキャラの心理描写は得意じゃない。でもそれならラブコメなんてより無理なんじゃ」
「その為の私です!」
「ん?」
ドユコト?
「もう、先輩は鈍感ですね~。私と付き合えばラブコメキャラの心理が分かるかもしれないじゃないですか!」
考える事。数十秒。
「成る程!」
「と言うことで私と付き合ってください!」
「うん。いいよ」
「えー?」
「よろしくね、彩ちゃん」
「ええーーー!!!」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
初めての方は初めまして。久しぶりの方ご無沙汰してます。穂志上ケイです。今回の話はそう、ラブコメです。ラブコメは正直言うとあまり書いた事がありません。ですが、楽しんでいただけると幸いです。
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