契約彼女とラノベ作家

穂志上ケイ

プロローグ

 閑散とするカフェの中、彼女はある言葉を口から出した。


「先輩、私の彼氏になってくれませんか?」


 口に含んでいたコーヒーを必死に飲み込み、彼女の顔を見た。


「......えっ?」


 ふざけている様子は一切なく、目から本気が伝わってくる。


 だが俺は人生初の告白に戸惑っていた。


 ■■■


 俺は小さい頃から本を読むのが好きだった。今でも好きで一ヶ月で20冊以上は読む。そしてある日俺は思った。


 自分で物語を書いてみたいと。

 とにかく書きまくった。分からない事があれば学校の先生に聞き、表現力を高めていった。

 それから書きまくった小説を誰かに見て貰いたいという承認要求が出始め。

 中学2年生の夏、小説サイトに投稿したのだ。


 勿論、そこから来る言葉は全て良い言葉だけではなかった。

 けれど俺はその言葉を参考に自分の弱点を一つずつ潰していった。

 何度か筆は止まったが、それでも俺は書き続け高校1年生の春、賞を受賞する事が出来た。


 受賞出来た事は勿論嬉しい。だが....


 受賞作「カジノにロリが居るはずない」

 作者:ぐらにゅーとう


 バリバリの性癖小説が受賞してしまったのである。

 嬉しいよ。嬉しいけどこれを学校とかで知られた日には...


「あいつ、ロリの小説書いてるらしいぜ」

「もしかしてロリコン?」

「オタクキモーい」


 止めよう。余計な想像をして勝手に思い込むのは悪い癖だ。

 自分の作品なんだから胸を張ってればいい。

 もしそんな事言われればかなりへこむけど。


 そして無事出版して貰う事が出来、現在高校2年生の春。小説は3巻まで発売する事が出来たのだった。


 だが、ここから俺の生活が変わろうとは夢にまでも思わなかった。



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