1-12 楽しい楽しい王女様解体ショー2

「や、やめなさい……わたくしの、か、顔は、顔だけはっ」

「大丈夫。怖い顔しなくていいですよ? すぐに、どんな顔していたか分からなくなりますから。まずはその生意気な鼻から、こそぎ落としましょうねー」


 ああ、震える王女の顔が楽しくてたまらない。

 私は愉悦にくつくつと笑いながら、前菜代わりに顔面を殴りつけた。


 殴った衝撃で鼻の骨がねじ曲がり、ぽたぽたと鼻血をこぼすその鼻先つまんでねじ上げる。

 ひぃひぃ鳴くその鼻をナイフでスライスすると、王女は絶叫をあげながら豚のような顔になってしまった。


「あら可愛い。心が醜いあなたには、そっちの方がお似合いですね!」

「そ、そん、なっ」

「せっかくですから、少し飾り付けてあげましょうか。こんなのは如何です?」


 穴が広がってしまった王女の鼻に、ごすっ、と鉄串を突きつける。

 そのまま鼻の奥まで捻り込んでぐりぐり押し込んでやると、王女は喉から絞り出すような泣き声をあげた。すでに嗚咽なのか悲鳴なのかも分からない。が、泣いて叫んで苦しんでいるのは分かるので大満足だ。


 ……ああ、楽しい。

 なんて楽しいのだろう。

 こんな喜びが世の中にあったとは、本当に驚きだ。


「では鼻の次は……ええ。そのエルフらしい可愛い耳をもぎ取って、人間とおそろいにしてしまいましょう!」

「な、っ」

「では引っこ抜きますよー」

「や、やべて! そ、それだけは! あ、あああっ!」


 王女が串刺しにされた身体をよじるが、私はもちろん逃がさない。

 特徴的な尖った耳は、人間と比べて掴みやすく心地良かった。

 前から思っていたけれど、誰かに引っこ抜いてもらうために誂えたような耳だと思う。


「はい、じゃああなたも汚らわしい人間になりましょう! せーの!」

「ひぎぁぁぁぁっ!」


 何度目になるか分からない絶叫とともに、王女の耳がぶちりと割けた。

 だらだらと付け根から血を流したそこは、耳の穴を覗いてねじ切られた皮膚の後しか残らない。あらまあ。


「はい、これで人間とおそろい……と思ったら耳全部なくなったので人間以下ですね!」

「あが……っ、か、返し……」

「んー?」

「わたくしの耳を、返し、て……」


 それだけは譲れない。

 エルフの誇りにかけて、と彼女が息も絶え絶えに訴えてくる。

 ふふっ。

 拷問に悲鳴をあげさせるのも心地良いけれど、こうして懇願されるのも大変に楽しい。


 ーーその顔を、もっと絶望に染めるのは素敵なことに違いない。


「まあ、エルフ種にとって耳は大切なものですからね。……分かりました。私は優しいですから、耳だけは返してあげましょう」

「っ、ほ、本当に……」

「ええ。約束を破ることは大嫌いなので」


 という訳で、私は捻り取った王女の両耳をつまみ上げて。

 王女の顎を無理やり開き、その中に千切れた耳を突っ込んであげた。


「はいどうぞ、お返しします!」

「も、もがああああっ!」

「ちゃんと口に戻してあげますから、美味しく頂いて下さいね?」


 おご、おごぉっ! と悶えて嗚咽する口を無理やりふさぎ、頭と顎を掴んで咀嚼させる。

 ごりごりと耳の軟骨が砕ける音が響き、前歯の隙間からでろんとはみ出した白い耳がぐちゃぐちゃに潰されていく。


「よく噛んでくださいね? ご自分の耳なんですから、お残しはいけませんよー?」

「っぐぅ、ふぅぅぅぅっ!」

「……あら、あくまで飲み込まない、と? 偏食はいけませんね、まったく……悪いのはこの口ですか? そういえばあなた、事ある毎に私への悪口を並べてましたね。エルフの諸悪の根源はこの口かもしれません」


 悪い子だと思った私は一旦口を開かせ、食べかけの耳を吐き出させた後、その上唇をぐいと掴む。

 引っ張られてぐにょんと伸びた、ぷっくりとした上唇を……


 ハサミで、じょきん!


「こんな悪いものは切り取っちゃいましょうねー」

「ひぎああああっ!」

「私は優しい聖女なので、下唇もセットで切り落としてあげます。よいしょ、と」


 そうして上下の唇をはぎ取ると、王女はむき出しの歯をガタガタ震わせながら子ウサギのように震えていた。

 精神はもはや正常ではないらしく、目をぐるぐる回し、息も絶え絶えといった様子だ。


 うん、まだ死んでない。

 生きてるなら大丈夫!

 いけるいける、と思った私はその手を伸ばし、彼女ご自慢の黄金色の髪へと手を伸ばす。


「あとは眉を削いで、髪をぜんぶはぎ取れば、あなたの顔も性格も少しは丸くなりますかね?」

「あ、あっ……」


 鼻に鉄串を突き刺された王女は、ろくに鼻をすすることも出来ないのだろう。それでもひくひくと呼吸を行い、やめてくれと訴える瞳を見れば、言いたいことはよく分かる。

 なのでご要望通りハサミを手に取り、彼女の命とも言える黄金の髪へと手を伸ばす。


「あ、あああああっ! や、やめっ」

「一本残らず落としますから、安心して下さい!」


 そうして私は畑を耕すように、彼女の頭を丸くしていった。

 途中で頭部をざくっと切ってしまったが誤差の範囲だろう。薄くなった頭部のままだと寂しいので、多少の血で彩られてる方が王女好みの美しさになるはずだ。

 ふんふーん♪ と頭を丸刈りにし、あえて王女の前に切り落とした黄金の髪を束ねてみせつける。


 紐でまとめた稲のような姿となった黄金の髪に、王女はただただ顔を蒼白にしたまま固まっていた。

 鼻には棒が突っ込まれ、その口はむき出しの怪物のよう。

 ふふ、と私は思わず笑いながら。


「さ、ご自分の姿を見てみましょう! 鏡も用意致しましたからね?」

「……やめ、て」

「遠慮しないで下さい、ほら!」


 アイテム袋から鏡を取り出し、王女に見せてあげる。

 美しさこそを尊ぶ王女にとって、その顔は精神を瓦解させるに相応しかったのだろう。彼女は発狂したように狂い、現実を否定するように首を振って嘆いていた。


 そうーーそれこそ、私が求めたものだ。


「いい嘆きです、アンメルシア! 私はいま本当に、楽しくてたまりません!」

「聖女、あ、あなた、あなただけは、本当に、こ、殺っ……」

「あら、まだまだ元気ですね、アンメルシア。やっぱりあなたの口はとても悪い子のようです。……そして、現実を見ようとしない、その瞳にも問題がありそうですね?」


 もっと悲鳴を。

 もっと絶望を聞かせろ、アンメルシア。

 私は自らの心の声に従い、すらりと針を取り出して、王女の顔へと近づける。


「では最後に、あなたの汚いものを見つめる瞳と、その悪意を放つ口を仕留めて一段落と致しましょう」

「……!」

「あ、こら、目を閉じてはいけませんよ。しっかり見てください? あなたの瑞々しい瞳に、針がぶすりと差し込んで、ぐちゅっと瞳が潰れる姿。自分のことから目を逸らしてはいけませんよ?」


 言いながら王女の瞼を強引に固定し、綺麗な瞳孔に向けてゆっくりと針先を下ろしていく。


 王女の目には、迫る刃のきらめく先端がよく見えることだろう。

 恐怖の時刻を、私はあえてゆっくり引き延ばす。

 じりじりと時間をかけて。

 王女に見えるように。

 自分の顔が失われる瞬間が、明確に分かるように、ゆっくり押し込んでーー


「ーーーーー!」


 ぷつり、という小さな音とともに、彼女の視界を貫き消失させた。

 何度目かわからない悲鳴を聞きながら、私はさらに瞼をこじ開け、針の刺さった瞳に右手を突っ込んでえぐり取る。

 眼球は本来、視神経等で身体と繋がっているので、針を通した程度で抜けたりはしない。

 その瞳を無理やり眼窩から引きずり出し、彼女に見えるようつまんでみせる。


「ほーら、あなたの目玉が綺麗に取れましたよ。どうですか? 残った左目でしっかり見てあげてください」

「う、ううっ……!」

「その左目も見えなくなる前に、ね」


 右目の欠けた彼女をあざ笑いながら、彼女の左目もくりぬいてさし上げた。


 王女はついに顔のほぼ全てのパーツを失い、ぽっかりと二つ穴の空いた呪い人形のような顔になる。

 既に目は見えず、鼻は鉄串を刺されてひゅーひゅーと風音を鳴らし、耳はただ丸めた穴だけが開いていた。


 満足しながら、私は王女処刑の総仕上げに取りかかる。


「王女アンメルシア。これであなたは目も見えず鼻も使えず、耳もろくに聞こえないことでしょう。腕も身体も動かないから、触覚もろくにないかもしれませんね? ええ、私も同じ目に遭わされたので、辛さはよく理解しています」

「あ……が……」

「でも安心してください。あなたにはまだ、私への悪意をしっかり放てる悪い口が残っています。その悪いお口を最後にきちんと教育しましょう。悪いものを全部、その口に収めてしまいなさい?」


 そして私は先程くりぬいた目玉二つを串に通し、団子にして王女の口へねじ込んだ。


 先程と同じく下あごを掴んで無理やり砕かせると、鉄串が舌につき刺さったらしく口内が血塗れになっていく。丁度よい血の味付けになっただろうと思いながら、奥歯でぶちぶちと自分の目玉を噛ませ、千切れた舌ごそ咀嚼させる。


「ほら、これがあなたの悪い悪い目玉の味です。口のなかで、ぷちぷち、ぶちゅって潰れる独特の感触があるでしょう? 鉄串も一緒につけましたから、しっかり味わって下さい」

「あ、が、げふっ……」

「お代わりですか? 性格と同じで傲慢で食いしん坊なんですからっ。……はい、じゃあ次。そぎ落とした鼻に、余った上唇と下唇で挟んだ顔面サンドイッチです」


 誰もが羨む、聖女お手製サンドイッチだ。きっと喜んで貰えるだろう。

 まだ足りない王女の口に、ぐいぐいと上唇とねじ曲がった鼻を押し込んでいく。すると何度も餌付いて吐き出しそうなったので、バトルメイスの先端を口に押し込み蓋をしてやることにした。


 やがて、おごおごと悶えながら王女はその全てを飲み込んだので、私は残りを用意する。


「まだまだありますからね? はい、あなたの髪をたっぷり血と体液で染めたスープサラダ。さっき吐いた吐瀉物混じりの耳も乗せておきました。王女の顔面定食、しっかり全部味わってください」


 明らかに分量の多い黄金の髪束を、王女の口腔にねじ込んでいく。

 窒息寸前で暴れるのも構わず、飲み込めない分は、どすっ、と膝蹴りして押し込みながら。


「……! ……!」


 王女は顔を上げて何かを訴えるが、目玉がないのでよく分からない。でも苦しみ悶えていることは理解出来るので大満足だった。

 そして王女はようやく全てを飲み込み、意識を失う。

 もちろん私はすぐ回復させる。

 気絶しての逃げなんて甘えは、絶対に許さないのだから。




 そうして一時間ほど楽しむと、王女は見るも無惨な美しい姿になっていた。


 これだけやれば、百年積み上げた積年の恨みも三十秒くらいは満足する。

 それに式典中ずっと王女を刻んでしまうと、それだけで五十年は過ぎそうだ。


「ふふ。綺麗になりましたよ、アンメルシア。では、まだまだ物足りませんが、この辺で一旦終わりにしましょう」

「ひぐっ……お、げぼっ……お、終わ、り……?」

「ええ。次で最後です」


 優しく頷いてあげると、王女は顔を涙で腫らしながらも、わずかに安堵の色を浮かべて息をつく。

 苦しみから逃れられることに、期待を抱いたのだろう。


 その目の前で。

 私は巨大ノコギリを肩に乗せ、にっこり、最高の笑みを浮かべてみせた。


「では最後。首、やっちゃいましょうか」と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る