第33話 復讐4
その瞬間、樹くんは柵を蹴って歩道橋から飛んだ。ただ小道を走るために自転車を蹴るように、躊躇なく。
空中で、私を抱きしめる。
あっという間に、樹くんの体が地面に叩きつけられた。一瞬、私を縛る腕の力が緩む。けれど、すぐにまた力を込められたから私の体は樹くんの腕から飛び出すことなく守られた。
恐る恐る、体を起こす。恐る恐る、樹くんを見る……。
頭から血が流れて来ている。
樹くんは、ピクリとも動かない。
……そうだ……私は、樹くんに復讐するべく、この人生が始まったんだった。
何度も樹くんの命を狙い、でも念願が叶うことはなかった。
なんだ、こんな簡単なことだったんだ。
樹くんに何かする必要なんて、なかったんだ。
私が、この身を投げれば、命を放れば、樹くんは―――
「……樹くん……」
みるみる周りが騒がしくなる。でも私は、樹くんのそばから離れられなかった。
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