　翌日は休日だ。朝寝坊してリビングに入ると、パパとママ、そして樹くんがいた。

「どうして勝手に断ったりしたの！いいお話じゃないの」

「どうしたの？ママ」

「樹にお見合いの話が来たのよ。樹の勤め先の社長の娘さんが樹を見かけて興味を持たれたんですって！」

「お見合い？！結婚するの？！」

「断ったらしいのよー樹ったら。全部知った上でなおぜひってお話なのに……うちにまで、一度会うだけでもって電話がかかってきたの」

「俺は結婚なんてする気ない。まどかさんに申し訳ない」

「樹くん、まだ25歳だろう？まどかさんに操を立てて一生独身を貫くつもりかい？」

「そうだよ」

　樹くんに迷いは感じられない。当然のことのように答えている。

　樹くんは毎日仏間に行く。樹くんはいまだにまどかさんとあいりちゃんを愛している。

　自分が殺したふたりを。

　12年経った。

　樹くんはいまだに苦しんでいる。

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