第28話 あいまい6

「見違えたのー。すっかり大きくなってー」


 前髪の生え際V字が激しいじじいが現れた。


「あ、神!」


「神じゃよー」


「ねえ、神! 樹くん帰って来る?!」


「お前、はんなとして生きる時間が長くなるにつれ前世の記憶が薄くなり、彼への憎しみもあいまいになっとるんじゃろ」


 ……ふっ……ハゲてても神は神……髪は薄くとも神は神……全てお見通しか。


「お前今何考えた」


「やっぱり神って素晴らしいなって」


「嘘つけ。復讐なんてやめていいんじゃよ。お前の中の前世の記憶をスッキリ消し去ってやろうか。はんなとして彼と関わった事実だけが残る。その方がお前のためじゃろ」


「……まだ……まだ、忘れ去りたいとまでは思えない。復讐したい気持ちも、まだある」


「そうか……実は、私は神の職を解かれる。違法にお前を特別扱いしたのがばれてしまってなあ……もう、お前に会うこともないだろうが、私はずっとお前の幸せを願っておるよ」


「えっ……私のせいで?!」


「過去のお前に縛られることなく、今のお前の思うように生きなさい」


「ちょっと待って神! 神!! 神―――」

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