第7話 樹くん3

「樹くんは、出てこないの?」


 4歳のある日、私は疑問を持った。


 みんな、仕事に行くのに樹くんは部屋から出ない。


「樹くんは、部屋でお勉強してるのよ」


 お勉強は、子供がするんじゃないの?


 樹くんは、子供なの?


 小さな私には、樹くんは大きく見えた。


 時々、樹くんが保育園のお迎えに来る。


 樹くんをお父さんだと間違えるお友達も多かった。


「はんなのパパはハゲてるよ!」


 と、ちゃんと訂正した。


 樹くんは、フサフサだ。


 手を繋いでおうちに帰る。樹くんは何もしゃべらない。


 いつも樹くんは、私を可愛がらない。


 樹くんは、自分の世界を狭めている。

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