第8話 樹くん4

家に帰ると、樹くんはすぐ2階に上がって行く。


またお勉強するのかな? 樹くんは何をしているんだろう?


土曜日、保育園はお休みだ。


樹くんを観察してみよう。


朝起きてきたらまず、トイレに行く。そして、リビングの隣の小さな部屋に入って行く。部屋のドアは閉められている。


ドアに耳を付けてみる。何も聞こえなーい。


ドアが開いた。


「あ! 樹くん、おはよう!」


「はんな……おはよう」


樹くんはいつも同じ顔をしている。笑わないし怒らない。


樹くんがリビングに入り、パパとママとあいさつをする。


キッチンに入って、コップを手に取り、牛乳を入れて飲む。


「……はんなも飲みたいの?」


樹くんがしゃべった!!


「うん! 飲むー!」


私のコップに牛乳を入れて手渡してくれる。


「ありがとう!」


と笑うと、樹くんもちょっと笑う。あ! 笑うとかわいい! やっぱり樹くんは子供なんだ。だから、毎日勉強してるんだ!


「はんな、えらい樹くんに懐いたなあ」


パパが笑っている。


「はんなのお兄ちゃんだもん」


「あはは、お兄ちゃんじゃないよ。ママの弟だよ」


「はんなのお兄ちゃんじゃないの?」


樹くんを見上げる。


「……違うよ」


樹くんが私の頭をなでるように手を下ろした。その手が目をふさいで樹くんの顔は見えない。

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