第79話 出会い
「こんにちはお嬢さん」
久しぶり、こんにちは
「大変な目にあいましたね」
よくわからないけど、大変だったと思う
「えぇ、よく頑張っています」
褒められた。でも体がだるい
「大丈夫、貴女は疲れているだけです」
そう? お腹空いた
「えぇ、少しお待ちなさい。もう少しで体が出来上がります」
からだ?
「無茶な力ですからね、彼女を倒すのには耐えられなかったのです。なに、問題ありません。死神は与えもするのですよ」
……なにを?
「オムライスです。どうぞ」
「あり、がとう」
「うまくいきましたね。大丈夫、目を覚ませばあの子が待っています。」
「あのこ?」
「ええ、あの子です。頼りになるでしょう? あ、そうそう。頭は良いのに不器用な彼女のお願い、聞いてあげてください」
「……はい」
「さぁ、食べ終わったら後片付けです。今度会う時はお話を沢山しましょう。それでは、また会う日まで」
「ごちそう、さま」
ゆっくり、時間をかけて来て下さいね
お土産話を楽しみにしていますよ
「……テル!」
「…ステル!!」
「ねてないです」
「エステル!!」
痛い。たつな痛い。顔近い、緊張する。あぁ、たつな温かい。体を起こす。手がズタズタだが裂けた皮膚の下から皮膚が見える。気持ち悪い。でもそれ以外はほぼかすり傷。去石、致命傷になる様な攻撃はしていなかったのか。
「えすてる!エステル!!」
「たつな、いたい。こえ、ひっくりかえってる」
「だって!だって!!」
あ、そうだ。妹。しえら?
「いもうと、さがす」
「へ?」
「さるいしと、やくそく」
「去石の……?」
「あれ、ふたりは?」
みちるとりんの姿が無い。少し遠くで派手な音がしている。
「近くに幽鬼がたくさん出て、そっちに向かってるの」
「うん、わかった」
二人とも仕事中。ふらつく足で去石の体へ向かって歩く。お腹だ。お腹って言ってた覚えがある。胸から上が無くなった体に手をかける。そうしてちょっと吐きそうなくらいえぐいお腹をあさる。
「エステル!なに、を……!」
「いもうと。いた」
白いすべすべもちもちの肌に銀色の髪、背中に羽は無い。白い血液まみれの赤ん坊、と言うにはちょっと育ってる?その子をとりあげる。するといまいち座り切らない首でこっちを向いて目を開けた。赤い瞳はまるでルビーのように輝き美しい。
「しえら」
「はい」
「!」
返事した。
「あねが、ごめいわくをおかけしました」
流暢!
「あの、さすがに、はずかしいのですが……」
これは、不可抗力。
「すみま、せん!」
慌てふためきながらシュラフを回収して滑り込ませる。温かさは体感済み。これならきっと赤ん坊?でも大丈夫。きっと。
「エス、テル……?」
置いてけぼりのたつながやっと口を開いた。
「じじょうが、ある」
「と、とにかくここは二人に任せて事務所に戻ろっか?」
「え、あ、はい」
たつな肝が据わってる。こっちはいきなり喋り出したシエラにちょっと膝が笑ってるのに。
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