第65話 お勉強会
「みちる先生の歴史の授業、はっじまっるよー!!」
「…おー……」
調子が振りきっているみちるを前にリンと二人で気の無い返事をする。
どうしてこうなったかというと、実体の無い月へ向かい、帰ってこなかった人数がわかったらしいからだ。
「せんせー、完結にお願いするっす」
「リンちゃんノリが悪い、減点!10ポイント減点でおやつ抜きです」
「なんで!?」
資料に目を通す。資料といってもゴシップ紙に当時の新聞、それから本当かどうかわからない記者の手記の写真だ。政府情報では20人が未帰還ということなのだが、どうにも資料に目を通す限りでは二機の宇宙船に20人づつ搭乗していたらしい。
月に向かったのは三機。その内一機は帰って来たヴァージニア・オルドリンが搭乗していたもの。ヴァージニアの宇宙船に搭乗していたのは25人。既に政府発表とは内容が異なる。もっともこの話はヴァージニア・オルドリンの死亡後に発売された雑誌によるものだから嘘の可能性もある。
改竄した理由はわからないが、この情報が正しければ少なくとも40人が帰ってきていない。
「たつなの牛乳寒天美味しいのに残念!」
「だめっす!」
当初は人材の派遣はしていないと主張していた政府だったが、行方不明者の遺族の発言を出版社が騒ぎ立てて問題が表面化。6人が派遣されていたことが白日の下に晒された。
という事は読みが正しければ少なくともあと三人は人型が襲撃してくる。考えすぎであってほしいが、来ると思っておいた方がいい。
「冗談冗談! でも減点が一定に達したのでしばらくは、フヘヘ! 着せ替えさせてもらいます」
「ひっ!お、犯されるっす!エステル助けてっす!!」
だが、三体全てが岩手に出現したのがもっとも理解できない点だ。搭乗者名簿に姉妹は二人しかおらず、出身地は茨城県だったらしい。彼女らが目的地を決められるならあっちに行くだろう。出身地での縛りが無い場合考えたくはないが出現するのは6人だけではないのかもしれない。消えた二機の宇宙船にオルドリンの機と同じ25人が乗っていたとして、最悪50体が人型として出現する?
うんざり。
あぁ、でもアメリカにも出現はしていたらしいからやはり出るのは日本人だけであってほしい。MAX6人。
「「エステル!」」
びっくり。
「どう、したの?」
「どうしたのじゃないっす!」
「おやつにしよう?」
ずいぶん考え込んでしまっていたらしい。ちょっと涙目のリンがなんとかロリータみたいな服に変わっている。みちるの趣味だ。
「それじゃ、午後はエステルもひんむいてお着替えっす!」
「! なんで!?」
「あたしを見捨てた罰っす!」
ボンネットと言っただろうか? 派手な帽子が乗った頭をブンブン振りながらツインテールを揺らす。
「私賛成!!」
「!」
「二対一でお着換え決定っすね!」
この後、二人掛りでひん剥かれた。買い物から帰って来たたつなが爆笑したのは言うまでもないだろう。解せん。
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