第66話 通常任務

「りん!」

「まっかせるっす!」

 本日の出張先は高松の池。盛岡市の自然公園で白鳥飛来地でもある。以前はカップルなんかも訪れるスポットだったらしいが縁がないので知らん。

 今いるのはガルダタイプ。こいつは鳥っぽい見た目の幽鬼だ。羽は燃え盛る炎の様に揺らめき目は三つ。嘴の癖に牙まで生えているよくわからないやつ。神の乗り物としてのガルダなら飛ぶのだろうが、こいつは飛べない。鉤爪のついた足で動き難そうにわちゃわちゃ走ってくる。完全に設計ミスだ。

 厄介なのはその翼。見た目通り触れたものに火が付く。近寄れないので殴ることもできない。ちょっとだけ重さがグレードアップしたリンの鉄球でボコボコにしてもらっている。

「ふはははは!あたしの鉄球の前にひれ伏すのだーーー!」

 色々溜まってたみたいでリンがおかしくなってる。執拗なみちるの着せ替え攻撃で今もゴテゴテのロリータ服を着せられている。道連れができて私は気が楽だ。なんたって魔法を使うと無条件でフリフリになるから。

 ホテルの一件以来亡霊は現れない。薄らぼんやり夢に出たような気はするんだが内容は思い出せない。あの悪霊がたくさんいたような気はするんだがはたしてどうだったか……

「エステルそっち!」

 走り寄ってくるオアンネスタイプいわゆる半魚人の群れに突っ込む。すごくぬめっとする。じゃぶじゃぶ水から上がってくるので総数がわからない。水がはねるから出来るだけ投石で仕留めたいが、数が多いのでそういう訳にもいかない。

 本当はいつ来るかわからない人型を警戒したいところだが、通常の出撃任務が無くなる訳ではないから気が気じゃなくてもやるしかない。

「にしても幽鬼増えたっすね」

 打ちもらした幽鬼を片付けながらリンが言う。以前の出撃であれば10~15倒せば打ち止めということが多かったのだが、最近はまとまった数が複数の場所で出るようになった。先日の四十四田ダムが最たる例だ。結局数え切れなかったが三桁は確実にいっていた。ほぼたつなとみちるが片付けたのであれだが。

「いやなかんじ。やすみが、ない」

 リンは通院のため数日休めたが、みちるもたつなも休みが無い。もちろん私も。

「そろそろ温泉とかみんなで行きたいっすねー」

 賛成しかねる。どたらかというとしっかり寝たい。昼夜問わず呼び出されるため眠りが浅くて休んだ気がしないのだ。泣ける。

「いどう、つぎ」

「はいはい、了解っす」

 討伐ポイントで交換した高い寝袋に潜り込む。考えに考えた末、移動はこれに入っていればそこまで寒くないと結論づけた。やはり高いだけある。戦闘に直接降下できない弱点はあるが、移動で死にかけるよりましだ。

「じゃ、いくっすよー」

「おー」

 ……いまさらなんだが、巣に運ばれる芋虫みたいだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る