第47話 お見舞
「あー、ひさしぶりだな」
病室に見舞いに来た吾味。目のクマが凄まじいがひさしぶり。元気そうとはとても言えない。なんかちょっとしぼんだようにすら見える。大丈夫か?
お土産のお菓子を受け取りみんなで広げる。大豆クッキー、ちょっとポソッとするけど意外と美味い。
「ちょっとだいちゃんかなりやつれてる… ちゃんと休んでるの?」
たまらずたつながツッコミを入れる。セリフが紛うこと無きオカンだ。とりあえず吾味には追加でイモも食べて貰おう。売店で買ったなんちゃってお茶もある。
「あぁ、すまんな柿屋敷君 けが人にこんなことさせて」
どっちかというと吾味の方が入院した方が良い気がする。過労で死なないだろうか。
「だい、じょうぶ」
灰色のペットボトルを手渡すと吾味は笑って見せた。
「ありがとう、とにかく無事でよかった 立て続けに襲撃されたなんて聞いた事が無かったからな、お偉いさん方には報告してきた」
「それで・・・なんて言っていたんだい?」
また口調が安定していないみちるが聞く。吾味の表情が曇る。
「最低でも二人一組で行動するように、だとさ」
現状維持。前回の件があるからみんなで移動はできないし、人数も四人しかいないからそれしか方法は無い。
というか今一人で出歩いているリンは大丈夫なのだろうか?
「りん、は?」
「一盃森と一緒に居る、さすがに単独行動はやめさせた あと一人サポートをつけてるから大丈夫だろう」
そういや他の部隊には前の吾味と同じ立ち位置のサポートがついていたらしい。俺達にはつかないのかと考えていたら凄まじい殺気を感じて全員がドアを見た。吾味以外。
「・・・吾味さん」
怨念めいた声と共にドアがゆっくりと少し開いて女の顔が半分のぞく。般若のような表情に全員が目をそらして固まる。吾味以外。
「・・・迎えが来たか、すまんな みんなあまり無茶はしないように」
そう言い残すとフラッと立ち上がり吾味は入口へ歩いて行く。
「が、がんば、って」
それしか言えなかった。なんだか死地に向かう人を送り出すような悲しい気持ちだ。入り口の女と目が合う。こわー。
と思ったら力なく笑った。この人も頬がこけてクマがすごい。二人とも休んでいないんだな。手を振ると小さく振り返してくれた。良い人なのかもしれない。なんで入ってこなかったのかはわからないが人材不足が深刻なのだろう。ぴしゃりとドアが閉まると小言が聞こえてくる。
「一人でどうしろって言うんですか!あの人の暴走止めれるのあなただけなんですよ!?」
「わかったわかった、すぐに戻る」
小さくなっていく声。南無。
「なんか、すごい人だね」
「怖そう」
「て、ふって、くれた」
「そうなの?」
「悪い人じゃないのかもね」
「つかれ、てる、みたい」
「すごい顔だったから目をそらしちゃった」
「一瞬幽鬼かと思ったよ」
お菓子を食べながらああでもないこうでもないと話しているとあっという間に日が暮れた。
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