第46話 寒さの原因

ここは病院の屋上、エアコンの室外機や給水塔が置かれている場所だ。不本意ながらなんでこんな寒いところにいるかというと、いつも通りの幽鬼だ。

普段使われない五階に入院している俺たちが階下を見下ろしたとき、残念ながら発見してしまったのだ。

ただ一点、様子がおかしいのは普段なら一目散に人間を襲いだす幽鬼がただ屋上で室外機の上に座っていたこと。原因はわからないが慌ててメンテナンスの為にやってきた作業員を呼び止めて代わりに俺がやってきた次第だ。

控えめに言って寒い。

偵察に来たつもりがあっさり発見されて引くに引けない状況に陥ってしまった。なんてったってドアが氷漬け。

うん、浅慮だったかもしれない。

まぁ、見つかってしまったものはしょうがない。薄い氷を纏った老婆のような幽鬼に雪女と勝手に名付けることにする。

少なく見積もっても氷を出す能力があると見た。というか実際出している。ああいうのが魔法だと思うんだがどうして俺は?

まぁ、言ってもしかたない。氷漬けにされる前に何とかしなければならない。

ちなみに二人は避難誘導を行ってから合流する手筈になっている。子供の見た目の俺が避難誘導しても誰もいう事を聞かないからだ。もっとも看護師たちに状況を報告して病院側にやってもらうだけだからすぐに駆け付けてくれるだろう。いや、来てくれないと困る。

さっきからツララがバンバン飛んできてかなり辛い。

それにしてもここ数件明らかに俺たちが狙われている気がする。気のせいだと思いたいが、走っている車を偶然狙う幽鬼や入院先の病院に潜伏する幽鬼がいるだろうか?

まぁ、狙われている事が事実だとしてもやることは変わらない。

見敵必殺サーチ・アンド・デストロイ見敵必殺サーチ・アンド・デストロイだ!

恰好つけてみたが、対策なんぞ何人かで行動するほかない。どこからくるかわからない敵に対処なぞできない。

あーもう、さっさと二人の援護が欲しい。

さっきから接近しては逃げられを繰り返している。反復運動みたいで体は温まってきたが、痛みはそれに伴って増してくる。相手の飛び道具が厄介で近づきにくい。ツララが直線的な動きなのはいいんだが、数が多い上にわき腹の痛みで頭がぼんやりしてくる。

というか今更だがこのツララ、リズムに合わせて飛んできている気がする。三連続の後に一拍おいて再び飛んでくる。

三回目のツララまで避けつつ接近して最後に一気に距離を詰めてみよう。

3

2

1

あぶ

あぶねぇ!!

鎌、鎌危ない。接近するとでかい氷の鎌が!

いや、あれ、こわー。

完全に誘われてた。知恵が回る幽鬼とか初めて見た。フリフリを切り裂いてお腹にうっすら血がにじむ。

「お待たせ!」

みちる到着。無線on!

「ちえ、まわる、ゆだん、だめ」

何と言っていいか分からないがとりあえず注意喚起する。みちるは遠近両用だから敵と同じレンジでの戦いになる。なんだか眼鏡みたいな説明になってしまったがこれ以上言いようがない。

さっそくみちるはホーリーブレイドで敵を攻撃する。しかし、ツララがわずかに光の剣の軌道を逸らして雪女に当たらない。

あいつ強くないか?

接近すると鎌での薙ぎ払い、遠くにいるとツララで面攻撃。俺は雪女の正面という立ち位置で容易には近寄れない。盾でもあればじりじり距離を詰めることが出来るんだが…

「スターライト☆ナックル」

たつなさん!

背後から現れたたつなに反応できず雪女が宙を舞う。

「トゥインクル☆スターライト」

おう、ぐろてすく。

今までの鬱憤を晴らすかのような大爆発にみちると俺は固る。

「おつ、かれ」

俺の言葉にたつなは満面の笑みで答えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る