第22話 休日の終わり
サリヌは風呂から出た後、一人になりたかったようで、イネスが屋敷の部屋を貸してあげていた。
身体を動かして風呂も入り落ち着いたところで、やはり思うところがあったようだ。
気を休ませるために、一人の時間も大切だろう。
その後、俺とイネスは予定通り、一緒にお茶会をして楽しんだ。
イネスはいろんなお茶などを用意してくれていて、お菓子とかもいろいろあった。
俺が来ることをとても楽しみにしてくれていたようで、本当に嬉しく思う。
二人でいろんな会話をして……気づいたらもう、俺は帰る時間となっていた。
さすがに泊まりは無理なので、日が沈む頃に帰ることに。
「まだまだ話したかったです」
「俺もだ。また今度一緒に遊ぼうな」
「はい! もちろんです!」
そして俺は帰ろうと……したのだが。
「あれ、どこに行くの?」
ちょうど俺が帰ろうとした時に、サリヌが部屋から出てきた。
「サリヌ、俺はそろそろ帰るよ」
「えっ、どこに?」
「自分の家、かな」
「一緒に住んでるんじゃないの?」
どうやらサリヌは、俺とイネスが一緒に住んでいると思っていたようだ。
「いや、違うぞ。昔はそうだったが、今は別々だな」
「……別れて、別居したの?」
「まず俺とイネスは結婚とかしてないからな? 普通に今は別の家に住んでいるだけだ」
「……すぐ近くなの?」
「いや、ちょっと遠いな」
まず領地が違うから、とても気軽に行き来出来るような近さではない。
「っ、やだ、帰らないで」
「えっ?」
「一緒に住みたい」
サリヌがそう言って、俺の腰辺りに抱きついて止めにきた。
くっ、可愛い……昔のイネスを思い出すほどの可愛さだ。
容姿も金髪で少し似てるし、二人とも男だし。
サリヌの頭を撫でながら困ってイネスの方を見ると……なんかキラキラした目でこちらを見ていた。
「ボ、ボクもシモンさんと一緒に住みたいです……!」
「イネス、お前もか」
まさかイネスもサリヌと同じように言うとは……。
いや、イネスが俺とまた一緒に住みたいというのは前から聞いていたが、今それを言うんじゃないだろ。
「サリヌ、ごめんな。俺も仕事があるから」
「……じゃあ、シモンについていく」
「えっ?」
「イネスの家じゃなくて、シモンの家に行きたい」
「お、おー、マジか」
まさかイネスの屋敷に住むと思いきや、俺の家をご所望か。
イネスがサリヌの世話をしたいと言っていたから、出来ればイネスの屋敷にこのまま住んで欲しいのだが。
「俺の家はイネスのこんな大きな屋敷よりも小さいぞ」
まあ、普通の家よりはだいぶ大きいが。
「別にいい、シモンと住めるなら」
「な、なんでイネスよりも俺がいいんだ?」
「……イネス、怖いし」
「あー、そういえばそうだったな」
確か準勇者を倒すところを見ていて、サリヌは怖がっていたんだ。
どうしようか、と思いながらイネスの方を向く。
「ダ、ダメです! ボクだってシモンさんと一緒に住むのを我慢しているんですから!」
「いや、そういう理由なのか?」
もうちょっと違う理由があるだろ。
その後、話し合った結果、サリヌはやはりイネスの屋敷に住むことになった。
イネス的にはやはり自分の領地で起こったことで、俺に迷惑をかけられないとのことだ。
別にそのくらい俺はいいと思ったが、イネスが四天王として責務を果たそうとしているので、それは邪魔したくない。
サリヌも渋々ながら納得してもらえた。
「また遊びに来るからな、サリヌ」
「いつ?」
「うーん……近いうちに?」
「曖昧すぎ」
しょうがないだろ、四天王の仕事はとても忙しいんだ。
今回だってイネスの領地に来たのは半年ぶりほど。
確実に来れるのは、おそらくまた半年後の義手のチェックの日になるだろう。
「イネスも、また近いうちに来る」
「はい、いつでも遊びにきてください!」
「ああ、ありがとな」
こうしてこれで本当に、俺は自分の領地に帰ることになった。
今日はちょっと非常事態はあったが、とても楽しい休日だったな。
明日からまた仕事か……はぁ、憂鬱だ。
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