第6話 面倒なダンジョン?
ということで、俺達はダンジョンの奥へと進んでいく。
奥に着くまでにまたワイバーンが何体も出てきたが、全部アダリナが倒していく。
アダリナの魔法一つで、全て消し飛んでいく。
俺も一応手伝いとして、何体か倒そうとしたが、アダリナが楽しそうにしているので、手を出さなかった。。
四天王最弱といっても、ワイバーン如きに遅れは取らないからな。
本当だぞ? 倒せないから任せてるわけじゃないからな。
「しかしやっぱり、アダリナは強いな」
「そう? シモンちゃんでもワイバーンくらいなら一発でしょ?」
「まあそうだが、アダリナみたいに一発で消し飛ばすのは無理だな」
「そのくらいの強さがあれば、四天王としては十分じゃない?」
「……まあ否定はしないが、それでも俺よりも強い奴が、魔王軍の中にいるかもしれないだろ」
「うーん、いるのかなぁ?」
若手も育ってきているから、俺もそろそろ引退したいのだが。
アダリナやイネスが子供の頃から、俺は四天王をやっているからな。
……そのくらい若いアダリナに、なんで俺はちゃん付けをされているのかよくわからないが。
「お前の領地内にいないか? 四天王になりたがってる奴」
「あはは、いるかもしれないけど、四天王になれるくらい強い奴はいないと思うよ」
「そうか……まあそう簡単に四天王になれるくらい強い奴なんて、見つからねえよな」
そんなことを話していたら、俺達はダンジョンの奥の部屋へと着いた。
ほぼ一本道、分かれ道などはなかった。
普通のダンジョンは、一番奥の部屋にダンジョンマスターがいる。
道中に出てくる魔物よりもだいぶ強く、とても厄介なのがダンジョンマスターだ。
だがここには俺も入れて四天王が二人いる。
ドラゴン系のダンジョンといっても、余程の化け物、竜王レベルの奴がいない限り、簡単に倒せるだろう。
しかし……。
「あれ? ダンジョンマスター、みたいな奴いないよ?」
アダリナが言った通り……一番奥の部屋に辿りついたのに、ダンジョンマスターの姿はなかった。
しかし完全に行き止まりなので、奥の部屋であることは間違いない。
「はぁ、マジか……最悪だ」
俺は思わずため息を零してしまう。
このダンジョンはドラゴン系だから、絶対にダンジョンマスターが強くてめんどくさいと思っていた。
しかし……まさか、違う方でめんどくさいものだったとは。
「すまん、アダリナ。俺のミスだ、ここのダンジョンは……迷宮だった」
「迷宮?」
「ああ、そうだ。百聞は一見にしかずというからな、とりあえず今来た道を戻ってみるか」
アダリナや他の部下達は不思議に思いながらも、俺の言う通りに来た道を戻り始める。
だが、すぐに異変に気付く。
「あれ? さっき、こんな道通ったっけ?」
「なっ!? 先程は一本道だったのに……三つの分かれ道が、あります」
「嘘!?」
アダリナや他の部下達が驚きの声を上げる。
「これがこのダンジョンの一番のめんどくさいところ……探索者を惑わせる、迷宮だ」
「えっ、もしかして……迷子になっちゃったの?」
「そうだな」
「ええぇぇ!?」
今日一番の驚きの声を上げるアダリナ。
ダンジョンの中には、こうしてダンジョン自体が動くものが存在する。
それはまるでダンジョンが悪意を持っているかのように、探索しに来た者を閉じ込めようとしてくるのだ。
「ど、どうするの? 食料も水も何もないよ?」
「そうだな、普通だったらこのまま迷い続けて、餓死するだろうな」
「う、嘘でしょ? あっ、だけどワイバーンは食べられるよね!」
「そうかもしれんが……」
「あっ、ちょうどいいところに!」
三本に分かれた道の一つから、ワイバーンが一体こちらに向かってくる。
すぐさまアダリナが魔法を放った。
今度は消滅させないように、かなり手加減をして。
「こ、これで食料の問題は大丈夫だね。マズそうだけど……えっ?」
アダリナが手加減をして殺したワイバーンが……ボンっといって黒い靄となって消えた。
「ええっ!? う、嘘!? 消えたよ!?」
「やっぱりか……こういう迷宮のダンジョンは、食料や水を与えないように、魔物が死体として残らないんだ」
「そうなの!?」
「アダリナが全部消滅させるくらいの攻撃をしてたから、気づかなかったな」
死体が残らないダンジョンは、迷宮のダンジョンの可能性が高い。
一匹でも俺が倒しておけば、その死体が消えることに気づいたのだが……。
「ま、まあ、最悪、ダンジョンの壁を破壊して、出れば……」
「ああ、言ってなかったな。ダンジョンの壁はなぜかめちゃくちゃ硬い。それこそ、魔王のリディですら壊せない」
「う、嘘でしょ……?」
前に魔王城の近くにダンジョンが出来たので、リディと一緒に入ったことがある。
その時にリディが壁を破壊しようと結構本気で魔法や剣などで破壊しようとしたが、ビクともしていなかった。
つまり、四天王のアダリナや俺でも、絶対に破壊は出来ないのだ。
「お、奥に来るまで、一時間くらいかかったよね? まっすぐ一本道なのに……それで分かれ道とかきたら、結構やばくない?」
「まあ、対策していなかったら本当に迷い続けて死ぬと思うぞ」
俺の一言に、アダリナや部下達がゴクリと唾を飲み込んだ。
「そ、外に連絡は、取れないのでしょうか?」
「誰かそんな魔道具を持ってるか? 持ってても、ダンジョン内から外に連絡は取るのは難しいが」
それに連絡を取る魔道具は、誰も持ってないようだ。
「えっと……これ、もしかして、本当にヤバい?」
アダリナが冷や汗を流し苦笑いをしながら、そう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます