小柄少女が裸足でおうちデートする話1

絵の中で遊んだ昨日、帰ってから蒼とのメッセージが盛り上がりました。きょうはお互いに部活のない日でちょうどよかったので、放課後、蒼の家に遊びに行く約束をしました。


昨日の感覚がまだ両足にまとわりついていて、へんな感じ。


いまは放課後の放送が流れています。

小学校からのクラスメイト、宮前遥(みやまえはるか)と階段を降ります。

遥は159cmと私(と蒼)よりも高くて、肩にかかるぐらいの黒髪をした、吹奏楽部ではB管とEs管クラリネットを吹いている、おしとやかな人です。


「真菜、いつも以上にぽやんとしてない?」


「ほぇ? 遥、わかる?」


「わかるよ。もしかして男の子を好きになったのかな?」


図星を突かれて、一瞬時が止まる。


「.....好き、違うクラスの人だけど」


「おおっ! お互いがんばろうね」


「お互いって..遥も好きな人いるの?」


「いるよ。後輩なんだけど大人で優しいんだっ」


「1年生の人かぁ」


「そうそう。また今度話そ〜」


「うんっ」


部活に行く遥と別れた私は、昇降口にてローファーに履き替えます。


家に着いたらまず自分の部屋に入って、紺のソックスを脱ぎます。

きょうは朝から紺のソックスを履きっぱなしだったので、とてつもない開放感。

これから裸足で蒼の家に上がるので、蒸れた足では失礼だから、手と両足をごしごし洗いました。


制服から白いシンプルなワンピースに着替えました。図書館などに行くときのいつもの恰好です。

膝が完全に見えて、ノースリーブなのですが、蒼の好みどおりだったら嬉しいな。


薄いピンク色のビーチサンダルを履いて、しゅっぱーつ。

お父さんもお母さんも共働きで誰も居ないけど、ただいまといってきますは欠かさずに。


のんびり歩いて8分ぐらいかな、蒼が住んでいるマンションが見えてきました。で、でかい。

インターホンで蒼にオートロックを解除してもらい、中に入ってみると、おぉぉ、ホテルのフロントみたいに広いです。

エレベーターで25階まで昇り、「本条」の札があるドアを、コンコンコンとノックしました。どきどき。がちゃり。


「ようこそ真菜。入って」


「お、お邪魔します」


玄関でビーチサンダルを揃えて脱ぎ、初めて男の子の家に上がります。


「わわ、大理石気持ちいい」


「ひんやりしてるよね。僕も大好き」


「冬は寒くないの?」


「床暖房があるから冬も裸足で平気だよ」


「えー! いいなぁ。この扉が蒼の部屋?」


「あたり。入ってみて」


扉を開けると、輝くような部屋にクラクラしました。

白い天井と壁に、一面に敷かれたオレンジ色のラグがあって、ラグの上には巨大な人をダメにするクッションが置いてあって、部屋の左奥にはベッドと机イス、部屋の右奥にはクローゼットと本棚があり、真ん中の奥にはどどーんと広い窓があります。角部屋の魅力です。


「す、すごすぎ・・・わ、足とられる!」


部屋に入った途端、私の無防備な左足がラグに沈みました。


「低反発ラグなんだ。厚さ35mmもあるからもっちもちでしょ」


「もちもちに溺れちゃいそう」


私はラグの感触を長く味わいたくて、ラグの表面を滑らせるように足を移動させていました。


「最初から気に入ってくれてありがとう。座るときは、そこのクッションにどうぞ」


蒼のお言葉に甘えて、気になっていたクッションにゆっくり腰かける。ずぶぶ。


「うわ、わ、背中から呑み込まれる!?」


「人をダメにするクッションだからね。魔力に気をつけて」


「う、うん」


そのまま身体を委ねてお昼寝したら気持ちよさそうです。


「真菜、白ワンピに裸足で来てくれてありがとう」


「こちらこそ昨日の今日でありがとう、蒼。私の恰好、好みに合ってる?」


「めちゃくちゃど真ん中。」


まっすぐな視線で真剣に言われて、嬉し恥ずかしで、溶けてしまいました。

思わず足の裏から足首までをクッションにうずめて、蒼の視線から足だけでも逃がそうとしたのですが…


「ぅきゃぅ」


バランスを崩した私は、自分でもよくわからない悲鳴を上げて、前のめりに膝から胸にかけてラグの上にダイブしてしまいました。


「だ、だいじょうぶ?」


「もうお嫁に行けない..」


正面のガラスに気づかずビタァンと激突してしまったような、シュールな姿。

あまりの羞恥心に、天井を向いていた両足が重力方向にぽふっと落ちて、しばらくうつぶせのまま放心状態でいると。


「よいしょっと」


「まって、蒼!? 脇腹つかんじゃだめだよ・・ぅわあっ」


くるりん。

両脇腹をつかまれて、まんまと体をうつぶせから仰向けに回転させられた私。

目の前では、蒼が私の目をじいっと見つめてくる。


「・・・・・・」


「どうしたの?」


「・・・・真菜の目は、足、声と同じぐらい透き通っていて綺麗だな」


「・・・」


「・・・」


「・・な、な、な、なに言ってんですかぁぁぁ!!」


うわぁぁん、褒めてくれてるのにヘンタイすぎるよ。

蒼がいじわるモードに入ると、やっぱりおかしな気持ちになってしまいます。




2に続く

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小柄少女が裸足でメルヘン体験する話 ライラック @789Lilac

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