第17話 期末テストが始まる

 あの後母さんが帰ってきて夕食を一緒に食べた。京香ちゃんが今までにないくらい最後の追い込みでやる気を出したおかげで、勉強をやめたときはもう深夜に差し掛かりそうになっていた。そのため今日も泊まり明日直接学校に行くことになった。

 そして今その朝を迎えている。

「京香ちゃん起きろって」

「ふにゃー。もう少し」

「遅刻するって!!」

 朝俺たちは母さんに起こされ起きることができた。そして京香ちゃんが着替えるためリビングに行っていた。そして、時間がたってもなかなか帰ってこない。様子を見に行くとまた寝ていたのだ。

「ほんとマジでやばいから」

「もう少しくらい大丈夫ですよ」

 最終手段をとるしかないか。

「じゃ、俺先に行くから」

「待ってください!!今急いでしたくします」

 なんで置ていくとなるとすぐに目覚めるのかわからないが、京香ちゃんを起こすのに最適だ。


「行きましょ!!」

 さっきまで寝ていた人とは思えないほどの元気だな。こりゃテストの時に寝るかもしれないという心配はなさそうだ。

「今日のテストは?」

 うちの学校はどの学年も5教科だけテストがある。ほかの技能強化などは授業中に確認テストをやる程度でそれが0点だからといって、他の課題をやっていれば、赤点はつかない。そして5教科だから1日目と2日目は2時間。最終日は1時間だけでテストが終わってしまう。

「えーと国語と社会です」 

「それならいけるな」

 国語なら理解してから伸びが一番が屋かったし、社会はチート行為をしているから今日の教科に対しては大丈夫そうだな。

「放課後はどうする?」

「先輩も自分の勉強にはげんでください。私、今日は1人でやってみます」

 1人でやるといわれただけで、少し心配なんだよな。

「ちなみに明日の教科は?」

 俺が知ってるのは英語が最終日であることだけ。ほかの教科に関しては、全く聞いていない。

「数学と理科です」

「よし図書館行こう」

  数学と聞いただけで今日は一緒にやらないといけないのがわかる。数学と英語。この2つは京香ちゃんが極端に苦手な教科であるため、完璧になっていても点数をおとす可能性が見えるし。

「わかりました」

「そうだ先輩これ」

 京香ちゃんが日記を渡してきた。

「終わったらだろ」

「いつでもいいので見ておいてください。今私の口から話せないこともまとめてあります」

「わかった」 

 話せないのに知ってもらいたい理由とかも気になっているが、多分それに答えはない。ただ知ってほしい。その程度だろう。

「先輩。私、その」

「それは終わってからだろ。今はテストに集中しようぜ」

「…はい」

 今答えを聞いてしまったら2分の1の確率で俺もテストに集中できなくなる。そして多分その答えが今の京香ちゃんの答えだ。だからこそまだ、希望を残したい。


「じゃ、頑張れよ」

「先輩こそへましないでくださいよ」

「京香ちゃんには言われたくないな」

 ただ俺に自然な笑顔を見せて教室に入っていった。


「りょうちんおっはー」

「櫂テストは大丈夫か?」

「いつも通り」

 つまりぎりぎりだからもしかしたらってことがあるってやつか。

「りょうちんは?」

「いつもよりは悪いと思うが、何とかなるだろ」

「さすが」


 1時間目のテストは理科。しかも化学分野。つまり京香ちゃんに教えていたことの少し発展した問題。だからこのテストに関してはそこまで問題ない。

 テストが始まった。問題を見る限り、ひにくれた問題もなくすごく解きやすい。そして、京香ちゃんに教えていた基礎の部分も何問かあるしこれは順調に行けそうだ。


 1時間目のテストが終わった。1時間目のテストは70点くらいはとれそうだ。

「先輩」

 2年の教室に涙目の京香ちゃんが来た。

「どした?」

「国語が」

 涙目ってことは、ダメだったか。

「多分赤点回避です」

「その涙は?」

「あ、すいません。初めて全部埋めることができたのでうれしくて」

 そうだったな。京香ちゃん記号は埋めるけど、他は白紙って言ってたな。初めてテストらしいことができたのか。

「よかったじゃん」

「次は社会頑張ってきます」

「がんばって」

 これ、毎回毎回報告しに来るのかこの子は。別にいいけど。帰り迎えに行かなくて済むし。


 2時間目は英語か。


 英語の先生は基本ワークとプリントから問題を出してくる。そのためあまり理解していない状態でも問題は解ける。そこまで勉強のしていない俺ですらいい点とれるくらい簡単になっている。

 そのため英語も順調に解くことができた。


 そして無事テストが終わった。

「先輩。完璧でした」

「よしこれから昼食べて図書館行こうか」

「私教室にいるので準備できたら来てください。では」

 京香ちゃんはいなくなった。背中にはリュックを背負っていない。つまり、ただ報告してきただけだ。結局教室にはいかないといけないのか。

「りょうちん。彼女に好かれてるんだな」

「まーな」

「うらやましいぜ」

 っま、妹だから完璧な彼女とも言えないんだけど。

「お前も早く作ることだな。じゃ。俺は今から京香ちゃんの飯だから」

 京香ちゃんの強調して櫂をあおった。櫂はスポーツができるし、もてないわけではないのだが、女選びが下手なのか付き合う人がだいたい性格が悪くてすぐにわかれている。そのせいで、ここ最近は告白されてもすべて断っているらしい。


「京香ちゃん」

 京香ちゃんの教室をのぞくと誰かと話していた。

「お前、調子乗んなよ」

「なにが?」

 止めに入るべきだろうか。完全に絡まれてるよな。

「いつも赤点のおまえが、そんなすぐいい点とれるわけねーだろって話。なんだよこれ。いつもなら問題きれいなのにメモなんかとって」

 見た感じ4対1男もまざってるし。問題起こる前に。

「あ、先輩。帰りましょ」

 完全に無視してるな。

「まだ話終わってないんだけど」

「すいません触らないでもらえます?先輩が待ってるので」

 なるほど。いじめを受けて病院送り案外間違ってなさそうだな。間に合ってよかった。今は俺が見てるから耐えてるようだが、相当きれてるぜ。

「帰ろーぜ」

「あ、ちょ」

「先輩すいません」

 あの女が突っかかってるだけで男たちはまんざらでもなさそうだな。

「すいません先輩」

「あれは?」

「よくいうヤンキー的ポジションですよ。男たちは自分の縄張りに入らなきゃいいってやつらなんでこっちから何もしてこなければ特に何もしてきません。ですが、あの女は気に食わないやつに突っかかってるんです」

 悪にはかわりないが、男3人には脳があるってことか。

「テストの話してたけど」

「あーあれは、前回ワースト2位で私と似てたんですよ。だけど今回私真面目に解いてたので」

「つまり下に見ていたお前が、勉強してきたから焦ってるってわけか」

「そんな感じです。学校では普段通りだったので油断してたんでしょうね」

「それで、手を出そうとした理由は?」

「あの程度に出すわけないですよ。そもそも手を出すようなことはしませんよ」

 遠くからでも感じる圧力と左手で強く抑えていた右腕をみて、やったことないとはいえんだろ。

「明日からも絡んでくるぞ」

「その時はその時です」

  俺も明日は急いで準備して迎えに行くとするか。


 昼食を済ませ、いつも通り図書館にむかった。

「とりあえず今日の問題のおさらいしようか。答案メモしてるよね?」

「もちろん先輩に言われた通りやりましたよ」

 京香ちゃんを少しでも安心させるために、答案のめもをとってもらってる。赤点だったら落ち込むだろうけどない前提だから。

「これあってる!!これも、それにこれも。でもこれは違う」

「でも正答率ですれば感じは60くらいといっていいな。それで書きミスと含めて5割正解と考えておこう」

「はい。次は文章問題」

 文章問題は結構バツが多かった。

「3.8割ってところか。きびしいかもな」

 それに加え点数が高いであろうところが伸ばせていない。

「じゃー」

「あくまで俺採点だし。部分点とか入れたら心配してなくていいと思う。とりあえず、国語は回避の可能性大ってことで。次社会みようか」

「社会は完璧でした。蓮先輩すごすぎますよこれ」

 京香ちゃんが二宮の作った問題と今日やった問題を見せてきた。

「まじか」

 確かに問題として書いているものは違った。しかし、見る限り9割は位置も含めて答えが全く同じ。問題数は全て同じ。記号は答えのだけは全く同じになっている。天才すぎるだろ。

「これは確認する必要ないね」

「そうですね」

 さすがに完璧なものを確認する必要性は全くないからな。

「それじゃ数学やるか」

「そうですね。因数分解と二次関数」

 この2つを合わせてくるとはうちの学校の先生は点数取らせる気ないだろ。数学一年生の前半の難関だぞ。

「とりあえずわかるとこまでやってみて間違ってるところがあったら止めるから」

「わかりました」

 まずはもくもくとワークをやらせた。大体のことはもう出来てるから残すは細かいところだけ。

「これで合ってます?」

「あってる」

 因数分解は値を上げるほどやっているからもうミスることはなさそうだな。

「それじゃ二次関数やろか」

「え、えーとこれは」

 グラフから解く問題をやっている。

「これだ!!」

「おしい。それだと傾きが少し違うよ」

「あ、そうかこれがこうだから」

「そうそうあってるよ」

 なんやかんや俺がいなくても点数とれそうだったな。このままいても意味なさそうだし、京香ちゃんを明日に備えて休ませるのもありだな。化学も得意といっていいくらいおぼえたことだし。

「よし。復習も終えたことだし今日は家に帰って休もうか。連戦となると多分普通に寝てるだけでも疲れが取れないと思うから」

「だったら家きますか?」

「いや今日は家に送ったら帰るわ」

 1人で帰らせてもいいがさっきの連中が絡んできてもおかしくないし。

「そうですよね。先輩もゆっくり休まないとですもんね」


「先輩ってすごいですよね」

 帰りの途中に奇妙なことを言ってきた。

「どうした?急に」

「いえ、私、ほら掛け算すら分からなかったのに。先輩は必要な知識だけ覚えさせて今では、因数分解も二次関数もできるようになりましたし」

 いわれてみればそうだよな。普通に考えたら覚えるわけない。

「どちらかというと覚えるのが早い京香ちゃんがすごいんだよ」

「そうですかね。そう言ってもらえると嬉しいです」

 京香ちゃんほんとかわいいな。

「家着いたな」

「先輩やっぱり今夜も一緒に」

「ごめん。今日は1人でゆっくりさせてくれ」

「私、先輩がいないと、なんでもないです」

 俺がいなければ何があるんだろう。怖い夢をみるのだろうか。それとも普通に寝れないのだろうか。

「っま。不安とかあったら電話かけてくれればいいから」

「先輩。さよなら」

「あー。また明日」

 

 一日目のテストは普通に乗り切れた。国語が少し心配なのだが、希望はぜんぜんあるし。明日の教科も心配なさそうだな。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る