第16話 期末テスト前夜
風呂に入りたかった。なぜ願望なのかというと昨日の夜、京香ちゃんの手を握って寝かせた。そして、出ようと思ったが、その手が離れなかった。なぜか吸盤のようにくっついていた。だから抜けだせなかった大変だった。母さんも全く帰ってこないから助けも呼べず手をつないだまま寝てしまっていた。
朝起きると座って寝ていたはずが、あおむけになっていた。それに何か重みも感じる。目を開けても真っ暗ここまどこだ。背中が痛いから床なのはわかる。そして互いに風呂に入ってないからなのか変なにおいがするだが、それ以外なんもわからない。
「せんぱい暖かい」
なんか寝言が聞こえてきた。しかもゼロ距離で。手はまだ握られているようだ。つまり、
「京香ちゃん朝だよ」
「しぇんぱい。にゅへへへ」
まだ夢の中なのか。それにしても夢の中の俺は大変そうだな。まだどの位置になにがあるか把握できないし。また触ってしまうと常習犯だし。
「京香ちゃん起きてくれ」
「先輩の息あったかい」
今思ったが夏だよな、むしろ熱いだろ。しょうがないな。これは当分起きれなそうだし。
「せーの」
京香ちゃんをおさえながら立ち上がった。
「うっわ。先輩なんですか?」
これ腕じゃなて腰。まっくら。そして変なにおい。って
「何で俺の頭に尻おいてるんだよ!!」
つまり今京香ちゃんは逆さ状態だ。
「知らないですよ。というか何で私たち私服のまま名ですか?」
「京香ちゃんが体調崩したんだろ」
とりあえず降ろさないと。
「先輩、頭が!!」
状況説明したはずなのに完全にむしられた。
さすがに頭から落とすようなへまはしないから。置き方としてはもう一度寝るのが一番いいだろう。ってか今考えればあの持ち方だと腰が曲がってすごく痛いはずなのに、京香ちゃんは何ともなさそうだな。
「先輩、手を放してていいですよ」
京香ちゃんは直立の体制になった。
「放していいの?」
「大丈夫ですよ」
いわれた通り手を放した。すると逆立ちをくずし前転するように倒れた。倒立前転ってやつの似ている。
「私。体柔らかいからこれくらいならできるんですよね。ほら」
表現することできないけど普通の人間は絶対できないようなことをしているのはたしかだ。確実に俺はできないやつ。
「すごいね」
「ありがとうございます。迷惑かけてしまったので、先にお風呂どうぞ」
「京香ちゃん先でいいよ」
激辛ラーメンも焼きそばもまだ片付いてないし。
「じゃーお言葉に甘えようかな」
京香ちゃんは風呂に行った。俺はリビングにもどり散らかっているのを片付ける作業を始めた。
それにしても昨日夜は大変だったな。まさかあの状態になると兄と認識されるのはあせるはまじで。でも、あれが本来の俺。こっちの偽りの状態の俺とは違うしある意味京香ちゃんはそれを見抜いているのかもしれないな。テスト前日か。京香ちゃんの頑張りを見れる日だ。頑張るか。
「それであってるよ」
「えーとこれは」
「そうそうそれでいい」
午後からは3人で勉強会。京香ちゃんのことはとりあえず二宮にまかせて今日は俺も少しだが、自分の勉強にとりかかっている。今回は赤点はないにせよ点数が落ちるのは確実だし。せめて少しは上げておかないと。
「いと、おおくす、いけ、らいん。だかららいんは雨だから。雨に似ている?」
「間違ってはないけど。雨になるときに似ていると考えてみて」
二宮はここ2日で日本語英語の翻訳をマスターしてしまった。俺なんて2週間くらい教科書なしだと全く分からなかったんに。
「なりそうってことですか?」
「そうそう!!」
これも中学レベルなのだが、「長文で見たら高校生レベルだけど単語でみたら中学のだけでもいい点がとれる」と二宮が言っているため高校の問題でなく1つ1つをこなすことにした。
「い、はべ、べえん、と、東京。つまり、東京に行ったことがある」
を模範解答通りに答え方だ。
「あってるよ」
「先輩!!」
うわ!!なぜに教えていた二宮に出なく、俺に飛び込んでくるんだ。
「私英語、マスターしました」
「これなら点数取れそうだね」
読み方や、まだレベルが低いとか言いたいことはあるが、テスト前だし、今は調子を上げさせるためにもほめてあげねば。
「ほーらまだまだあるからやるよ」
「先輩、蓮先輩。ありがとう」
急に頭下げてどうしたんだ。
「ほとんど良太がやったのよ。私にはもったいないわ」
「自分でもここまでできるようになると思ってなかったです。たしかに先輩のおかげで、やる気も出ましたし、ほとんど先輩のおかげです。でも、蓮先輩がいなかったら、間に合ってなかった。私理解してても生かせないこと多くて、だから先輩が教えてくれたこと頭の中に入ってても少し文が違うだけで全く分からなくなってたんです。ですが、蓮先輩のおかげで、その悩みが解消できて、まったくわからなかった英語ができるようになりました」
「お前何したんだ」
この短時間でこんな大掛かりなことをしたのなら詳しく知りたい。
「考えないで最初に思ったこと言えといっただけ」
「それだけか?」
「良太が教えたことうろ覚えでもあのこは記憶してる。だから問題見て最初に思ったこと言わせたら8割正解していただから生かしただけ」
たったそれだけのことで、京香ちゃんの点数を上げたのかよ。さすがな。
「今回のテスト絶対奇跡を起こします」
「奇跡?京香ちゃんバカだろ」
奇跡を起こすと聞いて、少し笑ってしまった。京香ちゃんは気づいてない。
「ここでバカって先輩ひどいです」
でもこれが京香ちゃんの今の答え。だから教えてやらないと。
「奇跡なんて信じる必要ないくらい努力しただろ。だから、奇跡なんて頼るなよ。今の京香ちゃんは奇跡でなく実力で点数がとれると俺は信じてるぜ」
「ほんと最初話聞いたときはどんな子なのかと思ったけど、実際会ってみたら努力ができるちゃんとした人だと思った。だから私も教えようと思ったし、2日だけだけど楽しかった」
「蓮先輩。先輩。私」
「何もなく必要ねーだろ」
「だって」
認められたことがない。だから、初めて褒められて、初めて奇跡でなく実力で挑める。それが何よりうれしいのだと思う。それに初めてダメな自分を笑わず認め、助けてくれて、そして信じてくれた。だからいま涙がでてきた。自分のやったことがいい方向に行ってほっとしてもいるだろう。
「明日、頑張ろうぜ」
「はい」
「ってことで続きやろうか」
「え?」
その笑顔で言われるとすごい怖いんだけど。
「この流れでまだ続きやるんですか?」
俺も完全にこれで終わった明日に備えますかとかいうのかと思った。
「何言ってるの。英語から逃がすわけないでしょ。良太だけならよかったのにね」
確かに俺だけだったら終わってただろうな。だが、二宮にはまったく効果がなかった。むしろやる気にしてしまったようだな。
「も、もういいでしょ。私、頑張りましたよ」
「ほらほらやるよ」
どんどん怖い笑顔の怒りのほうが強くなってきてる。もうこれ顔が笑ってるだけでただ怖い人だよ。
「先輩助けて」
「俺も勉強しよ」
「先輩!!」
京香ちゃんすまない。俺でもあの姿の二宮に立ち向かえるメンタルも言い負かせる実力もない。だから頑張ってくれ。
「良太には助けてもらえないんだし頑張らないとね」
「あ、あのー」
「やるわよ」
「はい。頑張ります」
折れてしまった。勉強から逃げれていた京香ちゃんも二宮の前では逃げることができなかったか。
「これはこうで」
「なるほど」
あんな言い合いしたはずなのにすぐに勉強に戻っている。案外2人で相性いいわまじで。二宮呼んだことは正解だったな。
「えーとじゃこの問題これですか?」
「そうそう。わかってるじゃん」
あうことのないはずの妹と、もう会えないと思っていた幼馴染。今こうして会えているのは奇跡といっていいくらいすごいことだ。運命の神様のおかげかもな。
そろそろ3時か。
「休憩にしようぜ」
「やっと終わったー」
「これから1時間の休憩なだけな」
「先輩も蓮先輩に感化されました?」
ただ予定通り進めてるだけなんだけどな。
「はー」
二宮があくびをした。
「二宮。そこにベットあるぜ」
「大丈夫よ」
「どうせこいつのために自分の勉強は徹夜でやったんだろ。それで、ほとんど寝てない」
二宮は京香ちゃんの家にいる間まったく自分の勉強はしていないし、もしかしてとは思ったがまさか徹夜までしてるとは。
「蓮先輩。無理させてすいません」
「いいのよ。私が決めてことだし」
「少しくらい寝てくださいよ」
「わかったわよ。隠しとおせなかったことだし。心配されて勉強に集中できなかったら悪い。お言葉に甘えるわ」
二宮はベットに入り、目をつぶった。するとすぐに睡眠についた。
「帰る時間まで寝させておきましょ」
「やさしいじゃん」
「英語やらないためにも…」
あ、なるほど寝かせておけばたしかに苦手な教科をやらずに…って俺なら英語を強要しないと思われてるのか?たしかにしないけど。
「なんか寝ている人見てるとみるとこっちも」
あ、落ちたな京香ちゃんもこりゃ休憩明けに勉強は無理だな。結局2日とも予定通りはできないわけか。2人とも相当頑張ったしな。俺も少しねむくなってきたな。っまいいか。壁に横たわり目をつぶった。
目を開けると辺りが真っ暗で何もない空間にいた。そして奥のほうにかすかに灰色くらいの影が見える。この状況でなら光というべきだろうか。
「京香の未来を変えれるのはお前だけだ」
その光が俺にそう言ってきた。京香ちゃんの未来をかえる?
「なんのだ」
「タイムリミットは1年」
!!まさか京香ちゃんの日記に書いてあった時計のやつ。作ったのがこいつってことか。
「何をすればいい」
「まだ間に合う。このままでは最悪な未来が待っている」
「誰なんだ貴様!!」
これが夢の中であれば京香ちゃんの夢とリンクしたか、もしくは俺の妄想。どっちなんだ。
「俺は、未来への導き人。最悪な未来を変えることができる鍵。それがお前だ」
「だーかーら。何をすればいいんだって聞いてるんだ」
「それはお間がよく知っているはずだ。時間で起きろ」
灰色だった人は大きな光になりあたりを光らせた。そのまぶしさに目をつぶった。そして感覚的に光がなくなったのを感じたから目を開けた。するとまだ2人が寝ている元の部屋に戻っていた。時間はちょうど5時。あいつは神なのか。未来に導くといっていた。あいつが正しいのなら最悪な未来とタイムリミット。この2点からして彼女の命だろう。夢ってこんなに鮮明に覚えているんだろうか。わからないが、俺が彼女を救う鍵。これは違いない気がする。日記からしてもタイムリミットまでの日が短くなったのも俺と泊まる日の前日の夜。俺と何関係があるのだとしたら、逆に俺がその時間を止めることもできることになるだろう。まずはその条件を考えるのが最適か。
「ほら2人とも5時だよ」
時間だし2人を起こした。
「やばいがっつり寝てたわ」
「ほら京香ちゃんも」
「うーん」
全く起きねーな。
「っまいいんじゃない。そのまま寝かせてても私は帰るわ。ごめん。予定通りいかなくて」
「予定通りさ。思ったより短い時間でこいつを覚醒できたし。ありがとうな」
「いい点とれるといいね」
「そうだな」
京香ちゃんは起きないまま二宮は帰っていった。多分これから自分の勉強だろうけど。
京香ちゃんはほんとぐっすりだ。
「誰?」
これは寝言なのか?
「!!」
がん!!
京香ちゃんは起きた。俺が顔を見ようと近づけたときに。がんって音は2人の頭がぶつかった音だ。
「いったー。あれ先輩?」
「おはよ」
まだ寝起きで頭が回ってないのか夢の中で俺以外の人と話していたのだろうか。
「お、おはようございます」
「時間になって二宮は帰ったよ」
「そうですか」
「どうする穴埋めでもする?」
「夜やります。寝起きだと頭回らないので」
「そっか」
明日からの期末テスト。これで、2人の今後が決まるのか。
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