第15話 夕食は二人っきり

「だからこれは」

「えーとこれですか」

「さっきいっただろこうだって!」

 あの後二宮が帰ってきて2人で京香ちゃんをしごいた。それはもう涙目になるくらい。

「こうですか?」

「そうそう。OK」

 でも、正解した時の笑顔はいつもより輝いて見えている。

「英語もいい感じに様になってきたじゃん」

「写真消してくれますか?」

 なぜか英語で二宮が認めるラインまで到達したら写真を消すことになった。

「次はこっち」

「えーまだなんですか」

 京香ちゃんが理解してないから面白くて見てやってんだが、立ち悪いよな。二宮の目標をクリアしたら60点はとれるぞ。

「ムー頑張ります」

「うん頑張れー」

 からかってるのか結構楽しんでるのか、二宮ってこんな一面があるんだな。真面目なキャラというより腹黒というか。

「そういえば良太って銀河の機光氏もってる?」

 ちょおま。その会話はまずいだろ。銀河の機光氏とはアニメ化する以前から漫画が売り切れているほどの超人気まんがである。なんと人気が出てくる前に父さんが目をつけていて持っているのだ。だが、この話をすると。

「先輩それ雑誌ですか?」

「あんた知らないの?」

 そうか。ここで自分の思ってることと違っていたらアニオタだと思われると悪いから聞けないのか。

「いやそれまん」

 慌てて二宮の口を手で押さえた。

「そ、そうだよ」

「なに?」

「実は」

 京香ちゃんとの関係性を話した。

「なるほどまかせて」

 ふー。まだ話すときじゃないしひとまず。

「仲いいですね2人とも」

 二宮を止めないと余計なこと言われ、止めれば京香ちゃんに怒られる。なら俺は何をするのが正解なのだろう。もうわかんね。

「別にこれは普通よ。友達なら」

 ナイスサポート二宮。

「でも、そんな近く」

「私バカだと思われてるの?彼女の前でアプローチなんてするわけないでしょ。そもそも好みじゃない」

 今は耐えろ。心がギシギシ言ったとしてもここで文句言えば京香ちゃんに嫉妬されるくらい言い合いになりそうだし。

「私は先輩のこと、その」

「マー好きでないやつと付き合うわけねーだろ」

 さっきあんなこと言ってたのに引っかかってるやん。っま、考えてる時点で答えは分かってる覚悟だけはしておこ。

「それもそうですね。私警戒しすぎてました。それより先輩との写真のために、頑張らないと」

 本来の目的とは外れているがすごくやる気あるな。

「私そろそろ帰ろうかな」

「え、でも写真」

「拡散はしなければいいでしょ。今日は頑張ったし明日まで延長してあげる」

 やる気を作りつつも優しさも最後にはある。やっぱり二宮はすごいな。

「ありがとうな」

「私も楽しかった」

「先輩は渡さないけど感謝はしてる」

「ここまで警戒されると逆に引くんだけど」

 俺も少し思ってきている。ここまでくると少し気持ち悪いかもしれない。俺の彼女だしうれしさもあるからいいけど。

 二宮が帰っていった。

「これからよる少し頑張りますか」

「その前に夕食だろ」

「夜どうします?」

「夜?」

「そ、そのお母さん今日は友達とご飯に行くっていってて」

 なんも聞かされていない。おそらく父さんとか。

「京香ちゃん料理は?」

「舐めないでください。今から作ってきます!!」

 すごい自信満々だ。期待ができる。たのしみだ。


「できました。どうぞ」

 ほんの数分で戻ってきた。もっと来たのは二種類のプラスチックの箱だった。

「これは?」

「カップ焼きそばとカップ麺です!!」

 いやすごい誇らしげに言ってるけど

「これ料理!」

 「お湯を入れるという工程ですがあります!!ほめてくれてもいいんですよ」

「ごめん。さすがに無理」

「おかしいな男の人はカップラーメンが好きって聞いてたのにな。先輩って面白い人ですね」

 京香ちゃんほどじゃないけどね。これを料理といっている時点で深く言及はしなでおこ。

「先輩どっちにします?」

「麺の方かな」

「良かったです。私辛いの嫌いなので」

 今辛いやつとか言わなかったか。見た感じ普通のカップラーメンなんだけど。

 

3分が経ちカップ麺のふたをあけた。それと同時に衝撃的なものが。

「あの、京香ちゃん?これはなにかな?」

「えっとですね。少し辛くしようかなと一味かけてみました」

 確かに一味はかかっているが、普通いらない量が入っている。

「…」

 必殺無言の圧力。これをすると京香ちゃんは話してしまう。

「かけたんですが、阻止たらですね蓋外れまして全部出ました」

「ま、まさかだけど全部って」

「はい。開けてすぐ全部です」

 俺も軽くならいけるたちだが、一本全部となると話が変わってくるおそらく死んだな。

「京香ちゃんも食べる」 

「あ、私湯切り行ってきますね」

 あら逃げやがった。と、とりあえず一口食べてみるか。

 一口だけで辛いを通り越しものすごく痛い。これ食べ切るとかやばいだろ。

「先輩食べれました?」

「無理」

「ですよね。先輩は焼きそば食べてください。元は私が悪いのですし」

 こんなものを辛いの辛い宣言もした子に食べさせていいものなのだろうか。それは彼氏としていいのだろうか。

「いや京香ちゃんの赤点の回避の難しさに比べたら余裕」

「私そんなバカですか?」

「バカというよりは何も知らなかった。だからうまくいかなかっただけでしょ」

 食べるぞ。辛いと感じる前に食べきれればいいんだ。一気にながし。

「かっら!!」 

 二口目はさらにからかった。流し込むのすら抵抗あるくらいに。

「私も少しもらっていいですか」

「辛いの苦手だったらやめたほうがいいって」

「何を大げさに」

 辛いのが苦手といっておいて食べてみたいとかMけのあるこなのかな。

「なら一口食べてみな」

 はしを持つとわかりやすい。すごく手が震えている。

「やめるか」

「ま、まさか。ここで引き下がりませんよ」

 声も震えてるし心配だな。

「いただきます」

「っちょ大すぎ」

 普通に麺を持ちすすった。

「う、う、う、う」

 汗と涙がすごいなこれは。

 ほら、飲み物。

「か、か、ら、い。あー!!辛い!!からい!!先輩辛すぎます。助けてください」

 大号泣してるし。

「いったんリビングまで」

 ここで暴れて麺がおじゃんなのが目に見える。いったん暴れても安心な広いリビングにはこんだ。

「辛い!!!というり痛いよ先輩!!」

 全く収まる気配がないだけど。

「俺はここにいるから」

「助けて!!先輩!!」

 どうしようこんなに暴れられると飲み物を入れるわけにもいかないし、とはいえこのまま放置もやばい。そうだ、たしか乳製品ならアイスでもいけたはず冷蔵庫探してみるか。

「アイス探してくるわ?」

「アイシュ?しぇんぱい。それより」

「どうした?」

「はぁ息が。あら、く」

 まずい。本来これは休憩の時間。しっかり休んで夜の勉強の時間を頑張るために入れたんだ。なのにあばれしまったせいで体力を使ってしまい、限界値まできている。そして辛さを忘れるくらい頭が痛いんだ。今日はもう無理だ。

「今おかゆ作るから休んでて」

「でも、カップ」

「食べる元気あるならいいよ。安心してラーメンを伸び切ってるだろうけどどっちも俺が食べるから」

「だったらもってきま」

 立ち上がろうとしたが、力がぬけ倒れてしまった。

「無理するなって」

 カップ麺今から持ってきて食べながら作るか。

 

 カップラーメンはほとんど伸びきっていてすごく味が濃くなったおかげで少しは辛さがやわらいでいる。のどが痛いくらいしょっぱいのを考えなければなんとか食べれる。焼きそば普通においしいしマヨネーズがかかっているからこれもまた、辛さをやわらげられる。

「京香ちゃん薄味と濃い味どっちがいい?」

「味ほとんどいいです。まだ口の感覚ないので」

 声も小さく若干かすれている。それにやっぱりまだ辛そうだ。

「わかった」


「ほらできたよ」

 おかゆを作って持っていったらもう眠たそうにしていた。

「ありがとうございます。これ食べたらすいませんがねていいですか?」

「いいよ。ほら口開けて」

 まだ力が入れれずスプーンですくうってこともまともにできなそうだし食べさせてあげることにした。

「すいません。!!おいしいです」

「味はどう?」

「味はすいませんわかんないです。でも、先輩が作ってくれたと考えたらおいしいって思えるんですよ」

「ならよかった。ほら」

 全く味の付けていないただみずみずしいご飯のようなものだが、京香ちゃんはおいしいって言ってくれた。疲れて本人もつらいはずなのにそれでも幸せそうな顔をしていると安心できる。


「ごちそうさまでした」

「じゃー部屋まで行こうか。ほら」

 次は部屋に行くためにおぶってあげることにした。理由はもちろん彼女はつかれきっていてまともに歩けないからだ。。

「いいですよ。これくらい自分で」

「無理するところじゃないぞ。これはテストのためだ」

「でも」 

 何か抵抗があるようだ。ただはずかしいとかではなさそうだ。

「何に抵抗があるの?」

「だって私約束破ってるのに優しくされ、」

「ほら頭痛いんでしょ。無理すんなさんな。事故まで予言できないし、予定なんだから気にすんな」

 どっちかというと、勉強はしたほうがいい。しかし二宮が英語を俺の想像をはるかに超えるペースで解決した。だからよるやらなくても予定通りはいける。ここで無理しすぎたら前を考えてもテストに間に合わない。それでもし、もう京香ちゃんに俺への好意がないのだとしたら、今日やってたことも演技だとしていたら、さらに彼女を追いこんでしまうかもしれない。

「…」

 それからは何も言わず俺の背中に乗った。京香ちゃん軽いし簡単に持ち上がった。

「暖かい」

「それはよかった」

「ねぇお兄ちゃん」

「何言ってるんだ?俺はお前の兄じゃないぞ」

 このくだりは2回目だしさすがにおどろきはしない。体調を崩し始めると昔の記憶が戻るというか多分感覚的にそう思うのだろう。

「え、先輩?でも、今お兄ちゃんの感じが。気のせいなのかな」

 昔の俺と今の俺。さほど変わることもないか。それに気づくってよっぽど俺のこと気にしてくれてたんだな。

「京香ちゃんってお兄ちゃんいたんだ」

「何言ってるんですか。いないですよ」

「でも今」

「私お兄ちゃんとか言ってました?」

 これは完全に疲れで頭がおかしくなってるな。少し正気に戻ってるんだろうけど兄がいる感覚がある。そして、俺が兄だということを結びつけたのならそろそろばれるかもな。


 京香ちゃんをベットに寝かせた

「お休み京香ちゃん」

「先輩行かないで。京香さみしいです」

「どうしたんだ?」

「私こうなると不安になってしまうんです。このまま1人になるんじゃないかとか。死ぬんじゃないのかとか。でも、近くに信頼できる人いると安心して寝れてそれで」

「寝るまではいてやるよ」

 京香ちゃんが手を伸ばした。握ってほしいらしい。その手を握ると落ち着いて目をつぶった。京香ちゃん寝たらラーメンを捨てねーと。あれはもう食えない。幸い焼きそばがあるしそっちを食べれば空腹でなくなる。

「せーんぱい。ずっと一緒です」

 もう夢を見ているのか。寝たことだし俺は片付けとかとかでもするか。

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