第8話 必ず勝つために

 まだ心残りもあったが、二宮に会いに行った。妹が隠したことが悪い方向で無理をさせるわけにはいかないが、それでも期末テストを乗り越えるために頑張った彼女がこの頑張りが無駄でなかったことを教えるためにも俺もさらに頑張らないと。

「はいこれ。妹さんならこれでなんとかなる」

 いきなり妹といわれた。

「いや」

「ごめん。実はあなたに接触した時から気づいていたの。図書館で2人で勉強してるの見たの」

 それだけで気づくとか感が良すぎだろ。

「たっく。隠す必要なかったのかよ」

 渡されたプリントはテスト用紙のようだった。これを見たとき彼女が言っていたことが理解できた。たしかに昔京香に一度やったことがあった。それで90点とらせたことがあった。そして今の俺だったらこんな事させるわけない。

「お前よく予想答案作ったな。それで確率は?」

「6割は確実。文が少し違ってもこれ覚えるだけで点数取れるくらいにはしておいた」

 今のこの状態ならこれで乗り切るしかないよな。ここまで時間を費やしてきたことが無駄にはなるが、しょうがないか。

「頼みがあるんだが」

「何?」

「あと1教科でいい。ほかの教科もやってくれないか?」

「あの子の努力を信じるべき。あくまでこれは最終手段」

「あいつ体が弱くて徹夜とかできないんだよ。それ知ったの今日で、これ以上無理させたらテストどころじゃ」

「それはあくまで良太の計算でしょ。確認もしないで」

「まじでやばいんだって。特に数学なんて」

 今冷静でないのも理解している。それに、彼女なら乗り越えたかもしれないのもわかっている。だけどそれでも何があってもいいよう対策しないといけないんだよ。

「この作戦なんでやったか覚えてる?」

「忘れるわけがない」

 たしか、あの時居残りがあるテストがあるって言われて妹が泣きながら頑張ってた。でも完全に覚えることができなくて、俺が今までのテストを見て答案作ったんだよな。それにしても小学生でそれをやるとか俺が天才だろ。

「あの時もあなたは何も知らずに妹を助けるためにやった」

「だったらなんだよ」

「でも実際はあの子ほぼ覚えていたのよ」

「何言ってんだよ」

 あの時は誰が何というと覚えれていなかった。用語ごとの問題を出してもわからなかったし、文章を読んでもわかっていない。

「あの子は覚えてないんじゃなくて心配性なだけ。算数が苦手なのは別だけど」

「なわけないだろ」

「それはあなたが気付かなかっただけ」

 だんだんとむかついてきた。俺よりも一緒にいなかったこいつがあいつのことを分かるわけがない。

「勝手なことを」

「勝手なことを言ってるのは良太じゃない」

「なんだと!!」

「ここ一応店だからおつきなさい」

 辺りを見たらみんながこっちに目を向けていた。

「なんで俺が」

「妹のことになると良太は過保護になってるの。一度できないと思ったらできないと判断してしまった助けようとする。それが逆に彼女を不安にしていた」

 言っていることがまったくわからない。たしかにできないと判断して助けている。そこに関しては間違えてないが、それが不安になるって点が引っかかってしまう。

「小学生だからってこともあったと思うけど。あなた教えてるのが1点でないのよ。例えばこの問題ではAが正しいのに似たような問題ではBが正しいとなっているとする。この問題なら良太はAとBどちらの対策もするでしょ?」

「当たり前だろ。どちらもテストに出る可能性があるならそれぞれを覚えさせるべきだ」

「それがダメなのよ。京香ちゃんは勉強が苦手で自分のわからないスケールがでかすぎるせいかもしれないけどAとBの意味が違うことを教えてやる必要があるのよ。そうしないとどちらが正しいのかわからなくなって結局どちらも覚えれなくなってしまう」

 大体のことは理解できた。たしかに京香は細かいところを聞いては来なかった。わからないとなれば、AならAすべてだったし。

「だったらCの答えしかないとしたら。似ている意味がなければ不安にならないだろ」

「その思考がダメなの。私と良太なら点と点を結ぶことができる。でも苦手人のほとんどはそれができなくて私たちみたいなできる人がそれを記して教える。そのせいで、見落としてしまうことがある」

「見落とすこと?」

 完全に俺が京香にやってきたことだ。だからしっかり聞かないといけないと思った。なんか少しでも楽に教えることができそうな気がするから。

「点で結ばれなければただの1単語。つまりAとBの話と同じ。こっち側の人からしたら問題が多少違ってもその点で結ばれたものの中で文にあうのを選べばいい。でも少し似ている分なだけですべての単語が浮かんできてしまう。それで本当の答えがわからなくなる」

「それは普通のばあいだ。まだ、不安の説明にはなっていない」

「あなたが、いない場合解けるのかってこと」

 そうだ。俺は、ただ覚えれれば何とかなると思っていた。だが、そもそも日本語なんて似ている言葉たくさんある。言い方を変えるだけでも違った問題になる。それと逆に少し言葉を変えれば複数の回答があり得るようになる。そして、その答え重要となる人物と時代。少なくともこの3つを把握できないと絞ることは難しい。

 さらに問題を出すとき以外は優しくぎりぎりのところまで教えていた。そしてテスト形式の問題となるとほとんど白紙になっていた。それは解けないのではなく本当にあっているか確認できないから不安になっていた。

「お前天才かよ」

「私もこの壁に当たったからね。これを回避させるためにも1人でも書けるようになれるべき。努力と学習量に嘘はない。どちらかといえばそれを使用できるかどうかが大事。教える側はそっちのほうが教えるべきなの」

 なるほどこいつの言っていることは説得力があるな。俺なんかと大違いだ。さすが、進学校通ってるやつ。

「なるほどな。だったらここまで頑張ったのものを実力にできるようにするか」

「ガンバ」

「いったん彼女とこ行って様子見に行こうかな」

「あんた彼女いたの?」

 っあやらかした。こいつの前だけは彼女というのダメやん俺のあほ。しっかりしろ俺。京香ちゃんといえば回避してただろ。

 とはいえ、隠してもすぐにばれるよな。

「妹が記憶ないから。彼氏となっているそれだけだ」

「そうなんだ。なら本物の彼女は?」

「いるわけねーだろ」

「だったらまだチャンスあるんだね」

 この話の流れでなんのチャンスができたとのだろう。っま顔を赤くしてるしきかれたくないことだろうな。そっとしておくか。

「じゃーないろいろありがとう」

「別に。今度は3人で」

 こいつと会ったとなれば京香確実に怒るだろうな。だからあまり合わせたくないな。


 少し早歩きをしながら、二宮に言われたことを思い出し、考えた。まず、1人でも問題を自信をもって答えること。今の京香では無理だ。一問一問俺に確認している。まだ自分の考えに自信を持っていない。監視カメラとか設置して観察しながら1人でもできるよう見守る。完全にストーカー行為だから駄目だな。広いところを確保するのも難しい。無視してたら泣きそうになって解決にはならない。少し難しいのかもな。今の状況を変えるのは。それでも変えてやらないと。


「ちょうどよかった。私買い物行くからよろしく」

 インターホンを鳴らしてすぐ母さんが出てきた。そして、さっさと外にでていった。また話す気はなくなったんだろうな。でも、2人で話していたらその話になる気がするからすぐにいなくなった。そう考えるのが自然だな。

 そういえば京香ちゃんの家に入るのはじめてだな。前に行った時も部屋を片付けたくせに入りはしなかったし。

「京香ちゃん。様子見に来たよ」

「セ、セ、先輩!!。待ってください今片付けるので」

 またアニメグッズでも置いていたのかな。こりゃまただいぶ時間がかかりそうだな。

 

 数分経ったが全く開ける気配が感じれない。

「京香ちゃんまだ?」

 何も反応がない。もしかしてまた倒れたのか?アニメを頑張って隠してたからあまりやりたくはないが、それよりも京香ちゃんを助けないと。

「大丈夫?」

 ゆっくり扉を開けるとアニメグッズはなくただ押入れの前で辛そう顔をして倒れている京香がいた。

「ほんと大丈夫かよ」

「すいません。先輩がいつきてもいいようにアニ、アニマルグッズはしまってたのですが、そしたら普通に部屋が汚くなってしまって」

 うまくごまかしたと思っているようだが、がっつりバレている。たしかにフィギュアとかはないな。でも、その汚くなったの全部アニメグッズが入ってそうな女の子の袋とかクリアファイルが入ってたと思える透明な袋とかばかりだ。

「ベットまで運ぶか」

「せん、ぱいその」

「どうした?」

「はずかしいんですけど」

 何のためらいもなずお姫様抱っこをしていた。妹だしあんまり考えてなかったが、付き合っている関係でこれをしていると考えるとなんか恥ずかしいな。

「気にしないの」

 京香ちゃんをベットに寝かせ、二宮に作ってもらった紙を渡した。

「先輩盗みました?」

「いや、昨日会った友達からもらったやつだけど」

「本当にこれ作った人いるんですか!!」

 急に頭をこっちに近づきほぼゼロ距離のところに顔が来た。そして京香の顔はだんだん赤くなって布団にくるまった。

「そいつが全部やったかはしらないが、作ってくれた」

「その人に会えないですかね?」

「今はダメだ。そのうちなら」

「だったら今度会った時でいいんで聞いてもらえますか?」

「何を」

「私のことを知らないかって」

「何で聞く必要があるんだ?」

「90点。私が人生で一番高った点数です。ですが、その点を取るために誰かが私にプリントを渡してきて、予測して作ってみたこれを覚えろって言われたんですよ。多分その人が私の一番大切な人で、記憶がなくても感じる小さな希望の光がある人だと思うんです」

 確実にその人は目の前にいる俺だ。今ここでそれは俺と伝えたとしても俺が兄だとはばれないだう。だが、点と点が結ばれることになる。さっきいっていたことではないが、もし、今まで良太と希望の光の人物を分けて考えていれば、その光が俺だって気付くことはない。しかし、小さな情報が少しずつ彼女の頭の中で結ばれていくと共通点気づいて、その2つが1つの良太という人物になることがありえる。そうすれば兄だとばれることはすぐになる。それがなんか嫌なんだよな。

「あったら聞いておくよ」

「なら私は勉強を」

「その前に何だが」

 ここは俺だけではわからない。だから京香ちゃんの意見を聞くことにした。

「京香ちゃんって、どれくらい理解してるの?」

「全部わからないです。間違っている気がして」

「それは1つの答えになるけど自信がないってこと?それともいろんな答えがあって選べないってこと?」

 まずはこの2つの案を出してどれくらい覚えているか図ることにした。前者なら自信がつくようにすればいい。後者ならあと一押しってとこだ。

「どっちでもないと思います。私いままで、自分の書いた答えがあっていたことなんてほとんどなくて、だから、自分が書いたことがあっているか不安になって。馬鹿ですよね。私先輩に教えられてできてるはずなのに怖くてかけないなんて」

 どちらかといえば前者に近い。だが、それ以上にそもそも自分の考えない自信を持っていない。だから後者であるともいっていい。

「何言ってんの?京香ちゃん」

「私変なこと言いました?」

 そうだ。京香ちゃんは言っていた。自分の意見は不安だって。

「京香ちゃんの意見なんて思う必要ねーだろ」

「でも私が考えたことですし」

「それを教えたの誰だ?」

「先輩ですよ」

「じゃーその京香ちゃんの考えたことは誰が教えたのは?」

「先輩ですよ。すいませんいってることわかりません」

「ようするにだ。俺を信じて問題を解いてみたら」

「それでも、私の書いたことには」

 こういう細かいところは数か月では治らないよな。だが、この細かすぎたことが強化を覚醒させた。

「俺だってテストしてて間違えてたらって考えてしまうこともあるさ。でも、俺は自分を信じている。京香ちゃんは自分のことを信じれない。だったら俺を信じてほしい。こっちも教えた身だ。赤点だったら連帯責任だ」

「そんな先輩は頑張ってくれました。だから私の責任」

「ばーか。俺が教えた人が俺を信じれば赤点なんて取るわけないだろ。連帯責任は京香ちゃんのテストだけでない。俺のテストもだ。もし俺が赤点だったら京香ちゃんにも責任取ってもらうから」

 何も俺たちは同級生だ。俺がすべて背負う必要はない。連帯責任。俺と彼女は2つの学年の責任を背負うことで対等になることができる。

「先輩を信じればか」

「っちょ。泣かなくていいだろ」

 急に涙を流し始めた。

「すいません。私。ずっと1人だったから信じるとも信じろとも言われたことなくて。だから先輩には迷惑かけっぱなしで、だから赤点取ったらなんて誤ればいいのかわからなくて、それを考えてたら本当にあっているのか不安になってました。でも、そうですね。先輩は頭がよくてだから私は頼った。それで、一緒にいて最初にはなかった先輩への好意を持つようになりました。責任をとれるかわからないですが、先輩のテスト、私が責任持ちますなので2人で赤点回避しましょう!!」

 少し元気が戻ったようだ。俺が赤点取ることはほぼないと思うが。最初には好意がなかったといわれ少し傷ついたが。

「ジャー今日の勉強を…」

「大丈夫?」

「すいません。今日はやっぱり休みます。無理しすぎました。明日学校行くためにも休みます」

「そっか。なら俺は帰ろうかな」

「寝るまででいいんでいてくれませんか?」

 か、かわいい。やっぱり妹はかわいい。

「たくしょうがないな」

 京香ちゃんは俺の裾をつかみ目をつむった。待てよ。裾つかまれてる。結構力がある。振りほどいたら起こしてしまいそうだし。つまりだ。俺は当分帰れないらしいな。っまいいか。期末までのどんどん迫ってきている。何があっても2人で乗り越えよう。

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