第5話 妹が彼女とわかって普通に接するのは無理だろ
昨日の夜彼女の家に行き、俺の母親にあった。そして俺の彼女である京香ちゃんが俺の妹だということが発覚した。あの後は特に何もなかったのだが、そのインパクトが強すぎたせいで京香ちゃんともまともに話せなかった。そして朝になり俺は寝不足でいる。
「先輩どうしたんですか?」
「あー。いろいろしてたらほとんど寝れなかった」
目には隈ができていて、歩くのもふらふらの状態。さすがの京香ちゃんにも心配されている。
「肩化しましょうか?」
本当にこの子が俺の妹なんだよな。いも。
「いや大丈夫もう元気になったから」
何か冷や汗をかいた。まだ妹と思ってしまうと眠気も吹っ飛んでしまう。
なぜ妹に隠しているのかというと母さんからの約束だったから。最後のほうの話は聞けずにいたが、要するに今の京香ちゃんに必要なのは普通の日常。やっと兄でない人を好きになれた。この感覚を残せば他の人とも仲良くなれると考えている。しかし、もし俺が兄だと知り、記憶が戻ったらすべてがリセットされる。だから妹が気付くまでは隠すことになった。俺もこのまま不登校になるくらいなら彼氏を演じるのも悪くないとは思ってるし、それに妹と作れなかった6年分の思い出を作れるんだから。
「ならいいですけど。たまには頼ってほしいです」
なんだろう。俺と京香ちゃんはまだそんなに日がたっていないはずなのに数か月は付き合ったように話してきてる気がする。これも、記憶の奥底にまだ俺との記憶が残っているからなのか。
「あ、そうだ。先輩これ。お母さんから」
京香ちゃんから渡されたのは一冊の本。カバーがついている。機士の岸田君。なんだこの本。
「何これ」
「先輩が読みたいって言ってたって」
そんな話してない気がする。
本を開いた一ページ目に「京香に見せるな」と書いてあった。京香ちゃんには見られたくないってもしかしあっちけいなのか。流石に母さんとはいえ、俺に18禁の本をプレゼントしないような。怖いから学校でひらこ。
「ありがとうこれめっちゃほしかったやつ」
隠さないといけないしとりあえず喜んでみた。
「その本、読んだことないんですけどどんな本なんですか?」
「機械で紳士の岸田君が巻き起こす機械と人間の争いみたいな」
もちろん適当だ。これで当たっていたら天才と呼んでくれ。
「そ、そうなんですね。というか先輩そういうの好きなんですか?」
妹のインパクトのせいで忘れてたけど俺たち互いに非オタ演じてたんだったな。
「漫画は普通に誰でも読むよ」
「そ、そうなんですか!?」
漫画を読むのはオタクだけとでも考えているんかな。ただ声優だのアニソンだのを詳しく話せるからオタクなだけだし。
「母さんがあの本持ってるってことはもしかして」
少し揺さぶりをかけてきた。
「い、いや、わ、わったしは漫画とか知らなかったですし」
動揺がすごい。別に軽くなら読んでるとか言えば少し楽になるのに。かわいい過ぎるからこのままなのも悪くないけど。てか普通に母さんと呼んでいた。京香ちゃんはそれに対しては気づいていないようでよかった。
「じゃーな。しっかり授業受けろよ」
「もちろんですよ」
小学生レベルのものすらできない彼女にとって高校の勉強は知らない言語を知っている言語を使わずに教えられるくらい難しい。だから授業をさぼって問題集もやるのも正解だが、内申点を少しでも稼ぐことに徹するほうが確実に点数につながる。だから、わらなくてもいいからノートをとり先生の話で分からないことをまとめたりする作業をやらせる。
京香ちゃんを教室まで送り京香ちゃんが見えなくなったところで母さんから渡された本を取り出した。触った感じからして、小説や漫画ではなく日記帳だった。俺に渡したってことはおそらく俺の知らない妹の実態が書かれているのだろう。これを読めば妹のことを知ることができる。だけど、もし知ってしまったらいつも通りいれるのか。妹と知っただけでも難しいから無理に決まっている。そう考えると中身を見るのには抵抗がある。そのため中身は開かず袋の中に戻しバックに入れた。
「りょうちんどした?彼女と何かあった」
教室で座っているといつの間にか櫂が目の前にいた。本が気になってぼーっとしていたから全く気付かなかった。
「いや、何にも。強いていえば、彼女がかわいすぎて考えてしまう」
「これだから初めて彼女を持った男はきもいんだよ」
そういう櫂も同類である。俺と違って、告白をされたことは多々あったが、付き合っていない。櫂の理想は頑張っている女子。夢を持ちそのために頑張っている人がいいんだとよ。だが今まで告白してきた人はただ櫂がかっこいいから告白しただけ。そんなのと付き合うつもりはないといっていた。そもそもかっこいいといわれている時点で羨ましい限りだぜ。
「そうだ。お前理科得意だろ?」
「一応お前よりは理解はしているつもりだぜ」
櫂が唯一俺に勝てる京香は理科である。俺は正直な話理科はただ覚えているから、何でそうなるかなんてわからない。だから京香ちゃんに教える中で一番難しい教科になる。そこで、京香ちゃんがや
ばいほどのバカだとバレないよう話を進めながら頼ろうと考えている。
「京香ちゃんが、理科苦手らしくていろいろ聞かれたんだけどこれ分かるか?」
高校一年生の期末は科学になり、空気の勉強をしている。去年は元素記号を覚えるだけで20点はとれたテストであり、点数はとりやすい。だが、覚えれば点を取れるのはその20点だけで、残りの20点をとるためにはやはり化合の理解をしないといけなくなる。
「酸化と化合は同じこと言ってるから。酸素を使って化合したら酸化なだけ。ってかお前も覚えてろよ」
どおりで酸化の答え酸素ばかりで覚えやすいと思ったがそういうことだったから。
「なるほど。それで、テストになりそうな化合物は?」
「だいたい酸化系を抑えるだけでも結構楽だぞ。特に水酸化ナトリウム。水酸化マグネシウムあたりは出てくると思うぜ。あとカリウムとカルシウムは元素違うけど言葉似てて間違えることがあるから注意」
櫂のおかげで絞れてきたからありがたい。とりあえず水酸化を覚えさせるのと、カリウムとカルシウムは言葉が似てて逆に書くことがあるこれでまーざっと30はとれそうだな。彼女が元素記号を覚えれたらの話だが。
放課後は櫂から習ったことを生かしつつ元素記号を教えることに徹した。
「えーとすいへーりんだ?」
「違うすいへーりーべー僕の船だ」
「意味がわからないです。私船持ってないですよ?」
「だからこれは語呂合わせで深い意味はないから」
「九九とかこれとか、なんか私覚えること多すぎませんか?拷問でもしてるんですか?」
拷問に近いといえば近いな。なんせ、今まで覚えてきたものを小学生レベルとはいえ、0から覚えさせている。しかもたった数か月で何年ものの穴埋めをしている。しっかり覚えれるわけがないのは分かりきっている。だが、そうでもしないと進級がやばいのがわかる。俺みたいにただ覚えれる人なら語り押せるが、さっきのように理由を知りたい彼女はまずただの暗記ができる人ではない。
「嫌ならやめてもいいんだぞ」
「頑張ります」
あーだこーだだだをこねるが、今の彼女は頑張ろうとしている。そこに関しては感心している。彼女はなにをきっかけに行動をし始めたのかはわからないが、確実に今まで避けてきたものから向き合おうとしているのはたしかだ。
「そのいきだ」
俺に課せられていることは進級させること。たとえ1学期で赤点をとって補修に参加することにあったとしても2年生にすることができれば成功といっていい。嫌々だとは言え、1日目の逃げからここ1週間でなんとかやろうとする気持ちにしてきていることはとりあえず成功したといっていいだろう。妹と彼女の両立とか難しすぎる。記憶をなくしたとはいえ、なぜ隠す必要があるのだろう。なんで、このタイミングなんだろうか。
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