第17話:回復術師はちょっと驚く
「劣等紋はこれだから面白いぜ! 最高のエンターテイメントだな。また俺を笑わせてくれ。じゃあな」
そう捨て台詞を残して、アルクたち元パーティメンバーは去っていった。
「あれって、ユージの前のパーティですか……?」
「ああ、そうだ。気分悪くさせてすまない」
俺個人がバカにされたというよりも、劣等紋という存在を否定されていた。リーナにとっても気分が良いものではないだろう。
「ユージにあんなこと言うなんて……。私のパーティも酷かったですけど、あれは度を越してますよ!」
「まあ、パーティを抜けた今となってはそう思う。さすがにあの言い方はないよな」
「どのくらいあのパーティで過ごしたんですか?」
「三年だな。バカにされたことよりも、どれだけ頑張っても真っ当に評価されなかったのがキツかった」
「よく三年も我慢しましたね……。ユージは凄いです。あんな人たちなら見返してギャフンと言わせないとですね!」
いつの間にか、俺よりリーナの方が怒ってるんじゃないだろうか……?
俺としては追い出されたパーティのことなんてどうでもいいんだが……。
「放っておいても自滅しそうな気がするから、そのチャンスがあるかわからないけどな。まあ、俺たちは俺たちでマイペースにやればいいと思うよ」
「ユージは達観しすぎです。天罰が下るといいんですけど……!」
ははっ、と俺は苦笑いした。
正直、天罰が下るどころか元パーティメンバーたちは本当に運が良い。ほんの少しの間会っただけだが、新たに加わった回復術士は間違いなく有能だ。
『解析』で見れば大体の能力は分かる。
加えて、俺が本当に劣等紋なのか執拗に確認してきたのは、明らかにSランクパーティがSランクと呼ぶにはお粗末すぎたからだろう。
だとすると、あのパーティが低ランクの依頼とはいえなんとか生還できたのは回復術士のおかげだと考えられる。
どれだけ金をかけてもこの短期間ですぐに集まるほど優秀な回復術士は溢れていない。
まったく、運が良い奴らだな。
まあ、運だけではさすがにこの先はないと思うが……。
「天罰は神様に任せるとして、そろそろギルドに入るぞ」
「あっ、そうですね!」
改めて扉を開き、ギルド内へ入っていく。
奥の受付へ向かった。
職員や冒険者がどういうわけか、悩ましい顔をしていた。異様な空気だ。
「依頼の報告をしたいんだが、いいのか?」
「あっ、ユージさんですね。承ります」
俺はカウンターの上に魔物の討伐証明を並べていく。
30体分乗せ終わったところで、確認してもらった。
「依頼達成です! Cランク依頼はパーフェクトなので、次回からはBランク以上も受けてもらって大丈夫ですよ!」
そして、報酬を用意するため金庫に向かおうとする受付嬢。
「あ、ちょっと待ってくれ」
「どうかしましたか……?」
「いや、依頼とは関係ないんだがちょっと珍しい魔物も倒したから買取してもらえたらと思ってな」
冒険者ギルドは、依頼の受発注だけでなく素材の買取も行っている。
あまりにもありふれた魔物は二束三文の価値しかないが、珍しくて価値があれば相応の値段を付けてくれる。
「ちょっと大きいんだが、これだ」
俺はアイテムボックスからさっき回収したばかりの新鮮なガーゴイルを取り出して、カウンターの上に乗せた。
さすがにエリアボスともなれば、いい感じのお値段になるんじゃないか?
「……な、なんですかそれは!」
「多分、ガーゴイルじゃないか?」
「それはわかっています! 一体それをどこで……?」
「え、サンヴィル湖の近くに出てきたから倒したんだけど?」
「それを……お二人で!?」
「うん」
受付嬢が大袈裟に驚くものだから、周りの冒険者がゾロゾロと集まってきた。
ざわざわ……と空気が張り詰める。
「こ、これってさっき消えたっていうレイドなんじゃ!?」
「急に観測不能になったって話だったが……まさか本当に倒されていたのか!」
「いったいこいつら何者なんだ!?」
そこまで驚くことでもないだろう……。
レイドと言っても、個体によって強さは大きく変わる。
Sランクパーティでも苦戦して死者を出すものから、Sランクパーティなら簡単に倒せるものまで。
今回はワンパンだったし、簡単な部類だったのだろう。
「ガーゴイルといえば、二十年前に一つの村を滅ぼしたこともあると言われるレイドですよ……。生還できただけでも凄いのにまさかたった二人で倒してしまうなんて……!」
あれ? あまり詳しくなかったんだが、結構こいつ強かった感じなのか……?
「えーと、じゃあ結構良い感じの買取金額になりそうなのか?」
「はい、それはもう! 通常のレイドの報償金に加えて、特別褒賞もつきますよ! 少し手続きに時間がかかりますが、期待しておいてください!」
「おおっ、それはありがたいな」
お金はいくらあっても困ることはない。
良い装備を揃えたり、移動をするにはどうしても大金がかかってしまう。
いくらになるか分からないが、この言い方なら金貨100枚以上は期待できそうだな。
と、期待を胸に抱いているとある冒険者が声をあげた。
「お、俺……こいつ知ってる! お前、劣等紋じゃなかったのか!?」
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