第16話:回復術師は再会する
煙が晴れていき、焦げたガーゴイルの姿が見えてきた。
あの一撃で絶命していたようで、動くことはない。
「攻撃魔法は上手くないんだが、今回は成功して良かった」
「いやいやそんなことないですよ! これってレイドですよね……? それを一撃で倒すなんてめちゃくちゃ得意じゃないですか!」
「あー、言葉が足りなかった。正確には、加減するのが下手なんだ。本気でぶっ放したら湖の方まで吹き飛ぶから、リーナにも怪我させちゃうしな」
「ええええ!? そういうことなんですか!?」
助けるつもりの攻撃で傷つけちゃ本末転倒だ。
咄嗟のことだったのに落ち着いてしっかり加減できたのは我ながらよくできたと思う。
「まあ、そんなことはともかく無事で良かった。とりあえずこいつは回収して、ギルドからたんまり報奨金を貰おう」
俺はアイテムボックスにガーゴイルを突っ込んだ。
その後、残りの五体をさっさと倒して、依頼を達成した。
◇
村に帰還して、報告のためギルドに入ろうとノブに手を伸ばしたところ、扉が勝手に開いた。
入口でブッキングした場合は、ギルドから出る方が優先される。
俺は一歩下がって進路を譲った。
「んだよ畜生! せっかくレイドが出たって話だったのにすぐに消えただと? ありえるかこんなの!」
なにやら荒れた様子の冒険者だが、どこかで聞き覚えのある声だな。
「うおっ! ユージじゃねえか! 元気にやってるぅ?」
こいつは、俺の追放をパーティリーダーに唆したアルク。
アルクだけじゃなく、前のパーティメンバーが勢揃いしていた。
言葉にして煽ってきているのはアルクだけだが、皆似たようなことを思っているのだろう。
気の毒そうな目を俺に向けていた。
顔すら見たくなかったが、同じ村を拠点にしているうちはこうしてたまたま鉢合わせることもあるんだろうな。
「まあ、ボチボチ……」
「こっちは新しい『有能』な回復術士を招いたところだ! 大した依頼がねえから仕方なくランクを落として戦ったが、やっぱり『無能』とは全然違うぜ!」
「へえ……そうなのか」
そりゃよほど優秀な回復術士に恵まれたんだろうな。
俺はかなり回復魔法に自信を持っているのだが、よくこの短期間で見つけたものだ。
すごいすごい。
「あなたが前の回復術士?」
俺とアルクが話していると、妖艶な雰囲気の女が出てきた。
落ち着いていて大人っぽいが、年齢は俺よりちょっと上くらいか。
「ああ。あんたも大変だな」
「私はお金さえもらえればそれでいいもの。それで、劣等紋って本当?」
「嘘つく理由もないしな。それがどうかしたか?」
「確認させてもらっても?」
「断りはしないが、嘘はついてないぞ」
俺は腕を上げて、手の甲に刻まれている模様を見せた。
意外にも回復術士の女は笑わなかったが、後ろの元パーティメンバーはゲラゲラ笑っていた。
「そう……本当に。哀れね」
「言われてるぞユージ! ギャハハ!」
言葉通りに受け取って同調する元パーティメンバーだが、俺には分かる。
回復術士の女が『哀れ』だと言ったのは、俺じゃなくお前たちの方だということを。
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