第8話:回復術師は知らない

 ◇


 その頃、ユージの元所属していたパーティでは、正式に新たな回復術士を招くことに成功し、一行は酒を浴びるように飲んでいた。


 ユージに支払っていたのが報酬の1%に対して、新たに招いた凄腕の回復術士の契約は報酬の20%。


 他のパーティメンバーたちの取り分は少なくなるわけだが、誰一人として気にするものはいなかった。


「ゼネストの兄貴! 劣等紋がいなくなってスッキリしましたね!」


「いやぁ全くだアルク。これまではSランクの中でも簡単な依頼しか受けてこなかったが、こうしてまともな回復術士が来たのだ、そろそろレイドを狙うか」


「レイドですか……! それはもうお宝がザクザクでしょうな。本当に新しい回復術士を入れて良かった!」


「このくらいの依頼をこなせぬようなら特別待遇で回復術士を入れた理由がないからな。ユージの二十倍は働いてもらわんと割に合わん! まあ、その心配はいらないだろうがな! グハハハハ!」


「今のうちに使い道を考えておいた方が良さそうですな、ゼネストの兄貴!」


「ああその通りだ!」


 こんな調子で皮算用する二人だが、この二人を含めパーティの全員が知らない。


 自らの力がSランクで通用するほどのものではなかったということを。

 ユージの代わりになるほどの回復術士など存在しないことを。

 あまりの弱さに新たな回復術士に愛想を尽かされてしまうことを。


 呼び戻そうとした時には既にユージは新たなパーティを発足し、少数精鋭にもかかわらずゼネスト率いるパーティなど眼中にないほど遠い存在となっていることを知る由もなく、ただただ浮かれ続けたのだった。

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