第2話:回復術師は追放される
◇
全員の治療を終えて村に戻ると、パーティリーダーのゼネストが今日の依頼だった五十体の魔物討伐案件をギルドに報告した。いつもこの後は報酬の分配が行われる。
冒険者は命がけだし、俺の場合は嫌味を言われることもあって苦労の多い仕事である。それだけにいつもこの時間は本当に幸せな気持ちだ。
まあ、分配金は他のメンバーに比べると雀の涙だけど……。
「ほれ、ユージの分だ」
ドサっと置かれた麻袋。
「ありがとう。って……あれ? いつもより多いような?」
「うむ、これまでご苦労だったな」
にっこりと微笑むゼネスト。
もしかして、俺を拾ってくれたこの人だけはアレに気づいたのだろうか。
そうだとすれば、かなり見る目があると思う。
「もしかしてリーダー……」
「その通り、本日付でユージとはお別れだ。ギルド規定の退職金が入っている。あー、寂しいもんだな」
「……………………え?」
「聞こえなかったか? 周りくどい言い方をしたが、要するにお前はお払い箱。追放するってことだ」
頭が真っ白になった。
十二歳の頃からだから、三年もこのパーティに貢献し、一緒に成長してきた。
なのに……どうして?
「ははははは! 次期サブリーダー有力のこの俺に歯向かうからこうなるんだ! ざまあ見やがれ!」
「は……?」
「おい、アルクちょっと黙ってろ。……ということだ、ちなみに厳正なる検討の上でお前の進退を決した。誰かの意見を聞いたわけではない。前から決めていたことだ」
どう考えても嘘だろ。
……いや、そんなこと言っても無駄か。
「俺をパーティから追い出すって、本気で言ってるのか?」
ゼネストのこめかみにピクッと青筋が浮かんだ。
「てめえ何様のつもりだ? 本来Sランクパーティは劣等紋とはご縁がない場所だ。古参だということで慈悲深くここまで面倒を見てやってきた。お前のヒールは薬草より確かに安い。だが、これからは真っ当な回復術士を招き、より高単価の依頼を狙いに行く。もはや劣等紋の居場所はない!」
「いや……俺はただみんなの心配をしていただけなんだ。追い出すっていうのなら、俺は潔く引き下がるよ。っていうか、俺もそろそろ潮時かなと思っていたんだ」
俺もこのパーティが自分の実力に見合っていないということには気づいていた。
それでもここに拘って続けていたのは、ここまで育ててもらった恩があったから。もうお役御免だというなら無理に頭を下げる必要もない。
「いやぁユージに心配されるとは思わなかったぜ……。まあいい。さあ出て行け給料泥棒」
「ああ、今まで世話になったな。今後俺はパーティとは無関係だ」
俺は退職金としては少ない麻袋を握り締めて、その場を後にした。
引き止めるもの、擁護する者は誰一人としていなかった。アルクとゼネスト以外にも六人のメンバーがいるのだが、皆が揃いも揃って俺に侮蔑の目を向けている。
ああ……がっかりだよ。
さようなら。
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